見出し画像

アンティキティを語る。


ツイッター質問箱でこのような質問をいただいた。

---------------------

noteのウルザズサーガについてが大変面白かったので、茶色好きの英宝さんにアンティキティーについてを語っていただきたいのですが…

---------------------

喜んで!
ということで今回はアンティキティについて。

はじめに


アンティキティ。
発売日:1994年3月4日。
MTG最初の基本セットの発売が1993年の8月5日。
そこから1年経っていない間に出た最初期のエキスパンション。
今が2021年なのでもう発売から27年が経過。

このセット大好き。
もう何が好きってそりゃあもうあの雰囲気。

舞台はウルザ君とミシュラ君の兄弟戦争。
世界を真っ二つに分けて戦争やらかす危険なブラザーズ。
君たち、職業が配管工で、
兄ちゃんが赤くて、弟が緑じゃないだろうな?
あとキノコ食べると身長が2倍になる幻覚見たり、
お花持ってると手から燃える肉団子投げられる幻覚見たり。

さて、兄弟戦争の事は置いておいて、
アンティキティはとても雰囲気が良い。
自分がアーティファクト好きなせいもあるというべきか、
自分がアーティファクト好きになった原因というべきか。
アンティキティのカードはほとんどのカードがアーティファクトに関連していて、
「アーティファクト」の文字がないカードが全85種中たった4種だけ。
・《露天鉱床/Strip Mine》
・《ウルザの鉱山/Urza's Mine》
・《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》
・《ウルザの塔/Urza's Tower》

の4種のみ。
土地だからアーティファクトって書いて無くて当たり前だよねという感じ。

基本セットを除いて、
アラビアンナイトの次に出たセットで、
ここまでアーティファクトにこだわるセットを作ってくるあたり、
当時のWotC社は結構なセンスの良さだったと思う。
強い、弱いは別として、
かなり個性的なカードが多いのも含めてこのセットは大好きだ。

まず、普通の人が忘れているカードで、
(もしくは根本的に知らない)

画像1

《Artifact Blast》
コスト:赤
インスタント
アーティファクト呪文1つを対象とし、それを打ち消す。
コモン

というカードがある。
初期の基本セットの赤には《粉砕/Shatter》という単純にアーティファクトを壊すカードがある。
こちらは呪文を打ち消すという形式。
《粉砕》が2マナなのに対し、こちらは1マナ。
なかなか良く出来たカードだ。
召喚酔いに関係なく起動出来る起動型能力を持つアーティファクトは《粉砕》では対応しきれない事がある。
それをこちらではカウンターするので対応可能。

なお、後の時代で
《無効/Annul》
《鋼の妨害/Steel Sabotage》
といった青で上位互換が生まれてしまう。
こういう所で青の上位互換なんぞ作らんでええ。
こんないぶし銀な赤のカードは他になかなか無いのに。
赤の特色をわざわざ青で潰さんでくれ。

トリスケリオン/Triskelion

大好きなカードでは
《トリスケリオン/Triskelion》

画像2

このポンコツロボット感ある絵がたまらない。
描いている絵師様は《セラの天使/Serra Angel》でお馴染み、
Douglas Shulerさん。
個人的にはアルファで刷って欲しかった生物。
君がアルファにいてくれたら、
間違いなくアルファ40のフィニッシャーだった。
能力の柔軟性の高さはこの時代随一と言っても過言ではない。
「+1/+1カウンターを取り除いて対象に1点ダメージ。」
という能力は、
絵のユニークさも相まって「ロケットパンチ」の愛称で親しまれる。
そしてMTG黎明期ではその愛称ゆえか、
日本国内では《トリスケリオン》の事を「マジンガー」と呼ぶ人もいた。

言うまでもなくロボットアニメの金字塔、
ロケットパンチの金字塔、マジンガーZの事。
だいたいの人は
「アニメ見たこと無いけど、
 スーパーロボット大戦やったからわかる。」
のはず。

一時期はヴィンテージの世界で、
2ターン目に2枚の《Mishra's Workshop》から《トリスケリオン》着地!
なんて事もあったが、
似た能力を持つ《歩行バリスタ/Walking Ballista》に取って替わられた。
決して《トリスケリオン》が下位互換になってしまったわけではないが、
使いやすさで《歩行バリスタ》が上になってしまった。
けれども、
《歩行バリスタ》は当然オールドスクールでは使えない。
オールドスクールの世界でのフィニッシャーとして、
《トリスケリオン》は確固たる地位を確立している。

テトラバス/Tetravus

次、《テトラバス/Tetravus》さん。

画像3

アンティキティのよくわかんない合体ロボ。
一応空を飛んでいる。
活躍した時代はほぼ無し。
第4版で再録されたりしているが、
当然の事ながらガッカリレアとして扱われる。
前述の《トリスケリオン》との合体?として、
時のらせんで《トリスケラバス/Triskelavus》が登場。
また、地を這う生物のほうでは、
テトラ(4)ではなくペンタ(5)になった、
《ペンタバス/Pentavus》も登場。
何故かは知らないが、
《トリスケリオン》がマジンガーなのに対し、
《テトラバス》はゲッターロボと呼ばれる事があった。

絵だけ見ると3つに分離する合体ロボだからだと思われるが、
(ゲッターロボは3つに分離する。)
テトラという単語は4を表す言葉で、
能力的にも1/1が最大4体になる。
たぶん見た目でゲッターロボだったんだろう。
ゲッターロボもだいたいの人は
「アニメ見たこと無いけど、
 スーパーロボット大戦やったからわかる。」
のはず。
全然関係ない話で、
「アニメ見た事無いけど、
 スーパーロボット大戦やってるから主題歌わかる。」
ってあのゲームのプレイヤーのお約束だよね。

そんな《テトラバス》はゲッターロボのように使われる事は無い。
人によってはゲッターも二軍落ちだが。
ん?店主はどうだって?
スーパーロボット大戦ってのはリアルロボットだけでクリアするもんよ。
ゲッター?マジンガー?避けられない奴はベンチ温めとけ。
ロボット大戦と言いながらガンダム大戦するのが基本。

さて、この《テトラバス》君、
少なくとも場に出された事がある人は少ない。
ただし、店主は使った。
オールドスクールで。

これが重要なロボだった。
他に探しても結構いない生物なのだ、このロボの性能。
何がというと、
6マナで4/4飛行を持っているかどうか。

オールドスクールの茶単デッキにおいて、
どうしても超えられないカードがある。
それは《Moat》というカード。
「飛行生物以外攻撃不可。」
という漢字だけで表現可能の、
無茶苦茶な性能のエンチャント。
茶単で《Moat》を壊すなら
《ネビニラルの円盤/Nevinyrral's Disk》でリセットか、
または1枚制限の《Chaos Orb》ぐらいしか無い。
そのため単純に《Moat》を超えて殴れる生物が重要だった。
《セラの天使/Serra Angel》
《センギアの吸血鬼/Sengir Vampire》
《大気の精霊/Air Elemental》
といったエース達とも相打ち可能な性能という点も大きい。
相手次第では分離する事もある。


代表的なカード


アンティキティの代表的なカードと言えば、
トップ2は揺るがない2枚、
《Candelabra of Tawnos》
《Mishra's Workshop》
で決まり。
アンティキティのトップカードの
《Candelabra of Tawnos》
《Mishra's Workshop》
とは別に大きく活躍したカードがさらに2枚。
《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》
《露天鉱床/Strip Mine》
この2つ。
この合計4枚についてものんびり書いていこう。


露天鉱床/Strip Mine


まずは《露天鉱床》から。

画像5

《露天鉱床/Strip Mine》
土地
(T):(◇)を加える。
(T),露天鉱床を生け贄に捧げる:土地1つを対象とし、それを破壊する。
アンコモン

元祖の土地破壊土地にして、
最強の土地破壊カードでもある。
このカードは登場当時から危険なカードとして認識された。
お互いに4枚積みのデッキの場合、
当然にお互いの土地を割りまくるので、
後は土地を多く引いたほうが勝ち!なんて事もざらにあった。
これの後に作られる土地破壊土地は制限や条件が付くが、
このカードだけは完全に1対1を取るカードなので、
多色、単色関係なく対戦相手を土地事故に陥れる事もあった。
このあまりの脅威に1996年10月1日にスタンダードで1枚制限を食らう。
スタンダードで1枚制限?
なんて思う人もいるだろうが、
太古の時代にはスタンダードに1枚制限というルールが存在した。
そして、説明ほぼ不要の下位互換がテンペストで登場。
レガシー、ヴィンテージで大人気の《不毛の大地/Wasteland》だ。
これでも強すぎたという意見が多かったのか、
これ以降は《不毛の大地》の下位互換カードが生み出されていく。
そういった経歴を考えても、
いかに《露天鉱床》が強いかを表している。
現在は
レガシー:禁止
ヴィンテージ:1枚制限
オールドスクール:4枚OK
EDH:当然1枚制限
という感じで、
オールドスクールで4枚使える。
ルールによって1枚制限になる事もあるらしいが、
一般的に普及しているオールドスクールでは4枚使用可能。
古き良き時代を体験にするには良い環境とも言える。
そして《露天鉱床》は第4版やアンソロジー等に収録されているので、
4枚揃える事も難しくない。
オールドスクールを始める際に購入を考えても良い1枚。

ミシュラの工廠/Mishra's Factory

次は《ミシュラの工廠》で。

このカードはアンティキティ版には4種の絵柄が存在し、
春夏秋冬の絵柄が存在している。
その中でも冬の絵は飛び抜けて人気があり、
店主はデッキで使う用を冬4枚にしている。

春夏秋冬

《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》
土地
(T):(◇)を加える。
(1):ターン終了時まで、ミシュラの工廠は2/2の組立作業員(Assembly-Worker)アーティファクト・クリーチャーになる。それは土地でもある。
(T):組立作業員クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは+1/+1の修整を受ける。
アンコモン

元祖のクリーチャー化する土地。
能力がシンプルだがそれがまた強く、
当時の環境を変える1枚と言えるカードだった。
このカードにも《露天鉱床》にも言える事だが、
デメリットが一切無い強さを持っている。
クリーチャー化すると基本的にはだいたいの除去呪文で潰せるのだが、
ソーサリー系の除去ではまず除去出来ず、
インスタント系の除去でなければ倒せないに等しい。
これに加えてアーティファクトクリーチャーなので、
当時の黒の除去の筆頭《恐怖/Terror》が効かない。
黒はこれに対応するには、
《生命吸収/Drain Life》や《麻痺/Paralyze》もダメなので、
おおむね《陥没孔/Sinkhole》か《露天鉱床》に頼る事になる。
環境を変える程の威力を持ったカードで、
構築の基本とも言える程に活躍もしたが、
《露天鉱床》があまりにも脅威だったためか、
こちらのカードは制限、禁止にはならなかった。
けれども、
「やっぱ無色土地でこの能力ダメだろ!」
という事で、調整版がやっぱりテンペストで登場。
《隠れ石/Stalking Stones》がそれにあたる。
その後もタップインや色のついたもの等、
数多くの亜種が生まれていき、
クリーチャー化出来るランドの総称として、
「ミシュラランド」
という言葉が生まれる。
ただしこちらも《露天鉱床》同様に最古にして最強に近い。
亜種がいくら生まれようとも元祖を超える程の性能はほぼ生まれていない。

あ、それとさっきデッキ用に4枚冬と書いたが、
オールドスクールを始めた際に足りなくなったので、
春も4枚買った。

Candelabra of Tawnos

お次はこのカード、ろうそく立て。


画像7

《Candelabra of Tawnos》
コスト:1
アーティファクト
(X),(T):土地X個を対象とし、それらをアンタップする。
アンコモン1

このカードは昔ではそんなに悪さ出来なかったはずだが、
1994年5月2日にType1(ヴィンテージ)で制限。
1997年10月1日に制限解除。
時代的には、
・《ミシュラの工廠》を余分マナでアンタップして強化。
・ウルザランド3種が揃っている状態でのマナブースト。
・《ほとばしる魔力/Mana Flare》でのマナブースト。
・《Mishra's Workshop》をアンタップしてマナブースト。
・《Library of Alexandria》をアンタップしてドロー追加。

くらいしか出来ない。
制限するほどの強さがあったわけでもないと思うところ。
現在のほうが使い道が増えていて、
相当に柔軟性が高いカードになっている。
そして再録禁止カードであるがゆえに値段も相当に。
時々レガシー、ヴィンテージで見る事もある優秀カード。
しっかり数えてないからわからないが、
このカード、4枚持ってない気がする。
多分3枚で止まってる。

Mishra's Workshop


ラストは最強の土地ランキングで上位を争える土地。
勝手なあだ名では
「ミシュラの宿題売り場」
というろくでもない名前をつけている。
宿題はHomeworkなので間違っているのは重々承知。


画像7

《Mishra's Workshop》
土地
(T):(◇)(◇)(◇)を加える。
このマナは、アーティファクト呪文を唱えるためにのみ支払える。
アンコモン

《Mishra's Workshop》は1994年6月13日にヴィンテージで制限。
1997年10月1日に制限解除。
その後現在に至るまで4枚使える状態。
アンティキティの発売が1994年の3月4日で、
同年6月13日に制限になるという事から、
当時にそれなりに危険視されたという事。

そして、制限されてしまった事であまり値段が上がらないカードだった。
それはわかる。
多分このカードをタップした回数日本一なのでとてもわかる。
このカードは1枚制限では強さを発揮しにくい。
60枚デッキで4枚使えるからこそ強い化け物カード。

ちなみに1997年に制限解除された前後で、
店主は《Mishra's Workshop》に出会った。
見た途端に
「うん、なんか変な事書いてあるな。
 この土地はどうして評価されないんだろう?」
と思いながら即購入。
今では信じられない金額だろうけど、
この時代くらいでは
《Mishra's Workshop》:約4000円
という数字。
今は約40万円なので100倍ほど。
随分と出世したカードだ。
当時のレガシーはType1.5と呼ばれており、
ルールはとてもシンプル。

・Type1(現在のヴィンテージ)で1枚制限のカードは全て禁止。
・Type1で禁止のカードは全て禁止。

これだけ。
正確に言うとこの当時に出たポータルなどは、
この時期は解禁されていなかったので使えなかった。
(あと、当然の事ながらアングルードは禁止。)

つまり、
レガシーで《Mishra's Workshop》が使えたような時代があったという事。
もちろん使った。
使い倒したというくらい使った。
(今もヴィンテージで使い続けている。)

今でも覚えている。
こんなデッキを使っていた。
時代としてはテンペストブロック~マスクスブロックあたりで、
だいたいの邪悪なカードがType1で1枚制限を食らっていた頃。
(時代で多少デッキに変化があったので下記はその一部。)

4《巨大戦車/Juggernaut》
4《トリスケリオン/Triskelion》
4《Su-Chi》
4《陰極器/Cathodion》
2《銀のゴーレム、カーン/Karn, Silver Golem》
1《ファイレクシアの巨像/Phyrexian Colossus》
2《ミシュラのらせん/Mishra's Helix》

4《氷の干渉器/Icy Manipulator》
4《厳かなモノリス/Grim Monolith》
4《通電式キー/Voltaic Key》
3《冬の宝珠/Winter Orb》
3《摩滅したパワーストーン/Worn Powerstone》
1《Candelabra of Tawnos》

4《Mishra's Workshop》
4《ミシュラの工廠/Mishra's Factory》
4《不毛の大地/Wasteland》
2《枯渇地帯/Blasted Landscape》
1《裏切り者の都/City of Traitors》
1《古えの墳墓/Ancient Tomb》
2《シャドーの迷路/Maze of Shadows》
2《隠れ石/Stalking Stones》

一部のカードはその後施行されるルールで、
Type1で制限されてType1.5で禁止されるが、
それまではだいたいこんな感じ。
この当時からアーティファクト大好き野郎だった。
この頃のMTG仲間からも
「茶単?!」
と驚かれたデッキだった。

旧レガシーの時代からこのカードを使い倒してきたので、
タップした回数では日本一なんじゃないかと思う。
なにせこの時代にレガシー、ヴィンテージをやっていた人は、
日本に300名いなかったのだから。

この時代からヴィンテージをやり込んでいる人で、
この《Mishra's Workshop》を使い込んでいる人などまずいない。
そして、
一時期・・・と言ってもかなりの時間だったが、
ヴィンテージ・レガシー日本ランキング1位だった。
(当時はエターナルと呼ばれたランキング)
時々1位から転落したが、
その後また1位を取り戻して結構長い間日本1位にいた。
このランキングシステムが消滅する最後の日にチェックすればよかったが、
その時でも1位から落ちていても10位以内にいたと思う。
これだけ《Mishra's Workshop》を使っている人もなかなかいないはず。

アンティキティは好きなセット過ぎて、
これでもまだ書き足りないくらい。
その2、その3を書いてもいいし、
そもそも今回書いた代表的なカードだけでも、
まだまだ書ける事が沢山。
誰かのご希望があれば追加でまた書こう。
あとアンティキティ以外にも
アラビアン・ナイトも素晴らしい。
もうこの2つのためにオールドスクールを薦めたいくらい。
そのくらいこの時代のカードは絵に味がある。

ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?