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ロイド・カウフマンに師事した津野励木監督の無国籍アクションコメディ『MAD CATS』が9月1日より公開。ミネオショウ×松浦祐也×絢寧が織り成す冒険物語が海外映画祭で話題沸騰。ヌンチャクを振り回す凶暴な化け猫を演じた森累珠への独占インタビューで作品への思いやブルース・リー愛を聞いた!

タイトル写真 ヌンチャクを凛々しく構える森累珠

 9月1日より、津野励木監督の『MAD CATS』が東京・新宿シネマカリテ他にて公開される。平凡な青年・タカがある日を境に、化け猫軍団との戦いに身を投じていくアクションコメディ。どこかにあるようで、どこにもない無国籍な世界観の中、笑いとアクション、ロマンスが盛り込まれた冒険物語が展開。主人公のタカ、彼とバディを組むことになるホームレスのたけぞう、そして2人を助ける謎の少女。3人の奇妙な関係性が織り成すロードムービーとしても楽しめる本作。タイトルにもなっている化け猫軍団の<MAD CATS>は、銃火器や斧、ソードに三叉槍、さらにはヌンチャクとそれぞれに特徴ある武器で主人公たちに襲いかかる。個性的な彼女たちのキャラクターにも注目だ。
 <MAD CATS>の中で、ヌンチャク使いの化け猫を演じたのが森累珠(もり・るいす)。子役としてデビューした森は、中学生の頃にブルース・リーと出会い、ジークンドーとヌンチャクに目覚めた。”ヌンチャクガール”の異名でも知られ、Youtubeチャンネル「るいちゅーぶへの道(THE WAY OF THE RUITUBE)」では、ブルース・リー映画のアクションシーンを完全再現。海外からも注目を浴びている。本作では、スクリーン上にて、満を持してヌンチャクを振り回す暴れっぷりを見せた。森への独占ロングインタビューで、『MAD CATS』撮影時の苦労や、森が”リー様”と敬愛する、ブルース・リーへの思いをうかがった。

『MAD CATS』ポスタービジュアル

 日々、無為な生活を送るタカの元に、一本のカセットテープが届く。その内容は、2年前に失踪した兄に関するものだった。”兄の居場所を教えてやる。助けに行け”、”そこに祀られている、ある木箱も盗み出せ”、そうテープに告げられるタカ。なんとか木箱を手に入れることに成功するが、武装した謎の女たち<MAD CATS>の襲撃に遭い、兄を救出することはできず、逃げ出すしかなかった。タカは、成り行きで一緒に行動することになったホームレスのたけぞうと共に、<MAD CATS>の追跡から逃げ惑う。そんな中、彼らのピンチを救ったのは、驚異的な戦闘力を見せる無口な少女だった。果たして、3人は<MAD CATS>に打ち勝ち、タカの兄を助け出すことができるのか。そして、謎の少女の正体とは……。

『MAD CATS』より

 本作の監督と脚本を務めたのは、津野励木。18歳でアイルランドに渡り、映像制作を学んだ津野は、ニューヨークに移住後、報道取材撮影班として働きながら、『悪魔の毒々モンスター』シリーズで知られるトロマ・エンターテインメントにも席を置き、設立者のロイド・カウフマンに師事。帰国後は国内を舞台に、テレビ番組やCMなどの様々な映像作品に携わる。監督・脚本を手がけたショートフィルム『CRYING BITCH』がアメリカ・テキサスSXSW(サウスバイサウスウエスト)映画祭に正式出品されるなど、海外映画祭で高く評価される。そして、これまでの経験の集大成ともいえる『MAD CATS』を完成させた。
 主人公のタカを演じるのは、ミネオショウ。2015年に出演した、谷口雄一郎監督の短編『私以外の人』は第9回商店街映画祭の山崎貴賞を受賞。2018年の大橋隆行監督『さくらになる』で長編映画に初主演。津野監督とは、『CRYING BITCH』に続いての出演となった。たくましい少女に守ってもらう、ふがいない青年を情けなくも、愛すべき人物として好演。物語の後半では、冒険を通した成長ぶりをアクションとして見せ、作品にドライブをかけていく。タカと珍道中を繰り広げる、ホームレスのたけぞう役に『岬の兄妹』『泣く子はいねえが』に出演し、最新作『福田村事件』の公開が控える松浦祐也。冷たい表情で襲いくる<MAD CATS>と対照的に、わめき、怯え、時に熱く感情を露わにし、コメディリリーフとして作品にメリハリをもたらしている。

タカ(演:ミネオショウ)とたけぞう(演:松浦祐也)の迷コンビぶりも楽しい

 タカたちを助ける謎の少女を演じる絢寧は、講談社ミスiD2021「戦うヒロイン賞」「審査員/辻愛沙子賞」を受賞し、HAYATE監督『ファーストミッション』では長回しの華麗なアクションを披露した、注目の若手俳優。アクション部としての活動も精力的に行い、Netflixのドラマシリーズ『ONE PIECE』に吹き替えで参加。『MAD CATS』では、銃火器を使いこなし、戦闘集団と渡り合う激しいバトルシーンを凛とした佇まいで、クールに演じきった。

ワケありな謎の少女(演:絢寧)。惜しみなくブッ放されるガンファイトも本作の見どころ


絢寧の凄味ある目ヂカラが本作に狂気を与えている

 全国9県をまたがり一年半かけて撮影したこだわりのロケーションによって、アメリカの荒野やハイウェイを思わせる風景を獲得、日本人俳優たちによる銃撃戦も違和感なく作品に溶け込んでいる。なんでもありが可能になった世界観に漂うのは、80~90年代のいまとなっては古きよきアメリカ映画の匂い。ロイド・カウフマンに師事した津野監督だからこそ成し得た”日本製ジャンル系洋画”だ。人体損壊のゴア描写をユーモラスに描くところは、カウフマン譲り。それでいて、アクションに関しては、スピーディな流れの中で展開される本格的な殺陣やリアル志向のガンファイトなど、まさしく”いま”の活劇となっている。

『MAD CATS』より

 そして、本作に込められた重要なテーマは、猫を含めた動物への愛。家族として共に生きることのすばらしさを謳い上げ、同時に愛玩の名の元に人間本位の可愛がりによって、犠牲となる動物たちの悲惨な実態も冷酷に描き出す。<MAD CATS>がなぜ、タカたちに牙を向くのか。物語の終盤で明かされる、真実には作り手たちの怒りがこもっている。痛烈な人間批判も込められた、一筋縄ではいかない娯楽アクション映画だ。

『MAD CATS』より
化け猫軍団<MAD CATS>はオーディションで選ばれた。それぞれに異なる武器と個性に注目

 本作の公開を控える8月、<MAD CATS>の一員、クレイジー・ヌンチャク(The Insane Nunchaku)役の森累珠へインタビューを行った。
(2023年8月、都内某所にて)
 
ーーご出演された『MAD CATS』がいよいよ、2023年9月1日より公開されます。この作品に参加された経緯をお聞かせください。
森 オーディションに参加して受かりました。募集時に掲載されている内容に”アクション”と記載があったので、ヌンチャクを活かせないかなと思い、応募したんです。
ーー演じられたキャラクターはヌンチャクの達人でしたが、森さんが出られるということで、ヌンチャク使いの設定になったそうですね。撮影で苦労された点は?
森 いつもはスポンジタイプとかのヌンチャクを使っているんですが、(演じた役は)殺し屋だから、もっと殺意が湧くようなヌンチャクを、という方針だったので、鉄製になったんです。鉄ヌンチャクを扱う人は日本で数人くらいなんじゃないかと(笑)。練習するにも鉄で練習しないといけないので、トレーニングの時点からかなり集中して真剣に挑みました。
ーーそれは大変でしたね。他に撮影中の印象深いエピソードはございますか。
森 猫の役だったんですが、ヌンチャクを持った猫はこの世にたぶんいないので(笑)。参考にしていいものがわからなかったんですけど、現場ではどんどん作り上げていく撮り方だったので、監督がパッと指示をされていく感じでした。登場シーンもいっぱい撮りました。めちゃくちゃこだわって撮っていただいた分、あのキャラだけ不気味というか……現場では、皆から”進撃の巨人”と言われていました(笑)。
ーーホラー的な感じだったと。
森 そうですね、ホラーっぽいかもしれないです、わたしの出演シーンは。
ーー共演者との思い出深いエピソードは?
森 ヒロインの絢寧ちゃんとは同い年で、アクションに真剣に取り組む姿勢にすごく刺激をもらいましたし、現場でも優しくしてくれました。主演のミネオショウさんとも高校生からの仲だったので、現場では皆で和気あいあいとしてました。殺伐としたシーンが多かったんですけど、基本的に皆で笑って楽しくやってました。あと、血のりが楽しくて。わたしだけ率先して、血のりをもっと!って(笑)。
ーーアクション、コメディ、ロマンスなど様々な要素の詰まった盛りだくさんな作品ですが、見どころは?
森 これは日本で大丈夫かな、ある意味で前衛的すぎるのかもと思ったんですけど、その挑戦をした津野監督はすごい。とにかく、こだわり抜いて、インディーズだからこそ絶対に妥協しない姿勢を現場で見ていました。作品が完成したときに、キャストの皆が納得する作品を撮るんだと信じていたので、試写で観たとき、本当に感動しました。これが日本でウケてほしいなと思いますし、ウケないとヤバくない?と。こういうチャレンジ的な作品が受け入れてもらえないと、今後の映画史上において、影響があるんじゃないかなと思います。

『MAD CATS』撮影時のことを楽しそうに振り返る森累珠

ーーあらためて、ブルース・リーに関して、おうかがいできればと思います。彼のどこに魅力を感じているのでしょうか。
森 なんでしょうね……やっぱり、リー様は人生の先駆者みたいなところがあるので。強さの象徴というか。リヴァー・フェニックスやジェームズ・ディーン、エドワード・ノートン、フィリップ・シーモア・ホフマンとかも好きなんですけど。中学二年で初めてリー様を知って以来、あの人を超える存在に出会ったことはないですね。圧倒的主演の存在感があります。俳優を超えてるなと。人間を超えた神々しさと強さにひかれました。
ーーブルース・リーとのファーストコンタクトは?
森 『ドラゴン怒りの鉄拳』です。最初に観ていたときは、それまでイメージしていたブルース・リー像を意識しながら観ていました。でも、変装してるシーンとかで、こんなキュートな一面もあるんだと。そして、ラストに顔を震わせて、言葉では表せられない表情をして、気持ちを全部消化させるかのように飛び込んでいくじゃないですか。あそこを観たときに衝撃を受けました。これ芝居じゃないなと。目がイッちゃってるし。撮影のあと、この方は生きているのだろうかと。メソッド演技の究極を見せていただきました。
ーーそして、ブルース・リーを通じてジークンドーに出会います。それ以前から、武術のご経験はあったんでしょうか。
森 まったくないです(笑)。体を動かすこと自体、あんまり好きじゃなくて、体育の授業も嫌いでした(笑)。ただ、子供の頃から持久走だけは得意なんですよ。根性試しみたいなのが好きなんだと思います。
ーーやり続けていくことが好きだと。
森 精神的なものなんですよね、マラソンとか持久走は。自分に打ち勝つみたいな。格闘技も自分に打ち勝つところで似てるのかな。
ーーそこが、ブルース・リーの哲学に共鳴したんですね。
森 ジークンドーを学ぶのも、それを習得することでリー様を知りたかったんです。どんなことを思って、どんな気持ちで、何を考えていたんだろうと。
ーーヌンチャクへのこだわりもブルース・リーありきだったんでしょうか。
森 はい、ヌンチャクには異常な愛があります。中学生のときまで特技がなかったんです。子役のときに、特技があったほうがオーディションに通りやすいと言われて。ヌンチャクができるようになり、皆からうまいね、と言ってもらえて、自信がつきました。きっかけはリー様だったけど、ヌンチャクにそこで出会えたことで、自分自身も開けていくものがありました。ヌンチャクは相棒ですね。
ーーそして、ブルース・リー映画の再現動画を発信するYoutubeチャンネル「るいちゅーぶへの道」を始められます。
森 トラックスーツをファンの方からいただいたことをきっかけに、何か動画を撮ってみようと。母をイノサント役にして(笑)、和室で撮ったところからスタートしました。それを公開したときに、叩かれると思って、怖かったんです。でも、どんどん広がり、第二弾もお願いしますと言われて。世界の人たちからも見られるようになって。わたしたちも楽しいし、続けようと思い、三十本くらい撮りました。こんなに求めてもらえるならやりたいし、頑張るべきだと思って、突っ走った二年半です。求められるものを全身全霊でやろうと。求められない人生だったので、求められたときにしかできないことをやろうと思いました。
ーーブルース・リーをよく知らない人からすると、パロディのイメージが先行して、彼は笑いの対象になってしまっていることがあります。実際、ブルース・リーを真似た芸でも、笑いを前提としていたり。でも、「るいちゅーぶへの道」の動画の中では誇張がなく、完全再現にこだわっているのがすばらしいと思いました。
森 中学生の頃、ヌンチャクガールとして活動していたとき、友達から笑われました。芸能の世界でもそれはあって。自分がヌンチャクを振ったら、なんで笑うんだろうと。それって周りの皆がおかしいんではなくて、その人たちのブルース・リーの知識があまりにも浅すぎるのと、パロディのイメージしか知らなくて、お笑いのように思われてしまってるだろうなと。だから、再現するときには絶対に笑わせたくなかったんです。眉毛を濃くするとかの誇張はせずに。ブルース・リーはカッコいいんだよと。
ーー動画をきっかけに、ブルース・リー映画に触れていった方もいらっしゃるようですね。
森 それがうれしかったです。しかも、最近”リー様”呼びが流行ってるのか、若い女の子も皆、”リー様”と呼んでいるのがうれしいなと。
ーー当時、”リー様”とは呼ばれてなかったですよね。
森 なんで”リー様”呼びなのか、疑問に思ってくれたのがまずうれしかったです。どうして、そんなに好きなの?と聞いてくるんです。それは映画を観ればわかるよ、という伏線になったので、言い続けてよかった。新しく好きになった方もいらっしゃったし、ずっと離れていた方が「るいちゅーぶへの道」を観たことで当時を思い出して、またブルース・リーへの思いが再熱しました、と言ってくれたのもうれしかったです。

ブルース・リー愛をほとばしらせる森累珠。手元にはいつもヌンチャク

ーーアクションと俳優の両立をしていく上で、意識の差みたいなものはございますか? 絢寧さんも俳優業とは別に、アクション部としてのご活動をされています。
森 動画を撮ったりしていることもあり、監督業への憧れがあります。作る側の考えを読み取って演技プランを考えるところがあるので、監督さんが見せたい画はアクションが重要なのか? 演技なのか? と考えます。『MAD CATS』に関しては、ヌンチャクに対しての意気込みがあったので、海外の映画祭に出品する際に見つけてもらいたいという思いがありました。アクションのときはそこの磨きに力を入れるんですが、逆に演技のときはそれにすっごくうるさいので、監督さんと話し合ったりします。
ーー「るいちゅーぶへの道」の動画制作は独学で行われているんでしょうか。
森 そうですね、カメラと編集ソフトを使って自分で。カメラワークの勉強になっています。プロの方が撮った画角やカット割りを覚えて。再現をしていく中で、すごい勉強になります。
ーー他のアクション俳優で共演したい方はいらっしゃいますか?
森 やっぱり、サモハンとかチョウ・ユンファとか、香港のアクション俳優さんにお会いしたいですね。いま誰に会いたいかと聞かれれば、リー様関連の人に会いたい。リー様のスタントをやってらしたユン・ワーさんにもお会いしたいです。
ーー絢寧さんや伊澤彩織さん、HAYATEさんや三元雅芸さんなど、最前線でご活躍されているアクション俳優、アクションコーディネーターの方たちとの交流や横のつながりはあるんでしょうか?
森 わたし個人はあまり直接のつながりはないんですが、「るいちゅーぶへの道」をご覧くださってる俳優さんなどが声をかけてくださることがあってとても光栄に思っています。お話してみると大体共通の知り合いの方がいらっしゃったりします。
ーーアクションの人たちでつながっているグループみたいな、コミュニティがあるといいですね。
森 ヌンチャクを教えてくださいと言われればいつでも教えたいんですけど、いまのところないですね(笑)。一回だけ、ヌンチャクを使う役を演じる舞台の俳優さんに、レッスンをさせていただきました。『MAD CATS』もヌンチャクの殺陣をつけてもらってないので、自分でやってるんです。
ーー絢寧さんや伊澤さんは海外の作品でも活躍されています。森さんが海外でご活躍する姿も見てみたいです。
森 それも含めて、「るいちゅーぶへの道」の第二章ですね。
ーー先日の動画で、これまでの「るいちゅーぶへの道」は第一章としてひとつの区切りをつけ、ブルース・リー映画の再現動画を作り続けることからは卒業すると仰ってました。
森 第一章はリー様の模範をずっと続けてきて。リー様にこだわって布教活動をして、二年半、突っ走ってきたんですけど。周りが見えてないくらいのめり込んでるし、ブルース・リーというものにしか楽しさとか幸せを感じられないようになっていっちゃうなと思ったんです。ひとつのものに縛られてブレずにやっていくことは、カッコよくはあるんですけど、自分もまだまだこれから挑戦したいし、いま自分をこういう人間と定着させるのはもったいないし。リー様の教えでも”水になれ”とあるように、リー様が形にとらわれるなと言っていたのに、わたしがとらわれてるなって。ここからは、リー様の人間性の完全再現をしていきたいです。いまの自分じゃ、リー様の布教活動には力及ばずというのを痛感した期間でもありました。自分がいろんなところに飛び出した上で、ブルース・リーという核がちゃんとあれば、いろんな人たちに広められるなと。そういうことを思った上で、新しいことに挑戦しようとしたときに、リー様だけじゃなく、それ以外の映画の再現もしていきたい。これからどうなるか、わからないですけど、楽しんでやっていきたいと思いますし、最終的にはリー様の布教につなげていきたいです。
ーー動画の中では”卒業”という言葉を使ってましたが、ブルース・リーから離れるわけではなく、彼を起点として、より広い視野でブルース・リーを広めていくと。
森 高校生が卒業しても、その高校ときっぱり縁を切るわけじゃないですし。自分の中のブルース・リーはより強くなってるんですけど、それがマニアとかファンという領域を超え、役者として、表現としてブルース・リーが好きという部分を磨いていきたいです。
ーー動画は、お母さまの森田ヨーコさんとご一緒に制作されておりますが、お母さまとのバディ関係については?
森 一番大事なシーンは50テイク以上撮るんですよ。それに付き合える方じゃないと(笑)。家で撮っていることもあるので、母は一番最適ですよね(笑)。友達とかに頼んだら、嫌われます(笑)。アレハンドロ・ホドロフスキー監督とか、家族を巻き込んで撮ってるのが好きなんです。
ーー最後の質問になります。もしかしたら、究極の質問になるかもしれません。ブルース・リーにはたくさんの名言があります。”考えるな、感じるんだ”、”友よ、水になれ”、”幸せであれ、しかし決して満足するな”、”簡単な人生は願うな。困難な人生を耐え抜く強さを願え”など。これらの名言をどう受け止めていますか。また、ひとつだけ選ぶならば、最も心に留めておきたい言葉はなんでしょうか。
森 リー様のおかげで哲学が大好きになりましたし、名言には救われました。あとやっぱり、リー様が言うからカッコいいんですよね。SNSの時代ではなんでも言えるじゃないですか。でも、説得力のある人間になってこそ初めて発言に味が出てくると思っているので、自分の言葉っていうのは、そのときがくるまでそっとしまっておこうと。それはリー様を見て、より思えるんですよ。言葉の大切さっていうよりかは、人生の厚みなんだなと。名言からいつも学ばせてもらってます。一番好きな言葉は……そうですね、”わたしが恐れるのは、一万通りの蹴りを一度ずつ練習した者ではない。たったひとつの蹴りを一万回練習した者だ”。これが一番ですね。いつも、これを心に刻んでます。リー様らしいというか、美学を感じます。ブルース・リーそのものの文章のようで。しんどくなったときに、リー様の言葉を聞くと、鼓舞されますね。他の言葉も全部、自分の基盤になってます。一番すごいのは、”考えるな、感じるんだ”は、映画のセリフじゃないですか。それなのに、ブルース・リーの名言になっている。それってすごくないですか。ブルース・リーはやっぱり、映画の登場人物を超えてるんですよね。映画を飛び越えちゃってる。『燃えよドラゴン』も全部、本物なんじゃないかな(笑)。
ーー実はドキュメンタリーで(笑)。あの島も実際にあって。
森 (笑)。そのくらい、名言も本人の言葉として聞こえてくるし、それがすごいなと思いました。
ーー最後に伝えたいことはございますか。
森 『MAD CATS』は、わたしが初めてヌンチャクを持った役として出演させていただいた映画です。海外でも評判がいいみたいで、登場シーンでも笑いが起こってるらしくて。映画自体がこれから羽ばたいていき、いろんな人に見てもらえて、ヌンチャクガールの存在を知ってもらえるきっかけになればうれしいです。そして、「るいちゅーぶへの道」の第二章がこれから始まります。プレッシャーもあるんですが、自分をもっとさらけ出していきたい。リー様が自分の人生をさらけ出していたように。わたしも、リー様のようにもっと人間味の強い表現者になっていきたいと思っております。今後も応援よろしくお願いいたします!

【PROFILE】 森累珠(もり・るいす)
10歳で子役としてデビューし、現在は映画やドラマなどを中心にフリーランスの役者として活動。13歳の頃、ブルース・リーに憧れを抱いたことからジークンドーを習い、特技としてヌンチャクを習得。”ヌンチャクガール”としても活動し、Youtubeチャンネル「るいちゅーぶへの道」では、ブルース・リー映画の再現動画を発信、リーの魅力の布教活動も行う。主な代表作は映画『ハルチカ』『マリッジカウンセラー 結衣の決意』や、アマゾンプライムドラマ『ショート・プログラム』など。

【本文敬称略】©2022 Noadd Inc.
『MAD CATS』は、2023年9月1日より東京・新宿シネマカリテ他にて公開。(取材・文:後藤健児)





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