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【書評】『宇喜多の捨て嫁』木下昌輝 文藝春秋

本作は、六編からなる連作小説で、戦国の三大梟雄の一人といわれている宇喜多直家を題材にした作品だ。2014年刊行にされ、オール讀物新人賞を初め数々の賞を受賞した他、第152回直木賞候補作ともなっている。 直家は戦国武将として壮絶な人生を送っている。 浦上氏の家臣であった祖父の能家が島村盛貫に殺害されて、幼少の頃から流浪の身となった。(一次史料では、能家ではなく、父興久が島村一族の子供衆との争論で殺害されて盛貫がそれを調停したとされている。)不遇な幼少期を過ごした直家は成人し

    • 【書評】『じんかん』今村翔吾 講談社

      歴史の教科書である『日本史B』で下剋上の代表として取り上げられる梟雄、松永久秀の評価が近年見直されている。彼が梟雄といわれる所以は、主家である三好家の乗っ取り、将軍の足利義輝の弑逆、東大寺大仏殿焼き討ちの三悪事を行ったからである。しかし、これは久秀が生きた時代から約200年後に成立した『常山紀談』の逸話からの影響で、その信憑性はやや乏しい。また、茶の湯への造詣が深かった彼が「平蜘蛛」の茶釜とともに爆死したという梟雄に相応しいその最期すら第二次世界大戦後に生まれた俗説であると三

    【書評】『宇喜多の捨て嫁』木下昌輝 文藝春秋