英氣(EIQUI)
夜は寒いけど、暖かく流れる音は、通奏低音みたいに僕たちをつつむ。
年頃の娘がバレンタインデーを迎える。父から娘へのメッセージ。
「もう、夏ですね」 夕紀子はそう言って、髪の毛を左手で耳にかけた。ほんの五分前の空には赭光(しゃこう)がともって夕紀子とわたしをしきりに炙っていたのに、気が付けば夕闇はもう迫っていて、曇色(くもりいろ)に翳ったわたしと夕紀子の空間を呑もうとしている。 わたしの肌は五月の空気に含まれた夏を確かに感じている。 遠くに響く子供たちの遊び声や、無造作にアスファルトに撒かれた打ち水が、夕刻の街路に夏を忍ばせているのかもしれない。とにかくわたしと夕紀子は夏の一歩手前にいる。 鬱陶し
Played with Virtual modelling piano Pianoteq 4
3.11の犠牲者に捧ぐ