【書評】『じんかん』今村翔吾 講談社
歴史の教科書である『日本史B』で下剋上の代表として取り上げられる梟雄、松永久秀の評価が近年見直されている。彼が梟雄といわれる所以は、主家である三好家の乗っ取り、将軍の足利義輝の弑逆、東大寺大仏殿焼き討ちの三悪事を行ったからである。しかし、これは久秀が生きた時代から約200年後に成立した『常山紀談』の逸話からの影響で、その信憑性はやや乏しい。また、茶の湯への造詣が深かった彼が「平蜘蛛」の茶釜とともに爆死したという梟雄に相応しいその最期すら第二次世界大戦後に生まれた俗説であると三