選択

胸がザラザラする。

そんな時、気分転換を試みる。クーラーをつけようか、何か食べようか、映画でも見ようか、小一時間散歩でもしようか、寝ようか。

自分の機嫌を取るために考えて、コンビニに甘いものを買いに行くことを選ぶ。でもその選択は決定的に間違っている気がして足が重くて、欲しいものなんて一つもなくて、店員とのやりとりがチグハグのまま、普段見向きもしない種類のアイスを購入して、家に帰って、噛んで、飲み込んで、後悔しながら食べ切る。

この一連の全く無駄な流れ、よくやってしまう。ザラザラした気持ちが全く解消されることなく、より一層ザラザラするだけ。一人でいる時ならまだ良いけど、人と遊びに行く時でさえこういう気持ちになってしまうと困ったものだ。

約束をしてしまっていたら、家から出た瞬間に決定的に間違いの予感がしても、やっぱりやめた、と家に引き返すことを選べない。ずっと微妙な顔で、重い足で、ザラザラした胸で、硬い表情で、血が上った頭で、滑る舌で、その日1日をやり過ごすけど、本当は今すぐ帰って、寝て、二度と目覚めたくない気分だ。

私は勉強が好きだった。間違っていると感じることが「滅多に」ないから。勉強をしているときはなんだか全て正しいことをしている気がする。勉強はいつでも、この胸のザラザラを忘れさせてくれた。

絵を描いたり、映画を観たり、本を読んだり、友達や彼氏と遊んだりすることにザラザラしないようになりたいと思って遊び呆けていたら、いつのまにか22歳になっていた。しかし、ザラザラしなくなったということはなく、ザラザラの対象が遊ぶことから今度は勉強にチェンジしただけだった。

ザラザラを消すことはできない。時には正座して向き合い、時には涙で洗い流すしかない。間違った予感のする方をわざと選んでも良い。完全に間違えて笑われても、自分が納得してくれる選択肢がきっと正しい方だと思う。どちらにせよ、そんなに重要なことではないのだから。


おしまい




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