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和田彩花『souhaiter』改め『Le Le bonheur』セルフライナーノーツ

2022年12月11日に配信された和田彩花さんの新曲「Le Le bonheur」。
配信されてからしばらく経ってしまいましたが、こちらのセルフライナーノーツを。

今年の2月、あやちょが渡仏する前に歌録りは終了していました。配信のタイミングだったり私の都合でズレにズレ込み、結局12月になってしまったという感じです。

配信後、「シューゲイザー」や「ドリームポップ」というワードがフォーカスを当てられましたが、まぁ考察勢や評論家風の方々お疲れ様です。薄いです笑
ちゃんと読んで浅はかさに気付きつつ生みの苦しさを感じなさい笑

タイトル曲は2014年頃に遡ります(曖昧だけど)。
当時「YakYakYak」というバンドを掛け持ちでやっておりまして、そのバンド用に作りました。

その頃バンドも2つ、サポートもそれなりにやっておりましたが、私は作曲、編曲等の作家業を生業にしたいという気持ちが強く(それは今も)、しかしながらバンドでは曲を作らせてもらえず、サポート業は楽器演奏でサポートするのが仕事ですので、正直何でもかんでもやりたい音楽ではないし、演奏の表現も自分じゃない時があり、そういうジレンマがストレスを生んでいました(サポート業ってそんなもん、今もそう思う時は正直ある)。

そんな中「YakYakYak」で曲を作る機会がありまして、コンセプトはそれなりにあったとは思いますが、メンバーメインのバンドもあったし息抜きというか、特別気合い入れて周りの顔色伺う感じでもなかったので、自分のバックボーンと言いますか、流行りとか数字とか考えずにとにかく自分のやりたい曲を作ろうと決めて作り始めました。
8曲くらいストックを作ってそこから何曲か消化した頃にボーカルが辞めてしまいバンドは空中分解、複数曲が眠ってしまいました。

そして2021年の終わりか2022年の初めくらいに劔さんから
「楢原さん、あやちょがフランス行く前に何曲かレコーディングしましょう。」
て事で、何曲か作ることになりましたがとにかく時間がないしどうしようとなった時にコンペの曲だなんだ漁ってた中に「YakYakYak」のストック曲が別のPCに入っていたので1曲ずつ聴いてチョイスした曲が今回の曲になります。

以上が曲をチョイスするまでのフェーズです。

ここからが曲の解説となります。

とにかく誰にも文句を言われる筋合いは無いという気持ちで曲を作ったので、前述の通りバックボーンである「オルタナティブロック」が主体となっています。

この曲を作る時の漠然としたイメージはこの2曲がベースになってます。
ここら辺の名前が1人も出てこなかったところがまだまだですな。

コード進行も至ってシンプルです。昨今のJ-Popは始点から終点までのコード進行が長過ぎてより難解というか複雑になっています(特にアニソン)。
そこから洋楽思考といいますか、80年代後半から90年代前半のオルタナティブロックをベースにしたかったのでシンプルにしました。
2、3周回ってある意味新鮮かもと思いまして。オッサン連中は懐古的になったかもだけど。ここの文章内に出てくるアーティストがベースです。
因みにエンディングでコード進行が変わるのですが、そこが「すばらしい日々」をオマージュしています。

では、「シューゲイザー」と言われる所以である轟音ギターですが、今となっちゃあ披露する場所がほぼなくなりましたが、別に普通にやっていた行為でしたので私にとっては当たり前というかあれが「ギタリスト楢原英介」のスタイルです。

轟音ギターの音作りですが、「FUZZ」、「ReverseされたReverb」3台くらい使用した別のタイム感の「Delay」「Reverb」「Compressor」あたりがあれば作れます。特に「ReverseされたReverb」がミソです。これがあるとないとで大分変わります。
ここに関してはみんな大好き「Kevin Shields」の音作りを参考にしてます。
ギターは1961年製「Fender Jazzmaster」で録音しています。

続いてLRで異なるストロークで演奏しているコーラスギターですが、80'sミュージックというか、「New Wave」が好きな私ですのでこちらも定番です。
結局曲調というかアレンジの中で「Ride」寄りにしてちょっと粗くしました。
因みに録音時レッスンで「Ride」の曲をやっていたのでストロークのクセが出ちゃってます笑
Lchのギターです。
ギターはLR共に「Fender Custom Shop David Gilmour Signature Stratocaster」を使用しています。

他にリバースギターのフレーズがありますが、あれを消すと悪い意味でまとまってしまいますのであえて終始ループで鳴らしてカオス感を演出しています。

そして2番から流れてくるフレーズは個人的には「James Iha」のイメージです。

実はアコースティックギターもよーく聴くとなっています。
今回は「AMERICAN ACOUSTASONIC® JAZZMASTER®」で録音してみました。
なのでラインのみの音ですが、わからないくらい良いギターです。

結果的に「シューゲイザー」や「ドリームポップ」、「マッドチェスター」の枠組みに入るような曲になりますが、まぁある意味時代錯誤で逆にインパクトは与えられたと思います。

さてここからはベース、ドラムについて書いていきましょう。


「私的礼讃」というアルバムでは現サポートメンバーでの録音になっており、勿論私が作曲した2曲も演奏してもらっているのですが、個人的にはアレンジがある程度終わるとどのミュージシャンがマッチするのかとかサッカーの予想スタメンみたいに妄想するわけですね。

私は「VOLA & THE ORIENTAL MACHINE」というバンドで2008年からギター他で参加させてもらってるのですが、そのバンドを始動し、ボーカルを務めているのが今回ドラムを叩いてもらった「アヒト・イナザワ」さんになります。
じゃあなぜ所属を「NUMBER GIRL」にしたかといいますと、答えは簡単。
ドラムでのオファーだからです。

そうして劔さんにはドラムは鰰澤さんにオファーをする旨の連絡をしまして、じゃあベースは同じ「NUMBER GIRL」の中尾憲太郎さんにお願いしたらどうかという事になりまして、オファーを致しました。

という周りからしたら当たり前のような接点でさえ知らない考察勢、評論家風が割と多かった事にも驚愕しましたが笑
VOLAを1年活動しないだけでこんなにも忘れ去られるとは…苦笑

ベースのレコーディングは都内でしたので参加させて頂きました。
ジャッジの判別がわからないからのことでしたがそこは流石の憲太郎さん。
勿論今回の曲系のジャンルは私なんかよりも遥かに詳しいので全く心配していませんでした。一流ですし。
私は「好きにやっちゃってください!ガンガン憲太郎さんのベース出しちゃってください!」と言っただけで、後は曲の雰囲気、音質バランスを見ながらテイクを重ねる毎に馴染むどころか曲がどんどん磨かれていくのを聴いて勉強になったのと同時に憲太郎さんにお願いして本当によかったなぁと思いました。
余談ですが、「NUMBER GIRL」は勿論学生時代に通っていたので、あの憲太郎さんにしか出せないゴリゴリの音が自分の曲で鳴った時には凄過ぎて笑っちゃいましたが。

ドラムのレコーディングは福岡で録音して貰いました。エンジニアさんは「VOLA & THE ORIENTAL MACHINE」の「Transducer」というアルバムに携わってくれた「山中勲」さんにお願いしました。
鰰澤さんにも事前に基本ビートを基に好きに叩いて下さい、ということを伝えまして基本自由に叩いて貰いました。
録音が終わってドラムが差し代わった音源を聴いた時、アヒトさん節(伝わる人には伝わる)炸裂で、こちらも笑ってしまいました。
実はオファーを別々でしているので憲太郎さんには伝えましたが、恐らく鰰澤さんの方はベースが誰か知らなかったと思います笑
でも別々で録っても流石同じバンドのリズム隊!
2人の音が合わさった時、また曲が活性化していきました。
こちらも余談ですが、2Aの前半でスネアの4発鳴っている所のみ加工させてもらったのですが、一応参考音源はこちら。

そして最後にボーカル。

あやちょは「私的礼讃」での2曲で私の曲の潜在能力を思ってた以上に引き上げる才能の持ち主です。まるでドラゴンボールの最長老さまの様です。
今回の曲調は今までのソロ、はたまたハロプロ時代には無かった特殊なケースなのはわかっていましたが、この埋もれてた曲をチョイスしたことは間違ってはいなかった。
「Cocteau Twins」よろしくカオティックな渦巻くような音像にもちゃんと「和田彩花」は存在するんですよね。存在どころか全て持っていく様な。
ハモリも実は割と入ってまして、単純な3度だけでなく別のフレーズだったり結構色々歌ってます。

フェイクっぽいフレーズですが、あれは直前に追加しました。ちょっとキーが高めですが、あの浮遊感を出すにはちょっと高い方があやちょの良さが出るということを「今夜はブギーバック」のカバーの時に感じました。
本人にしたらキツかったかもしれないけど、あやちょはやる前から否定せずチャレンジしてくれるのでありがたいです。
※すみません、時系列的には「今夜はブギーバック」の方がフランス行った後でした笑
しかしながらあやちょの高音は言葉にできない魅力を感じます。

2月に急ピッチで仮のオケを作りましたが、時間のない中であやちょはとても良い歌詞を書くなと思いました。
歌詞に関しては専門外ですが、この文章のタイトルに「souhaiter」という単語も記載していますが、こちらがリリース直前までのタイトルでした。
意味は「願う、望む」。
本人の考えは皆目見当がつきませんが、音像とのギャップにやはりあやちょは1枚も2枚も上手だと感嘆したものです。

一部「ボーカルが遠い」「ボーカルが小さい」との声も頂きましたが、そちらは想定内です。そもそも現代の風潮が「ボーカルがデカすぎる」だから。
Mixエンジニアのまきおさんとも相談しましたが、今回は勝負を仕掛けてます。
ボーカルをあと数db上げたら、全てを包み込む轟音ギターをあと数db下げたら、もっと輪郭が出て綺麗になったかもしれません。
しかし曲がそれを求めていませんでした。あの混沌とした音像の中に聞こえる「幸せ」との対比を楽しんでもらいたい。

長文になりましたが、こちらを読んだ上で改めて聴いてください。

それでは、和田彩花で「Le Le bonheur」

ポッドキャストやってます。こちらでも「Le Le bonheur」の話してます。
重複してますが、話したほうが早いことはこっちで話してます。
もしよければ併せて聴いてください。

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