EL HOMBRE DE AL LADO / ル・コルビュジエの家(2012年9月15日劇場公開)
アルゼンチン映画。隣のディスタービングな存在について。
原題は『隣の男』です。面白いのは主人公レオナルド(ラファエル・スプレゲルブルド)の家があのル・コルビュジエがデザインしたクルチェット邸だということ。映画内世界においてもその事実をそのまま使っています。
そのことを前面に出して邦題を『ル・コルビュジエの家』にしたのでアート系映画と混同されがちですが、ブラックコメディ映画です。隣の男ビクトル(ダニエル・アラオス)がまた強烈で、いちばん隣人にしたくないタイプ。レオナルドも問題のある人物でせっかくル・コルビュジエのクルチェット邸に住んでいるのに家族との間に壁があります。壁を打ちこわして窓を作ろうとする隣人との対比が映画のストーリーテリングの手法とシンクロしています。ガストン・ドゥプラット&マリアノ・コーン監督の映画構成が巧みです。
アートの功罪をこういう視点で描くことで、批評眼を持ち得るという、回りくどいけどこれも総合芸術としての映画の可能性でしょう。