枯れた男の哀愁が漂う
映画「スティルウォーター」はまったく知らない映画だった。しかし、ハードボイルド好きのユーチューバー、横道逸太郎さんが、2022年の見た映画ベスト10に、この映画を選んでいて、どんなものかと見る気になった作品である。
昨今では珍しい、枯れた男のハードボイルド役をマット・デイモンが見事に演じていて、思わず2回繰り返し見てしまった。
マット・デイモンというと、グッド・ウィル・ハンティングがあまりにも良すぎて、ボーンシリーズなど、彼にとっては、2塁打クラスの映画が多かったが、このスティルウォーターは、彼の代表作になるのではと私は思っている。
ストーリーは、建築の解体作業を生業としているマット・デイモン扮するビルが、離婚し、過去を引きずって、一人寂しく暮している。そんな親父のもとに、フランスに留学し、その留学先で殺人事件を起こして、服役している娘から、ぜひ面会に来てほしいと手紙が来る。フランス、マルセイユまで、有り金をはたいて面会に行くと、娘は無実をはらして欲しいと父親に懇願する。フランス語のまったくできないビルは困りはて、たまたまホテルで隣り合わせた女性に通訳を頼む。最初は善意で通訳をしていた彼女であったが、ビルのひたむきな娘への思いが、同じ娘を持つ彼女に通じ、しだいに親密さを深めて行く。やがて恋人同士になる二人だったが、女性にも、娘にも、どう愛され、愛したらいいのかわからない。ほんとに頭を小突きたくなるような、不器用な親父をマット・デイモンが見事に演じている。
マルセイユの地中海の青い空と海。そして、目深にかぶったビルの思いつめた表情のコントラストが、なんとも枯れた男の哀愁を漂わせている。
横道さん、いい映画を紹介していただいて、ありがとうございました。