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番外編の制約が大きすぎたのか? 『劇場版 SPY×FAMILY CODE: White』

2023年12月22日(金)公開 全国ロードショー

■あらすじ

 なかなか成果の出ないオペレーション「梟(ストリクス)」だが、アーニャの通うイーデン校では近々調理実習の菓子コンテストが行われ、その優勝者には星(ステラ)が贈られるらしい。これは学業でなかなか成果が出せないアーニャにとっては、絶好のチャンスかもしれない……。

 調理実習の審査員長が校長だと知ったロイドは、校長の故郷であるフリジス地方の伝統菓子メレメレで星の奪取を目論む。そのためには校長お気に入りの老舗レストランで、菓子の情報を集めることが不可欠。こうしてフォージャー家は取材を兼ねた家族旅行のため、フリジス地方行きの列車に乗り込む。

 だがこの電車の中に、怪しげな軍人たちが乗り込んでいた。彼らは機密情報の入ったマイクロフィルムをチョコレートに仕込み、秘かに移送しようとしていたのだ。だがそれを知らないアーニャがチョコを見つけ、うっかり飲み込んでしまった。軍人たちはアーニャを捕らえようとするが……。

■感想・レビュー

 テレビアニメ化もされている遠藤達哉の人気コミック「SPY×FAMILY」の、劇場用オリジナル長編アニメーション映画。原作コミックに沿って展開するテレビアニメ版のキャラクターはそのままに、原作にもテレビ版にも抵触しない形でストーリー展開させた番外編エピソードだ。

 テレビ版の今後の展開に影響を与えてはならないという制約あった上でのオリジナル・ストーリーだから、物語が予定調和的になるのは仕方ない。物語は本編を離れて脱線し、また元の場所に戻ってこなければならない。物語を先に進めてはならないし、キャラクターたちがこのエピソードを通じて成長したり、関係性が変わったりすることも許されない。

 しかも劇場用番外編の常で、物語のあちこちにテレビ版でもお馴染みの人気キャラクターを登場させてファンサービスもしている。イーデン校の教員や生徒一同、ヨルさんの職場の同僚、秘密警察所属のヨルの弟、西国の情報組織〈WISE〉のメンバーや協力者など、レギュラーメンバー総出演なのだ。こうしたメンバーをいちいち登場させる筋合いは本来ないのだが、それでも律儀にメンバーを揃えてみせるのは、作り手側の職人的なこだわりではないだろうか。

 そんなわけでこれは、あくまでもシリーズの番外編のファンサービス。映画の中では大事件が起きているのだが、じつは何も起きていないというへんてこなエピソードになっている。例えて言うなら、巨大な不発弾みたいなものだ。しかも最初から不発になるとわかっていて、やっぱり不発だった不発弾だ。

 それはそれとして、この不発弾はちょっと湿気ていると思う。例えばスナイデルの美食家キャラはより拡張してもよかったし、タイプFの高機能は序盤で観客にしっかり売っておくべきだったと思う。フォージャー家の立ちまくっているキャラはもちろん、今回顔出し程度に出てくるレギュラー陣にも、敵役たちが負けているように思えてならない。

ユナイテッド・シネマ豊洲(10スクリーン)にて 
配給:東宝 
2023年|1時間50分|日本|カラー 
公式HP:https://spy-family.net/codewhite/
IMDb:https://www.imdb.com/title/tt26684398/

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