なぜ建物の寿命が短くなったのに、「品質が良くなった。」なのか
日本の一戸建ての平均利用期間は30年と言う。英国では77年、合衆国では55年。それを過ぎるとだいたいが解体するということである。昔の日本の建築物は、200年もつと言う。寺なんかも、修理しながら、1000年以上になるところも少なくないだろう。200年もっていた建築物が、30年しか持たなくなったというのは、普通に言えば、技術の衰退であろう。1/7にである。しかしそれでも、建築物を買う日本人は、どこかで「品質が昔より良くなった。」と思っているのではないか。例えば、断熱性能が200%になったとかである。しかし、それは、部品の問題である。昔の200年もつ建物に、それを入れれば、やはり断熱性能は200%になるだろう。その部品の性能が良くなったのはまったくの嘘ではない。しかし、建物全体の性能が昔の建築物の14%になっていることを覆い隠せるような性能の良さではない。正確に言うと、性能は14%になっていると言うべきだろう。
なぜそのような品質の悪化が起こったか。それは多分、戦後に流行った社会主義のためであろう。戦中に、各地が空爆して焼かれ、戦後、建物を再建する必要があった。一時的な大きな需要である。そのために、大工が大量に必要とされた。建物を供給するためである。しかし、すべてが再建し終わると、その一時的な大きな需要はなくなる。そうすると、建物は過供給になって、価格も下がるし、大工の賃金も下がるだろう。これが自由主義経済である。しかし、戦後になって特に規制されなくなった社会主義が流行って、大工の面倒を見ようという風潮が生まれたのではないか。それを達成するには、建物を大量に供給できれば良い。それを達成するためには、建物の性能が悪い方が良い。そうやって、大量の大工を養うために、従来の1/7の性能しかない建物を供給する態勢が生まれた。
いくらなんでもこれはバカバカしいのではないか。品質が1/7であるし、価格も上がっているだろう。西暦0年ごろに建てられたローマの建造物は、今も残っているが、そういった耐久性を実現するのは技術である。日本でも寺は1000年も残っているのに、庶民の住宅が30年しかもたないのは、おかしいと言わざるを得ない。また、200年もつ建物を作る技術は残っているだろう。30年しかもたなければ、財産も築きづらい。そんなバカバカしいことに金をつぎ込むべきではないと思う。以下は、建物と社会主義の式である。
b=1/s
建物の耐久性は、社会主義の強さに反比例するという式だ。社会主義を進めると、生産の逆をやりだすということである。これは、他の製品にも言えるかもしれない。経済成長が左から右へ行って、また右から左へ戻るのでは進歩がない。日本の場合は、建物の品質が1/7になってしまった。これは戻しすぎだろう。日本は1500年続いているが、1/7だと、214年しかもたない。社会主義をやるとそうなるということである。ソ連が崩壊して、社会主義が負けたということをもう1回考えるべきであろう。