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DALILAND / ウェルカム トゥ ダリ(2023年9月1日劇場公開)

サルバドール・ダリを演じたベン・キングスレーは『ガンジー』以来のハマり役だと思います。自分のことをダリと呼ぶくらい自意識過剰な主人公を演じるのに多くのレイヤーを足し算して役作りをしたプロ根性には感動を覚えました。ただ実はこの映画はダリの生涯を中心に描いたものではありません。

映画の主役はダリのアシスタントのジェームズ(クリストファー・ブライニー)。ストーリーは、ジェームズがダリとその妻ガラ(バルバラ・スコヴァ)に振り回される様子を描くことで第三者的視点で観客にダリを理解させようという試みのもとに組み立てられています。それがうまく行っている場面もあります。例えばダリが気まぐれに開くパーティの様子は1974年当時のニューヨークの退廃的な雰囲気を実に生き生きと伝えることに成功しています。一方、極力台詞を拝した若かりし頃のダリ(エズラ・ミラー)の描写はエキセントリックな部分だけが誇張され印象には残るものの圧倒的に描き足りないと感じました。

監督を引き受けたメアリー・ハロンの夫であり、本作の脚本も手がけたジョン・C・ウォルシュは「隠されていたダリの素顔に迫り誰もが共感できる部分を探すという主旨の作品。その中でも最も惹かれたのは、ダリの死に対する恐怖心。そして驚くほど波乱に満ちた ダリと妻のガラの結婚生活も非常に興味深かった。」と一人の偉人の生涯を描くのにはかなり挑戦的な本作のアプローチの理由について説明しています。

ダリがミューズとして傍に置いていたモデルのアマンダ・リア(アンドレア・ペジック)のキャラクターが後半にぐっと存在感を増して過去と現在のストーリーを上手にかき混ぜてくれたと思っていた途端、映画は多くの謎を残したまま終わります。まるでダリの人生そのもののような終幕です。この映画を観たからと言ってダリの芸術がわかるというわけではありませんが、少なくとも天才画家の危なかしい世界に触れることは出来ます。まさに「ダリの世界へようこそ=ウェルカム トゥ ダリ」です。

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