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終戦記念日に想う横須賀綺譚

先日かなり久方ぶりに映画館での映画鑑賞を行った。

役者を経験していると、一般世間からは映画が好きで沢山観ているだろうと思われがちだが、嫌いではないにせよ、映像として残っている故、「いつか観られるのでは」と頭の何処かで思い、結局観ないで終わる残念な人間の1人なのである。

映画のタイトルは『横須賀綺譚』。実のところ、視界の片隅にSNSから流れている情報を感じても「観たい」とは思っていなかったし、観る予定でもなかった。

それが。

ある日コミュニティFMに好きなインディーズバンドがゲスト出演し、同日同じ番組のゲストに『横須賀綺譚』の監督がご出演されたというだけで‘縁’を感じてしまったのである。

ただ、この時点では「DVDが出たら観よう」くらいの程度だったのだけど、監督からの集客に関するSOSをSNSで見てしまい、結果、気がつけば衝動的に映画館に足を運んでいた。これは演劇制作も経験していた職業病の残骸かもしれないが。

まだまだ映画館での上映を展開するご予定だそうなので詳しい内容は差し控えさせていただくが、

私が拝見した率直なイメージは、

『静かなダークファンタジー』。

(これに納得された方とは仲良くなれそうだ)

ただし、表面上はとてもシンプルに見えるので、奥行きを感じ取れる感性豊かな方々に是非観ていただきたい。

それと。

何故、今日この日に投稿する気になったかというと。

映画館で拝見した上映の後に監督のトークショーも開催されたのだが、聞けば監督の大塚信一さんは、長崎の被爆三世だそうなのだ。

この『横須賀綺譚』は東日本大震災を絡めて物語が進んでいくのだけれど、それは、大塚監督が幼少の頃学校での「つまらない時間」と感じていた、長崎の原爆の体験を語る『語り部』達がこの世からいなくなってしまったら、この事実を誰が伝えていくのかという想いもあってのことらしい。

これは、私の父方の親戚も存在するブラジル日系社会にも同様のことで、日本の政策の一環として意気揚々とブラジルに渡ったものの、説明されていた状況とはかけ離れた現実と、戦争による故郷との分断の中で、1代で新しく事業を築き上げ子孫の教育に心血を注いできたコロニア(日系社会での移民1世の総称)の皆さんの殆どが亡くなっている状況で、この先この事実を誰がどの様に伝えていくのか、という懸念が潜んでいるのである。
大塚監督に共感できた私については、何か創作できるかというと到底力及ばすなのが歯痒いところだけれど。

ともあれ、この『横須賀綺譚』に限らず、映画などの芸術に触れることをきっかけに思考を巡らせることの重要性を確認できたのは、私にとって幸せな時間だったことは間違いない。

ここに辿り着くきっかけをくださった、FMサルース『FUJITA MISA RADIO SHOW みさラジ♪』パーソナリティの藤田みささんにも、この場をお借りして心より御礼申し上げます。


*追記*
ヘッダーの画像は『横須賀綺譚』の気に入ったシーンの1つをお借りしました。
母方の従兄の次男坊にちょっと似ている主演の小林竜樹さんと、今後も観てみたくなった役者さんである川瀬陽太さん。

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