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タイプ別! 短歌の一首評の書き方

 読んだ短歌について人に伝えたくなった。そんなときどうしたらいいでしょう。
 取っ掛かりがつかめずうまく書けずにいるうちに、やる気がだんだん過去になっていく。もどかしいものです。

 この記事では、なんと、フローチャートであなたの「一首評タイプ」を診断し、ぴったりな書き方をアドバイスします!
 もし、アドバイスが合わなかったら……? ほかのアドバイスを読んでみましょう。

 アドバイザーは短歌同人「えいしょ」の八人。ひとりくらい、あなたと似た人がいるかも!

 

上の図が小さいと感じる人は、Twitterアカウントがあればこちらでも診断できます。

Aタイプのあなたは……ぼんやり壁を見てみよう


 本やパソコンから目を離して、視線を上げてみよう。そこには部屋の壁があるだけだが、それでいい。短歌の文字を視界から外す。短歌は文字がすべてだが、表面的な言葉遣いはそこまで大切ではない。人のことを考えるにおいて、見かけや口先にとらわれすぎてはいけないのと同じことだ。
 どんな気持ちになっているか、自分自身の思いを確かめて、少し待ってから、ふたたび短歌に視線を戻す。
 すると、自分の心を動かしたのが、短歌のどの部分なのかなんとなく気付く。仕組みまではすぐにはわからない。考えてみる。
 考えたら、書き始める。大事なのは自分の心の動きだ。心のことを書きながら、どうしてそんな気持ちになるのか、短歌の言葉の仕組みについて書き添える。
 評はチェックリストではない。見えている言葉すべてについて精査する必要はない。自分の感動がひとつ。その感動を引き起こした仕組みがひとつ。それだけわかれば十分だ。

(中本速)

Bタイプのあなたは……心を言葉で追いかける


 まずは、一首評を書けると思える歌を選びましょう。一首評を書くために歌を預かるのは、評に慣れてからがよいです。一首評を書けるという感覚は、直感です。なぜかはさておいて、この歌で何かを言いたい、そう思える歌に、出会いましょう。
 次に、なんで自分はこれで書きたいと思ったんだろう? ということを考えましょう。直感の時点では言語化できていないものを、なんとか引き出します。歌のこういうところがいいと思ったから? 自分の体験を思い出したから? 書き方に引っかかりを覚えたから? いろんな理由があるはずです。もし言語化できなくても、してください。あなたの心です、あなたの言葉で追いかけましょう。でも、それでも無理なら、諦めましょう。
 最後に、言語化できたものをそのまま書くだけです。立派な一首評ですね。これは個人的な意見ですが、言語化に時間がかかった評ほど、納得度が高いです。

(御殿山みなみ)

Cタイプのあなたは……第一印象から考えてみよう


 その短歌を読んだ第一印象を手放さないようにしましょう。きれいだなとか、暗い雰囲気だな、などの第一印象について、(こんなに浅い、誰でも思いつきそうなことを書くわけにはいかない)と考える必要はありません。まず第一印象を書きましょう。
 次にその印象はどこから生まれているのかを考えます。象徴的な語があるかもしれませんし、言葉の並び順かもしれません。
 どこから生まれてくるのか突き止めたら、なぜその部分がそのような印象をもたらしているのかを考えます。象徴的な語であればその音の響きかもしれませんし、その語が持っているイメージかもしれません。
 ここまで書いて、その短歌について読み込んだら、何か変な違和感がある部分や、明らかにおかしい部分が見つかるかもしれません。そういう部分を指摘することも大切です。
 なかなか評が書き始められないときは、こうやって、第一印象について掘り下げていくのも一つの手かと思います。

(岩田怜武)

Dタイプのあなたは……とりあえず書いてあることから探る


 私はまず文法や意味から読解を試みます。常識からずらしてあれば、それは特徴として読み進める手がかりになります。大事なことは、書いてあることを最大限に読み解いて足場を作ることです。理路整然と書かれていても読みを統一することは難しい。論理的にどう読んだかを明らかにすれば、読者がさらなる解釈を進める助けにもなるはずです。
 文章としての論理を検証したら、置かれた言葉の印象や音を分析します。ここで経験や感覚が大きく反映されますが、なるべく思い込みで歪めないよう注意します。歌会では作者の意図がどこにあり、どの程度達成されているのかを考えることが多いですが、評の原稿を書くにあたっては自分がなにを受け取ったのかに重心は傾きます。連想や裏読み深読みは最後に。紙幅が少なければ書きません。
 この通り堅実にやると、まあまあつまらない仕上がりになります。牽強付会や自分語りを戒めながら話を広げるのが良いです。

(堂那灼風)

Eタイプのあなたは……簡潔に


 わたしの場合は、自分の読みだけが正解だとは思っていないので、一意見くらいのスタンスで書いています。
 対象となる歌から何を読み取ったのかを、簡潔に。あまり自分に引き寄せ過ぎないように(時間や文字数に制限がなければ、各々の寄せ具合を聞くのは好きですが)。
 解釈に迷う場合には、とりあえずどこでその迷いが生じたのかという道筋について書くと、他の人の評と解釈が分岐するところが明確になってよいのかなと思います。それが作者の意図に添うかどうかをフィードバックできますし。
 あとは、使われている言葉の効果や、歌の構成についての指摘、等々についても触れておきたいところですね。

(有村桔梗)

Fタイプのあなたは……徒然なるままに愛のままに


 色々な短歌を読んでいると、胸を打つ作品であったり心に引っかかる作品と出会うことがあります。その時に心の内側から溢れてくる気持ちを、わたしはこんなふうに書いています。
 まず、自分がどう感じたかについて徒然なるままに書き出します。次に、その気持ちがどこから発生したかについて色々な角度から分析します。
 例えば、

・歌意(どう読んだか)
・表現方法(言葉遣い、比喩、オノマトペなど)
・短歌で使用される技術(破調、句跨り、圧縮、韻律など)
・比較(他の短歌作品や同じ作者の他作品、他ジャンル作品との比較など)

 等、色々な角度に作品を当てはめて思考します。
 このように、自分の気持ち→そう思った理由についてあらゆる角度から分析して、作品の内面を掘り下げられるように心がけています。

(坂中茱萸)

Gタイプのあなたは……思わずいられない


 いったん、なんかもう全然関係ない事とか考えようとしてみるといいと思う。次の飯時に食べたいものとか、最近のうまく言えた会話とか。を、思ったり思いだしたりしながら、でも、なんか気持ちの隙間に入ってくるような「さっき読んだ歌」があればそれについて話せばいいと思う。
 それのことを思っていられずにいられなかった、そのことはなんでそうなのか。気づけば口を突いて出そうなフレーズ、がたぶんそうなったときその歌のどこかにあると思う。全部かもしれない。全部なら全部でいい。
 これ、なんだろう……? と思ったなら、そう書き始めればいい。そのまま、自分の書いたこと、と、自分、で歌会みたいに会話してればだいたい「評」になる。
 評の書き方、じゃなくて、書き始め方、をここには書いた。思っていずにはいられなかった一首、にだけあなたは評の言葉を動かせばいいと思う。そんなにないようでいっぱいあるそれ、が、変えてきたあなたの体温の変わった量はそのままたぶん言葉にできる。

(平出奔)

Hタイプのあなたは……自分の言葉で書いてみよう


 短歌を読んで感じた何か。それはあなただけのものです。だから、評を書くときもまず思ったことを書きましょう。書き出しはなんでも大丈夫。結論から書いてもいいです。「うれしくなった」「ドキドキした」「こわかった」。簡単な言葉でOKです。もちろん「わからなかった」でも。
 一言書けたら、次に思ったことをそのまま続けます。ここがよかったとか、なぜそう思ったとか。こんなことを思い浮かべたとか。それを借り物の言葉ではなく、自分から出てくる言葉で表現するのです。すると「こんなこと書いていいのかな」「失礼じゃないかな」と不安に思えることがあります。
 ですが、短歌を評する上で一番大事なのは「目の前の一首に向き合う」ことです。書かれたものを自分のうちに落とし込み、敬意を持って丁寧に自分の言葉にする。手間はかかりますが、そうやって紡がれた評はうつくしく、温かで豊かなものになることでしょう。そんな評を私は良い評だと思います。

(のつちえこ)

お知らせ!

短歌同人えいしょは、同人誌『えいしょ2022』を出しています。
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