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2019 eiga ベスト10

2019年に映画館で観た映画の極私的ベスト10

①アイリッシュマン:マーティン・スコセッシがマーベル映画批判の一方でこんな映画を撮っていたのならあの言説も納得。「完全に締め切らないドア」で男の信用度を表現するなんて彼にしか出来ないでしょう。その薄く開いたドアの隙間からアメリカ裏現代史を覗き見る至福の209分。

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②ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド:1969年の4日間にタイムスリップしたかのような錯覚にとらわれるほどの信じられない高解像度の日常描写映画。ずーっと見ていたくなるのは何故だろう。ストーリーが転がっていかないシーンのなんと贅沢なこと。これも映画の奇跡。

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③ROMA/ローマ:ロンドンカーゾンソーホーのスクリーン3は後ろのスピーカーから会話が聞こえたりと工夫を凝らした音響設計であの家族たちと一緒に暮らしていると錯覚するほどの臨場感でした。そして波のシーンの迫力には言葉を失いました

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④ミッドサマー:アリ・アスター監督の新作は前作をはるかに凌駕する狂気に満ちていました。集団の圧倒的な力の前にひれ伏すしかない登場人物達が余りにも悲劇的故に可笑しいという境地に至るなんて思っても見ませんでした。もう勘弁してあげてと思いながらもそう来るのか!という興奮。

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⑤慶州 ヒョンとユニ:また朝鮮半島の豊かな映画金脈を掘り当てた思いがしてなりません。チャン・リュル監督作品を遅ればせながら初めてみて、その映画文脈の使い方の豊かさにうなりました。こうやって映画が再発見されていくのを目撃することほど嬉しいことはありません。

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⑥ジョーカー:一言で称するなら「完璧な映画」その語り口においてです。主人公アーサーがジョーカーになるまでの話のどこが完璧?と思うかも知れませんが、まあご覧なさい、その丁寧かつ衝撃的な展開にぶっとばされますから。フェリーニの国で最高の栄誉を取るのは当然でしょう。

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⑦象は静かに座っている:映画にはまだこんな撮り方の可能性が残っていたのかと、正直驚きました。心象風景の伝え方としてこれはムーンサルトとも言える全く新しい芸術表現。語られるストーリーが絶望の果てなのがフー・ボー監督の人生選択を想起させていて辛い。

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⑧宮本から君へ:胸の奥が、熱くなる映画って久しぶりかも。私の心の何かの琴線に確実に触れてきた。宮本の多くのシーンの積み重ねがそうさせるのはもちろんですが、映画による映画を落ち着かせようとする映画的なショットで感動の階段を昇らされた。例えば「ご飯粒」のシーンなど見事。

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⑨幸福なラザロ:アリーチェ・ロルバケル監督によってネオリアリズモを縦軸にカトリシズムを横軸にしてきたイタリア映画の伝統が見事に引き継がれています。それは【万引き家族】で家族を横軸に精緻主義を縦軸にしてきた日本映画の伝統を引き継いだ是枝裕和監督と同じくらい奇跡的。

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⑩ブラック・クランズマン:刮目に値する映画は数えるほどしかないと思います。アカデミー脚色賞まで取るほどの出色の映画パート。こんなに楽しい映画を観たことありません。それを上回る衝撃のドキュメンタリーパート。こんな編集も初めて。まだまだ映画に可能性はあります。

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