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「現代のヒッチコックだね」六平直政が松野友喜人監督を絶賛。『オカムロさん』公開記念舞台挨拶



タイトル写真:『オカムロさん』公開記念舞台挨拶の様子。(左から)松野友喜人、三元雅芸、吉田伶香、バーンズ勇気、六平直政。

 10月15日、『オカムロさん』の公開記念舞台挨拶が東京のヒューマントラストシネマ渋谷で行われ、出演者の吉田伶香、バーンズ勇気、六平直政、監督の松野友喜人が登壇し、さらにサプライズゲストも登場。集まった多くの観客を前に作品の魅力や撮影秘話を語り、大いに盛り上がった(取材・文:後藤健児)。

 本作は、日本大学芸術学部の卒業制作作品『全身犯罪者』がカナザワ映画祭2021で観客賞を受賞した、23歳の新鋭・松野友喜人の商業長編デビュー作。”オカムロ”とネット検索した者の前に、虚無僧のような笠をかぶり、刀を持った怪人”オカムロ”が現れ、呼び出した者の首を狩る。拡散していくオカムロが日本中を恐怖のどん底にたたき落とす都市伝説ホラーだ。集団首狩り殺人事件で唯一生き残り、オカムロに立ち向かう主人公を吉田が演じる。ある理由から、吉田と共闘する謎の人物役で、スタントパフォーマーの伊澤彩織がキレのあるアクションを披露。本格ソードアクションも満載の映画に仕上がった。

 監督・脚本・編集・VFX・主題歌の作詞・歌唱まで担当した松野は、さらに刑事役で出演も。同じく刑事役で共演した六平は松野の演技に対し、「監督はものすごい緊張してましたけど、上手にやってたよ。才能あるんだね」とコメント。続けて、「日芸の卒業制作作品があまりに過激で上映中止。そういうアブノーマルな人を尊敬する」と称賛。監督ぶりについても、「23歳と言いながら現場ではすごい。(自分は今まで)武さんや伊丹さんや深作さんとやってるけど、全然遜色なく、大監督でしたよ。ちゃんとスタッフや役者にもダメ出しして。画も自分で決めて。現代のヒッチコックだね。自分も出るんだから」と賛辞を惜しまない。

 タイトルにもなっている、”オカムロさん”について話が及ぶと、場内にオカムロが乱入して登壇者を襲うサプライズイベントが発生。その正体は殺陣を含むアクション監督を務めた、三元雅芸。そのまま登壇者の一人として壇上に上がったが、最後まで笠はかぶったままで素顔を見せることはなかった。

 ”オカムロさん”という都市伝説について、松野は「企画書を読んで初めて知り、そこから調べました」と吐露。吉田は「一切、調べてないです」と白状し、場内を沸かせた。

 六平は本作の面白さをこう分析する。「合間のシーンはリアリズムだからさ。リアリズムの最後にホラーがスポーン!と出る。だから面白いんじゃない?」と。カウンセラー役のバーンズも六平に同調し、「リアリズムだし、爽快感があって、そんなにグロくない」と作品の魅力をアピール。

 映画初主演の吉田は自身の殺陣について、「本番をやりながら教わってる感じで。筋肉痛になりながらもよくやりきれたなと思いました」と振り返る。六平は吉田のことを「勘がいい」と褒め、バーンズや三元も頷いた。

 初主演作がホラーとなった吉田は「友達としか見られないくらいホラーが苦手だったんですけど」と当初の不安を振り返ったが、「ほぼCGだったので現場は全然怖くなくて」と安心できたという。血糊もあまり使わない現場だったそうで、松野は「首の断面も実物は一切使っていない」と明かすも、六平が「斬られた首は役者が演じる。十種類くらい違う表情を撮って、いいやつを監督が選んで」と、松野のこだわりに感心していた。

 本作が首狩り映画であることから、”首”への言及が続く。吉田は「撮影中、何もないところに作り物の首があるていで演技をしていたので、出来上がりを見て、すごい編集技術だなと思いました」と驚いたそう。編集に関しては六平もコメント。「編集がうまいね。昔だったら斬るところも撮るじゃない。でも、今はゲームとかでお客様の頭がキレキレだから、あっ!と思った瞬間に、もう(首が)ゴロンで、もう斬られたんだなと分かるわけ。そういうところが今の若い監督は切れ味がいいよね」とジョークを交えつつも作品の本質にも触れていく。「首を斬るっていうのは、断罪とかで昔からあって、意外と信憑性がある。日本では昔から(死刑で)首を斬ったり。だからリアリティがあるよね。首を狩るって世界」と六平の鋭い指摘に続けて、バーンズが「そういうのを分かってて取り入れたっていうのもあるんですか?」と松野に聞いた。松野はやや反応に困った顔で少し間を置き、「……そうです」とひと言。場内からは笑いが漏れた。

 舞台挨拶を進行する司会者の映画パーソナリティ・伊藤さとりから、「もし、パート2が作られるなら?」との質問が投げかけられ、六平は「オカムロが誰かと戦うのがいいと思う。ドラゴン、ガッパと戦うとか。池から出てきたやつと戦うとか。あと、江戸時代に侍の中で戦っていく時代劇みたいな。石川五右衛門対オカムロさん、そういうやつ。でも、お金かかるから、(客席にいる)プロデューサーは嫌な顔してる」と笑いを誘った。

 お気に入りのシーンについて、六平は自身が出演していない冒頭のキャンプのシーンと答え、自分もあそこに出たかったと悔しがる。吉田はバーンズと共演するカフェのシーンを振り返った。「(バーンズについて)めちゃめちゃ汗っかきで。あそこが好きですね。メイクさんが足すんじゃなくて、逆に拭くくらい、めっちゃ汗が。涙を流せる人はいても、汗を流せる人はいないじゃないですか」とコメント。バーンズは後半での激しいバトルを印象深く語る。三元はアクションシーンへの思い入れが強いと語りつつ、映画の終盤に用意された、衝撃の場面に関して言及。「監督は必ずやりたいんだって仰られてた」と松野の強い意志を感じたという。

 また、客席には、お坊さん役の内田寛崇の姿も。内田は映像作家でありながら、赤羽にある大満寺の本物の僧侶でもある。服や寺も本物で撮影したそうだ。

 最後に吉田は「初主演をやらせていただいて、ここからの成長を楽しみにしていただけたらなって。よろしくお願いします!」と、これからの自身の野望ものぞかせる意気込みで力強くコメント。バーンズは「いろんな捉え方をこの映画ではできると思っているので、これを見て、糧にしたり、元気になったり、楽しんでもらえたらうれしいです!」とテンション高く話した。三元は「ジャパニーズ・ホラームービーの中でここまでアクションの入っているものはなかなかないっていうか、初の試みだったんじゃないか。プロデューサーや監督がストーリーを練りに練って、作っては潰し、作っては潰ししたように、アクションも最高に残ったものを皆さんにご覧いただいた形になっております」と感慨深そうにコメントした。

 そして、松野が締めの言葉を。「本日はありがとうございました。ヒューマントラストシネマ渋谷さんは自分もよく映画を見に来てて、声をかけていただけるってことが本当に光栄で」と言い、続けて、「SNS等でご感想をツイートとかしていただけますと。本当に全部見ているので。是非、拡散をしていただけたらと思います」と”オカムロ”の拡がりを願った。

『オカムロさん』

公式HP/https://okamurosan.com/

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