BEV用リチウムイオン電池

今後、自動車のBEV化が加速する見通しであり、100車種のBEV車が2022年から2023年にかけて発表される見通しである。BEV車とその他の自動車の違いを大きく大別すると下記の通りになる。
                 駆動       燃料
ICE (Internal Combustion Engine)  エンジン     ガソリン
BEV (Battery Electric Vehicle)    モーター      電池
EV (Electric Vehicle)        モーター      電気
PHEV (Plug In Hybrid Electric Vehicle)    双方     ガソリン、電気


現状、ICEとPHEVが主流だが、今後は、BEVがメインストリームとなることはインドや中国の政策を見ても明白である。2030年までに国土を走る自動車の74%をBEV化する考えを示すインドと“中国製造2025”で2025年までに20%の自動車をEV化させることを発表している中国政府。そして、その中国と欧州では、2035年にはエンジン車の製造を中止するガイドラインが出ており排ガスに対する各国の姿勢が伺える。ここでの焦点はEV化が上記の何に該当するかだ。中国、米国、欧州、インドは、BEV化をメインストリームとし、早々たる自動車メーカーがBEV車の販売を開始している。水素に拘っていたトヨタ自動車も昨年9月、BEVの流れに押された形で急きょ次世代車のメインをBEVに方針転換した。

さて、このBEVに使用される電池だが、実際にはセルと呼ばれ電池パック化されたものとなる。この電池セルの内部に使用される材料は、下記の通りである:

正極材 NMC(ニッケル、マンガン、コバルトの配合)等 
負極在 グラファイト等
銅箔 薄物銅箔
アルミ箔 薄物アルミ箔
セパレーター ポリオレフィン系多孔質フィルム、セルロース等
電解液 リチウム塩を溶解した有機系液等


(ダブルスコープ 2021年有報から引用)


正極材の材料自体、NMC以外にも多々あるもののNMCが主原料と考えて良いだろう。配合は、NMC622 (二ッケル 60%, マンガン 20%, コバルト 20%)が過去、使われていたが近年では、NMC811(8:1:1)が主流となっている。高価なコバルトの配合を減らすことでコスト軽減が可能というメリットがある。当初はこの配合では火災が起きやすいというデメリットがあったが、各メーカーの努力により今はそのデメリットも解消された。
NMCの日系製造メーカーは、田中化学研究所、日亜化学、戸田工業が代表格。中でも日亜化学の生産量が一番大きく、次いで住友系の田中化学研究所、そして、ドイツのBASFと提携している戸田工業という順となる。田中化学研究所はフル稼働状態であり、能力を増産中。同社の水酸化ニッケルの技術は、ズバぬけている。戸田工業は、日本と中国に生産拠点を保有している。

NMCに欠かせないコバルトだが、原料は主にフィリピンからとなり、権益は、住友金属鉱山が90%を握っている。住友系の子会社である田中化研には材料調達においてはメリットがある。そしてコバルトの原産国としてもう一つ有名なオーストラリアだが、ここは、中国企業が権益を押さえている。NMCの正極材の生産量は、中国が一番多く、次いで日本、韓国となっている。

負極材はグラファイトが中心であり、特に日系企業から調達することもない。これは、電解液やアルミ箔も同じである。但し、セパレーターと薄物銅箔は日系企業が強い。各素材の日系メーカーの代表格は、下記の通りである。

正極材 日亜化学、田中化学研究所、戸田工業等
負極在 日本コークス、JFEスチール等
銅箔 日本電解、三井金属、JX等
アルミ箔 UACJ、古川電気等
セパレーター ダブルスコープ、ニッポン高度紙工業、住友化学、帝人、東レ等
電解液 岸田化学、大塚化学等
電池セルメーカー パナソニック、GSユアサ、東芝、古川電池等

実際の電池のセルサイズは、350 mm x120 mm前後。これは各社によってセルサイズが異なるので注意が必要だが、一台のBEV車にこのセルを600個使う。
年間の新規自動車の販売台数は、8千万台~1億台のレンジと考えて良い。というのも乗用車以外、商業車やバスも含まれるからである。これら全てが2035年までにBEVとなれば、とてつもなく大きな市場であることが想像できる。

セパレーターメーカーであるダブルスコープはVWとサムソンからのリチウムイオン電池の将来受注予測から、既に増設も終え(さらに新ライン増設中)三星に供給を開始されている。この三星の大口があのVWとなる。VWは、中国において現地企業と合弁しBEV車を既に製造・販売していることから大きな市場を押さえていると言っても良い。
他の日本メーカーに関しては、トヨタがBEV路線に転換したことにより、ニホン高度紙が新工場設立を発表し、2年後に現状の2倍の生産体制にするが、生産キャパに関しては遅れをとっている。

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