【小説】ある秋の日、窓の向こう

小説家になろう 2016年11月08日投稿作品https://ncode.syosetu.com/n0486dq/

「え、雪?」
「はい?」

窓の外を雪がひらひらと舞っていた。
驚いている私に対して、隣の友人は怪訝そうだ。

「この季節外れの暑さにやられたの? 大丈夫?」

そして冗談なのか本気なのか分からない表情で心配された。頭を。

「違うから。外見てよ、外!」

確かに今日は暑い。
11月だというのに、今朝の予報では夏日になると言っていた。
それなのに雪が降るなんて、いったい空の上はどうなっているのか。

「んー・・・熱はないかなー?」
「そう? なんかだるいんだけどなー・・・って違うから! それに近い近い!」

おでことおでこをコッツンこって、友よ。
いくら女の子同士でも、その可愛い顔を近づけられたら照れるぜよ。

「ぜよってなんだよ!」

思わず声に出してツッコんでしまった。

「何言ってんの? 保健室行く? 今日はカウンセラーさんもいるよ?」

ますます心配された。頭を。違うから。

「だーかーらぁ! とりあえず外見てよ!」
「うん、見たよ。天気いいね?」

うん、青空。快晴。いい天気!
・・・ あれ?

「え・・・えええーーー?!」

嘘だ。さっきは確かに降っていた。
雪が。この辺りでは珍しい、ふわっふわの綿のような雪が。
思わず立ち上がり、窓にへばり付いて外を改めて見る。
・・・天気いいね?

「白・・・あぁ、雪ってそれのこと?」
「へ?」

後ろで友が答えをくれようとしていた。

「あんまり勢い良く立ち上がるもんだから、スカートが捲れて可愛いフリルの白いパン「みなまでいわないで」

確かに今日は白だけれど! お気に入りのやつだけれど!

「違うから。確かにさっきは雪が降ってたの。ううん、舞ってたの!」
「うん、スカートがふわっと舞って、白いフリルがひらひらと「そこじゃなくて窓の外」
「え、外で? もしかしてあんた露出癖があ「違うから!」

このドS・・・可愛い顔でニヤニヤしおってからに。

「本当に大丈夫なの? 熱はなさそうだけど、次の授業自習だし、保健室で休んできたら?」

そして一転して心配そうな顔。この女たらしめ・・・。
でも、確かに休んだ方がいいかも。

「・・・うん、そうする。」

落ち着いて考えてみれば、そもそもこの暑いのに雪が降るというのはおかしいのだ。
だからこそ不思議なのだけれど。

「私、付き添おうか。なんだったら添い寝してあ「大丈夫だから」

休んで来ると言っているのに、熱が上がるようなことを言うでない。
ニヤニヤしおってからに・・・本当に心配してくれてるのかな?
どっちにしろ可愛いから許す。

保健室に向かう途中、ずっと窓の外を見ながら歩いていたけれど、空は青く、やはり雪は降っていなかった。
私の見間違い?
夢・・・な訳ないよね。起きてたし。

ひとつ確かなことは、頭を強く打つと星が本当に飛ぶということ。
角を曲がる時に思い切り壁にぶつかってしまった。痛い。
こんな調子じゃ心配されても仕方ないかな。

そう思って再び歩き出したのに、ついまた外を見てしまう。
・・・舞っていた。雪が。

私は息を飲んだ。
そして、予鈴で我に返るまでの間、その光景をただ呆然と見ていた。
気づけば雪は止んでいて、空からは季節外れの光がこれでもかと白く降り注いでいる。
いつ止んだのかもわからない。

私はひとつ頭を振り、今度こそ保健室に向かった。
頭を振った時、頭の奥がズキンと痛んだ。