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やさしい北野映画

北野映画は『その男、凶暴につき』や『アウトレイジ』など暴力的描写のある作品が多いが、『あの夏、いちばん静かな海。』にはよく見られるその暴力描写がない。だから私はこの映画がやさしい北野映画だと思った。

しかし、この作品はやさしいといっても、残酷な部分もある。主人公とその彼女が二人とも聾唖であることもこの作品のキーポイントだ。二人だけのシーンは音がなく、久石譲の音楽だけが流れる。これがサイレントムービーのような世界観を醸し出している。

登場人物
・聾唖の青年-茂
・茂の彼女-貴子 etc

まず、やさしい部分は茂がサーフボードをやり始め、それに打ち込む姿を知り合いや地元サーファーはバカにするが、そのうち彼の努力を認め、打ち解けていく。この作品の世界観は因果応報、努力をすれば報われるということだ。やはり、現実世界を生きている私たちはそう願っていても叶わないこともある。ここがやさしいと感じた。

そして、残酷な部分は最後のシーンだ。茂に友の他にも多く与えた海が、最後に茂自身を持ち去っていく。序盤はあんなにも美しかった海が、一気に残酷で恐ろしく見える。この相反する感情が同居して、美しさと残酷さを際立たせているのだと思った。

あと、貴子が彼の練習を見に行き、毎回茂が脱ぎ捨てた服を畳むところは微笑ましい。二人は聾唖だから、もちろん会話はない。だが、言葉がなくとも、二人の心は繋がっている。これほど美しい恋はないと思う。

私も一度はこのような美しい恋がしたい、こんな夏を過ごしたいと思った。正直いって、北野映画の中では1番好きな映画で、この映画に出会えたことは私の人生を変えてくれそうな気がした。

では、さよならさよなら

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