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SERGEI LOZNITSA OBSERVING A FACES IN THE CROWD STATE FUNERAL|THE TRIAL|AUSTERLITZ / セルゲイ・ロズニツァ〈群像〉ドキュメンタリー3選 国葬|粛清裁判|アウステルリッツ

 このドキュメンタリーの上映は2020年の日本での映画興行において一つの記念すべき出来事になるかもしれません。それほどインスピレーショナルな独特の哲学をもった映画群。

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この映画に映し出されている群衆の顔、表情をずーっと見ているだけで私は退屈しませんでした。そこに本当の悲しみ、戸惑い、不安を見たからです。歴史の大事件をその場に居て目撃しているような錯覚に囚われます。国葬の壮大さが意味するところの恐怖政治が垣間見えて恐ろしい映画でもあります。アーカイヴァル映画という新しい映画哲学を発見しました。

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これほど大掛かりな粛清裁判という名の茶番劇を行う必要性を知って驚愕する映画です。国家体制の維持の為にスケープゴートにされた被告人達、極刑を望んでデモを行う群衆、裁く側の裁判官、検察、その役割が全てスターリンが製作総指揮の演劇だと分かった時のなんとも言えない脱力感。国家とはここまで暴走するという歴史的な実証映画。

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オブザーベーショナル映画の批評力の凄まじさに衝撃を受けました。終映すぐに席を立ち上がった老年の男性が「つまらん、映画だ」と叫びました。「これも映画なんですよ」と私は心で叫び返していました。トラベル・フォー・ピースのTシャツを着た若者達の群れが強制収容所の見学を終えて笑顔で門を出てくる様子の無意味さの意義を否応なく感じさせる鋭い映画手法。

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この映画のタイトル『アウステルリッツ』はこの書物のタイトルの引用です。

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2020年、セルゲイ・ロズニツァのドキュメンタリー3本を観ることが出来たのは大きな収穫です。

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