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『聖なる魂』。番外編

『聖なる魂』
朝日文庫。

これは、AIM(アメリカ・インディアン・ムーウ゛メント)のリーダーの一人、デニス・バンクスの半生記である。
  しかしながら、英語での出版はしたくないとのデニスの気持ちから、森田ゆりさんが 聞き書きし日本語にして、二人の共著として、朝日新聞社から出版された。
  その前に、朝日ジャーナルという雑誌が以前あって、そこがノンフィクション大賞をやっていて、これに応募し、受賞している。

1988年夏、森田ゆりさんがデニスの通訳をしていた時のことが思い出される。。(1988年のセイクレッドランの際デニスの通訳をしていた)
そして、デニスはまたたいしたストーリーテーラーだ。  
インディアンたちは、たいがい記憶力にすぐれている、と思う。 文字に頼らない暮らしが長かった歴史を有しているせいだろう。
  何年何日とかの日付に関してはよく知らないけれど、 とにかく、  ある時は紅葉で色づいたオノンダガ国の亡命先で、ある時は灰色に閉ざされた酷寒のサウス・ダコタ刑務所の中で、ある時は太陽が輝く南カリフォルニアのハリウッド俳優の豪華な邸宅の芝生で、 森田ゆりさんは聞き取り作業を行なったという。
「 この本ができるまでのプロセスだけでも一冊本が書けるね、とデニスは笑う。」
 ――『聖なる魂』あとがきより。              


私は、もう随分と長いこと翻訳ものを読んでいないのだけれど、それは、翻訳者の日本語力のせいなのでした。   内容がどんなに面白そうでも、翻訳された日本語の文章がとても読みづらかったり(いかにも訳してます的な)すると、もうダメなのです。
 読んだことある覚えてる外国ものの小説といえば、『地球幼年期の終わり』『宇宙の果てを越えて』『2001年宇宙の旅』『賢者の石』『老人と海』、くらいか、なぁ・・  SFものが多いな。後、むかぁし、『シートン動物記』『スウェン・ヘディンのさまよえる湖』や『8000メートルの上と下』『白いクモ』『マナスル登頂記』など探険記ものや登山山岳ものも、学生の頃読んだ、と思う。    以後、世間へでてからは、 ほとんど読まなくなってる。
   話しがまたずれたみたいだけど。
 
 この『聖なる魂』は、英語で書かれたものの翻訳ものではない。
あらためて読みなおしてみると、ほんとに読みやすい。
 デニスが喋ったこと(だけでなく他の人にもインタビューしているそうだが)を聞き取り、録音テープから、森田ゆりさんが日本語に書き綴ったものだ。
  デニスの喋り(特に、演説。つまり多数相手への喋り)を直接聞いたことがない人にも、彼のダイナミックな語りの雰囲気が伝わってくる、かのようだ。
 デニスは、ほんとに語りがうまい。
 喋る口調も、意識して変えている。 日本語への通訳がなされている時は、ことにゆっくりだ。
  インディアンたちとかネイティブの人と英語で喋ってる時は、もちろんスピードは早かった。当たり前だけど。
 デニスと森田ゆりさんが、いろんな場所で語り明かしてきた情景を、なんとく想像し、単なるインタビユアーでない、デニスやビル・ワペパや、インディアンたちとの長らくの交流の時間を有していた森田ゆりさんだったからこその、この文章、この本なのだと、思いを新たにしたのだった。

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