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“映人仲間”第五回『玉役 芋生悠さん』

映画『初めての女』の原作『俳人仲間』(新潮社)になぞらえて、本作の監督・小平哲兵が撮影当時のキャスト陣とスタッフ陣を振り返ります。



玉役の芋生さん

5回目は、玉役の芋生さんについて振り返っていこうと思います。

『初めての女』の現場では、孝作と玉、そして鶴昇の三役の方に、一週間早く現場に来てもらいました。

それから、本撮影(なるべく、順番に撮っていきました)の約20日間を過ごして貰いました(玉は前半の10日間、鶴昇は後半の10日間)

芋生さんとは、役が決まってから稽古や顔合わせでお会いしましたが、前乗りにて高山という地を深く知り、そして役についても知っていったと思います。


原作では描き切れなかった人物

その時に、チームとしてやっていく礎が出来たのだろうと感じました。

玉という役はある意味、原作では書き切れなかった人物だと思います。
そういった意味も含めて、原作と映画では扱いが違う人物だとも言えます。

しかし、彼女は孝作が故郷を振り返る時に欠くことの出来ない人物でもあり、忘れることの出来ない人だったのだろうと思います。

玉が孝作の元を去っていくシーン
「あの時の言葉が思い出せない」


心に留めたい人

玉の事を思うと、人間は忘れる事の出来ない人を、いかに心に留めようと思えるかが「人としての大きな成長なのかもしれないなあ」何て思ったりもします。

芋生さんにも、心に留めたいと思える人がいたからこそ、玉という役になる事ができ、玉と共にあれたのだと思います。


「体調……? 悪いよ、凄く悪い」

その証拠の一つが、孝作から体調を心配され
「体調……? 悪いよ、凄く悪い」と本音を漏らしたようで隠しているようでもある。

あの場面は、玉という人の人柄が出ていると思います。

それと、脚本にも書かずにおいた、孝作が思い出すことの出来ない玉の最後の言葉は、芋生さんと玉からの “忘れられない人” への言葉だったのだろうと思います。

「体調……? 悪いよ、凄く悪い

自由な姿で演じ、真摯に向き合う

現場では、撮影時間の1時間ほど前から撮影場所に芋生さんと先に着き、玉のことを撮影開始ギリギリまで話していたのを思い出します。

芋生さんが自由な姿で演じ、真摯に玉と向き合い、苦悩した分だけ玉になったのだと思います。


コレしか無い

私が、お芝居にある種の執念にも似た執拗性をもって向き合えたのは、芋生さんも「コレくらいで良いか」をやらなかった俳優だから。

私も「コレしか無い」を追い求めることが出来たのだと思います。

実際、面と向かってだと照れ臭くて言えないし、別に最後の言葉ではないが……玉という一人の女性を通して、芋生さんと作品を作っていく事ができました。

私からも、ありがとうと伝えたい。



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#髙橋雄祐 #芋生悠 #三輪晴香
#瀧井孝作 #俳人仲間  
#小平哲兵

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