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同名人気マンガを実写映画化 『違国日記』

6月7日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 小説家の高代槙生のもとに、姉の実里が事故で亡くなったという連絡が入る。高速道路のサービスエリアで停車中に、車がトラックに衝突されたのだ。実里と彼女の夫は亡くなったが、中学生の娘・朝は、たまたま車外にいて無事だった。

 葬儀の日、周囲から聞こえてくる大人たちの声にじっと耐えている朝を見かねて、槙生は彼女を自分の手元に引き取ることに決める。姉のことは大嫌いだった。姉の子供である朝を愛する自信もない。「でも私はあなたを決して踏みにじらない」。それが槙生から朝への約束だ。

 こうして35歳で小説家の叔母と、15歳で中学生の姪との同居生活が始まる。だが長年独身で一人暮らしをしてきた槙生は、朝とどう接していいのかわからない。朝も自分の両親とまるで違う槙生の生活スタイルを、どう受け入れるべきなのかに悩む。

 それまでと大きく変わってしまった暮らし。ふたりの思いとは無関係に、時間はゆっくりと確実に流れていく。

■感想・レビュー

 ヤマシタトモコの同名コミックを、新垣結衣と早瀬憩の主演で実写映画化した作品。監督・脚本は『ジオラマボーイ パノラマガール』(2020)や『HOMESTAY(ホームステイ)』(2022)の瀬田なつき。原作は全11巻で完結しているが、映画はそこからエピーソドを拾いながら、槙生と朝が同居生活をギクシャクとした同居生活をはじめる時期を描いている。

 悪くない映画で好感は持てるのだが、僕はこれと似た印象の映画をかつて観たことがあった。それは吉田秋生のコミックを是枝裕和監督が実写化した『海街diary』(2015)だ。身寄りを失った中学生の少女を、それまで交流のなかった異母姉たちが引き取って一緒に暮らし始める物語だった。

 映画『海街diary』は広瀬すずの初々しさが魅力的だったが、『違国日記』で同じポジションにいるのが朝を演じた早瀬憩。彼女を巡るエピソードの数々が、この映画を『海街diary』に引き寄せている最大の原因かもしれない。

 しかし『違国日記』は本来「呪いの物語」であったのではないか。槙生は姉の実里を憎み、恨み、彼女が死んだ後でも、姉を赦す気にはなれない。朝は自分のやることなすことすべてに、母の実里が口を出してコントロールしようとしていることを知っている。そして母が死んだあとでも「お母さんならどう言うだろう」「お母さんならどう思うだろう」と考え、今も母のコントロール下から抜け切れていないでいる。

 これは「死んだ人が生きている人間を支配する」という、それだけ聞くとホラー映画みたいな、それでいて世間によくある普遍的な物語なのだ。

 しかし映画はそれを、だいぶ薄めてしまった。要所要所に台詞やエピソードとしてクサビは打ち込まれているのだが、それより槙生の恋バナや朝の思春期のキラキラが勝っているので、「死者の呪い」の物語がだいぶ後退してしまった。その結果が『海街diary』化なのだと思う。

TOHOシネマズ日比谷(スクリーン8)にて 
配給:東京テアトル 、ショウゲート 
2024年|2時間19分|日本|カラー 
公式HP:https://ikoku-movie.com/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt27957454/

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