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18年前の初恋をたどるロードムービー 『青春18×2 君へと続く道』

青春18×2 君へと続く道
5月3日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 台湾の大手ゲーム会社の創業者であるジミーは、取締役会で突然解任されて、手塩にかけて育てた会社を追われることになる。最後の仕事は以前から決まっていた日本の取引先との顔つなぎ。それが終われば会社での彼の役目も終わる。

 ジミーはこの日本出張の後、今から18年前に出会った一人の日本人女性に再会しようと決意する。

 今から18年前、高校最後の夏。台南で暮らしているジミーは、大学入試の合否判定を待ちながら近所のカラオケ店で働いていた。そこにやって来たパックパッカーが、日本人のアミだ。旅行中に財布を落として一文無しだという彼女は、帰りの旅費を作るためカラオケ店で住み込みで働きたいと飛び込んできたのだ。

 カラオケ店のオーナーは日本出身。アミの境遇に若き日の自分を重ねて、彼女を店で雇うことにした。教育係はマンガとアニメが大好きで、片言ながら日本語が喋れるジミー。こうしてジミーとアミの夏が始まったのだが……。

■感想・レビュー

 2014年に台湾のネット掲示板に公開されて話題になった(らしい)黃江豐(ロジャー)の紀行エッセイ「《青春.18 x 2》日本慢車流浪記」を原作に、『新聞記者』(2019)や『ヤクザと家族 The Family』(21)の藤井道人が脚色・監督した青春ロードムービー。

 主人公のジミーをシュー・グァンハン、日本人のアミを清原果耶が演じる他、ジミーが日本に来てから出会う人々に、ジョセフ・チャン、道枝駿佑、黒木華、松重豊、黒木瞳などが、ちょっとずつ出演するという豪華キャスト。東京→鎌倉→長野→新潟→福島というロケーション撮影も、JR東日本の全面協力で実現したという。

 カラオケ店オーナー役の北村豊晴を除外すると、清原果耶は台湾の俳優たちに囲まれてほぼ唯一の日本人キャスト。芝居が固くぎこちなく感じることも多く、特に笑顔は無理に笑っているように見えて気になった。しかしこれも映画を観終わると、ひょっとして演技プランとして固くぎこちない芝居をしていたのではなかろうか……と思わせてしまうのがこの映画かもしれない。

 この映画には「嘘」がある。アミが周囲の人たちについている嘘があり、36歳のジミーが周囲の人たち(そして映画の観客)についている嘘がある。映画の最後に二つの嘘が剥ぎ取られて真相が明らかになるわけだが、僕はこういう仕掛けが嫌いではない。

 仕掛けといえば、劇中で岩井俊二の『Love Letter』(1995)が引用されているのも観客に対する目配せのひとつだ。『Love Letter』は死んだ恋人に手紙を書くと、それに返事が返ってくる話だった。本作はそれを引用しながら、形を変えて同じモチーフとテーマを再現している。

 もうひとつ気になった仕掛けはミスチル。劇中で主人公たちがイヤホンを分け合ってミスチルを聴くのだが、この時に音楽は流さず、エンドロールで主題歌として曲を流した。アイデア賞だと思う。

(原題:青春18×2 通往有你的旅程)

TOHOシネマズ日比谷(スクリーン11)にて
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2024年|2時間3分|台湾、日本|カラー
公式HP:https://happinet-phantom.com/seishun18x2/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt31039829/

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