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高血圧の栄養相談のコツ

高血圧の栄養相談というと、まず思い浮かぶのは減塩ではないでしょうか。
減塩の指導をするというのは、言葉にするのは簡単ですが、実践するのはとても難しい栄養相談だと思っています。そして、効果が見えづらい場合があり、管理栄養士側もなんとなく栄養相談をやったつもりになってしまう場合もあります。

例えば、小さじ1杯の醤油(食塩0.9g)から、塩分量が少ないマヨネーズ小さじ1杯(食塩0.1g)に変えるという減塩指導を行った場合、確かに塩分量は減るかもしれませんが、脂質が増えてしまうため、減量もしたい患者さんの場合は不向きなことがあります。
また、そもそも計量していない患者さんの場合は、マヨネーズならたっぷり使っても大丈夫と思って、かえって塩分量が増えてしまうリスクがあるかもしれません。
そのため、小さじ1杯の醤油からマヨネーズに変えるという指導は、ある患者さんは成功するかもしれないけど、ある患者さんは失敗してしまうリスクがある指導になるかなと思います。

少し極端な例を出してしまいましたが、私は、栄養相談を受けていただいたからには、確実に効果を発揮できることしかお伝えしないようにしています。なので、ある患者さんなら上手く行くけど、この患者さんには難しいかもな、ということは初回ではお伝えしません。
ある程度、信頼関係が構築されていたり、成果を出して自信がある患者さん、または質問された場合は伝えるかもしれませんが、たくさんの情報を与えすぎないように、シンプルで確実な効果が得られるものしか伝えないように気を付けています。

そんな私が確実に減塩指導で効果を出せるようになったコツを記載していきます!


食事と血圧の関係


減塩指導をするときに、まず血圧がどうして上がるのかを理解することはとても大事です。
私はいつも、食事摂取基準2015年の別添のフローチャートを患者さんにお見せしています。

食事摂取基準2015より


高血圧は、食塩だけではなく、寝不足やストレス、肥満が原因で上がることがあります。そのため様々な理由で上がることを事前に患者さんにお伝えすることにしています。
フローチャートを見ると、食事と血圧で関係しているのは、ナトリウム、カリウム、アルコール、肥満が高血圧に影響を与えていることがわかります。
まず、このことを患者さんと一緒に確認することがとっても大事です。

「減塩も大事だけど、私はアルコールも減らさないといけないんだな」
とか
「まず、私は痩せることが病気の改善に繋がるんだ」
など、この表を見ることで客観的に自分の原因を知ることができます。

ただ管理栄養士から一方的に指導されるのではなく、
「自分で気づく」ことが、栄養相談の最初の一歩になる場合もあります。
特に無関心期の患者さんには今後の栄養相談の方針に大きく関わるため、とても有効です。

また、食事以外でも寝不足やストレスも血圧に影響します。なんとなくテレビを見て24時以降に寝ている人は、24時前までに寝てみたり、眠れなくて悩んでいる人は、必要に応じて主治医に相談して睡眠の薬を出してもらうことも、必要かもしれません。

そもそも日本人は平均でどのくらい食塩を摂っているの?


日本人は世界でみても食塩の量が多い国として知られています。
2019年の国民健康・栄養調査より、日本人の食塩摂取量の平均は約10gです。
この説明をするときに、患者さんには「高血圧の方の1日の食塩摂取目標量をご存知ですか?」と伺うようにしています。
そうすると、知らない方が結構いらっしゃいます。
また、知っていても、実際に食塩6gがどのくらいの調味料に値するのか知らない方も多いです。
その点を詳しくお伝えするのが管理栄養士の役目だと感じています。

上記の内容を質問されたときに、皆さんどきっとされる印象があり、
そのときに一方的に話を聞くだけではなく、自分自身も参加して、
この話の主体は自分なんだと認識を持っていただけるような印象があります。
1日6gだとすると、1日3食食べるなら、1食は2gになります。
この1つの質問をするだけで、患者さんの知識や、すでに実践していることを知る機会にもなるので、冒頭に質問することがおすすめです!

次に、コンビニやスーパーのお惣菜に書いてある塩分を見たことがありますか?と聞きます。
みたことがない場合は、買わなくても良いのでスーパーやコンビニで食塩相当量の部分を見ていただくことを伝えています。
見たことがある人は、どのくらい入っているのかを思い出してもらいます。
そうすると、2gに収めるというのはとても難しいことに気づいていただけると思います。

隠れた食塩


高血圧の指導をすると、必ずと言っていいほど言われるのが、「醤油や塩はほとんど使っていません。」という言葉です。(私だけかな?)
しかし、ご存知の通り、塩は醤油や塩を調味料として使うだけではなく、すでに購入した商品に入っていることがあります。

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