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『八月納涼歌舞伎』を観た記

楽しかったー!

ゆうれい貸屋

江戸の話なのに、現代人の感覚にも通じるお話。
どのキャラクターも立っていてすごく面白い!

威勢が良いと思ったら恥じらってみたり、ちょっと脅してみたり、全力で喜んだり、恨んだり、、女形さんの魅力が感情の起伏のなかに詰まっていて、たくさん微笑ましいと思ったり笑ったり、大忙しでした。恋する女性のワクワクして相手の男性に何かしてあげたい感じが、本当にキュート。

冒頭、劇中でお祝いがあり、劇場全体が温かい雰囲気包まれるのも、すごくいいなあと。
(つい仕事のプロジェクトリーダー目線で)この演目のチーム全体が、総じて良い雰囲気で作り上げて、お互いを高められるチームだったのかなと、思ったりしました。

鵜の殿様

ひたすらすごい。
これは日舞?パントマイム?ドリフ??どんなジャンル??
歌舞伎のすそ野を広めるには、こういう作品をもっと押し出してもよいのに!男子中学生・高校生なら、きっと体育館で真似するんじゃないかなと。

長袴を操りながら、踊り転び転び転び・・・ ハプニング的な転倒もあったのか、どこか痛めていないか打撲になっていないか、身体を心配しつつ、アクロバットと身体能力に感嘆し、笑わされて、でした。

女形さんたちの姿も美しく、動きも洗練されていて、それぞれの個性もあって、こちらも眼福。
「すん」とお勤めしつつ、パントマイムの大縄跳びで「えいっ!」と飛ぶ姿の可愛らしいこと!
着物の裾からちょっと見えるセクシーな足首にドギマギもしました。。。

終演後、通りすがりの方が「(染五郎さん)あんなに働かされて大変~。でも、あのお父さんの下に生まれてしまったから、諦めるしかないよね」と連れの方に言っているのが聞こえて。笑

歌舞伎役者さんって、体力おばけで、何でもできなきゃいけないし、、
これを毎日とは本当にすごい。

梅雨小袖昔八丈 髪結新三

後半、大家さんが出てきてからの展開がテンポよくて楽しい!

大雨のときの町の人の浮世絵と同じ仕草や、鼻緒を手持ちの紙で直したり、鰹売りが出てきたり、劇中の江戸感に「あ~、そういうことか!」「これ知ってる!」という発見もあって、昔NHKで放送していた『コメディお江戸でござる』を思い出したりもしました。

ちょっと積極的な可愛くて若い女の子が、悪い男に若さ・甘さを利用されて攫われる、というお話の筋が受け付けられないのか、お熊ちゃんが解放されるまでは、すっきりとした気持ちになれず、おかしみのある場面の腹の底から笑えず、なんだかモヤモヤとした気持ちもありました。
これはきっと、現代人の感覚なのでしょうね。

艶紅曙接拙 紅翫

すごいと思うものの、こういう「扮装をした役者さんが複数出てきて、舞踊を披露する」系演目の楽しみ方が、まだよくわからないのです・・・ 
推しの役者さんができないと難しいのでしょうか???

狐花

学生時代に京極夏彦作品に出会い、森博嗣、その他ミステリを読み漁り、時間と涙をあの鈍器(本)にどれだけ捧げたかわからない身としては、見逃せませんでした。

七之助さん、新悟さん、米吉さん、虎之介さん、そして笑三郎さん、梅花さん。個性のある女形の妙が一気に楽しめるお得パック。どのお役も良かった〜〜
京極作品は、女性キャラクターが画一的ではなく、一癖ありながら魅力的だった記憶があるので、生き生きとした台詞や所作が現実世界に再現されたのも嬉しく。

現代語で演じていても、歌舞伎に見えるところもあり。現代劇に見えるところもあり。歌舞伎という世界の舞台機構・型・人材をどううまく使うかが脚本と演出の妙で、いわゆる”新作”の成功の一要因かなと思い始めました。

染五郎さんと勘九郎さんは、はじめ気付かず「この上手いひとは誰だろう」と!
勘九郎さん、七之助さんは、声がよく通るので長台詞や厄介な言い回しでも聞き取りやすく、その秘訣を知りたくなりました… 何が違うんだろう。。

昔の京極堂シリーズの印象からは、少しおや?こうだったかな?と思う流れもありましたが、楽しみました。

客席がいつもと違う雰囲気に感じられて。
平均年齢が普段より10歳ほど若く(座席につくのに、歩行器や杖を使ったり、席が探せず案内してもらうような介助が必要な方をほとんど見かけなかった)、
普段劇場に足を運ばないのかなと思われる方が多く(盛り盛りの髪型や、冷房対策が甘く途中でゴソゴソ重ね着をする方)、
腰が悪そうでじっと座っていられない方(出版業界?)も、いつもより多い印象でした。


総じてどれも楽しくて、暑い中移動して観てよかった8月でした。
歌舞伎っておもしろい!

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