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#環境課CC
【アントシアンの礎石】 Cp.1
皇純香。
胸元から下げているIDに刻まれている名前。
椛重工の応接室に招かれた彼女は、調印された書類を見比べている男性の言葉をじっと待つ。
時折向けられる視線を意に介さず、堂々と、胸を張って。
「確認いたしました」
自分とその隣に座る男性役員――初めて顔を合わせる相手。
それぞれ一枚ずつを受け取り、立会人が深々と頭を下げた。
「椛重工と環境課の双方にとって、この関係が良きものでありますよう」
【アントシアンの礎石】 Cp.2
「お待たせしました」
椛重工の役員用会議室に最後の一人が到着した。
祇園寺ローレルを含めた五人が集まり、環境課から提供された情報と自社の調査によって得られた情報の二つを眺める。
そして渋い顔をした。
この騒動の発端――
「結論から言えバ――まったくもって恥ずかしい身内の恥ダネ」
ハッカーをバックアップしていたのは椛重工の子会社だった。
数か月前のインフラ整備工事の際、仕事を回されなかった事が