【プリティーリズム オーロラドリーム】富樫かりな ~煌めきの路を辿って~(後編)
※この文章について
以下の文章は、私eifonenが2015年9月に同人誌で頒布した、プリティーリズム・オーロラドリームに数話登場するキャラクター・富樫かりなの二次創作シナリオ本「富樫かりな~煌めきの路を辿って~」の本文(後編)です。富樫かりなの登場シーンでの言動や、作品内での設定、菱田正和監督のツイッターでの発言などから、富樫かりなの半生をシナリオの形でくくり出してみようと試みました(私的妄想を大いに盛り足しつつ)。
今後再販の予定がないことから、今回無料で全文公開致しました。ご了承下さい。
また、以下の文章も参考に、楽しんで頂けると幸いです。
プリティーリズム オーロラドリーム 富樫かりな論http://d.hatena.ne.jp/eifonen/20160313/1457879399
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【後編:女王の孤独な戦い】
○大会会場・全景
テロップ「2004年」
○大会会場・中
華麗にジャンプを決める富樫かりな(18)。
沸きに沸く観客。
× × ×
表彰台の上で笑顔で手を振るかりな。
○テレビ画面
アナウンサー「プリズムクイーンカップを連覇した女王・富樫かりな。その勢いは全く衰えず。これで今シーズン国内大会6連勝です!」
○新聞の記事
「富樫かりな、国内プリズムショー界を席巻」
「新時代の女王」
「ワールドチャンピオンシップ出場権は確定か」
○市街地・駅前
ビルの看板に、かりなが映った広告。
○電車・中
中吊り広告にかりなの写真。
雑誌を読んでいる人、その記事にもかりなの笑顔。
○近場プリズムリンク・入口
車から富樫かりなとトレーナー(26)が降りてくる。
入り待ちのファンが大勢押し寄せてくる。
トレーナー「ちょっと危ないですよ、どいてどいて!」
トレーナーが先導してファンの群れをかきわけ、その背後をかりなが笑
顔で通る。
○近場プリズムリンク・中
トレーナーが疲労困憊の様子で椅子に座っている。
柔軟体操をするかりな。
トレーナー「いやー、プリズムクイーンになって以降、このリンクも毎度毎度えらい騒ぎだよ。それもどんどん騒ぎが大きくなってる」
かりな「みんなの期待の表れでしょう」
トレーナー「プリズムクイーンってすごいんだね本当」
かりな「トレーナーのくせにトボけたこと言わないでよ。それに、プリズムクイーンは通過点よ」
トレーナー「えっ、そうなの?」
かりな「最終目標は、今年行われるワールドチャンピオンシップ。かつて阿世知さんが神崎そなたさんと熾烈なトップ争いの末、前人未到のジャンプ『スペクタクル・ドゥ・ダンス・ドゥ・ランプルール』で優勝を勝ち取った、あの大会に、私も出る。そして優勝するのよ」
トレーナー「何でそこまでするんだい?」
かりな「ピュアフレッシュウェディングのストーンのバトンを受け取り、プリズムクイーンとなった私は、阿世知さんの後を継がなければいけないの。私のファンの人たちみんな、プリズムショーを見てくれている人たちみんな……みんなの、夢に、私はならなければいけない」
トレーナー「それが君の望み?」
かりな「そうよ。阿世知さんの背中を追い続けること。そして阿世知さんが見せてくれた景色を、プリズムの煌めきを、私も皆に見せ続けること。それが私自身の夢」
トレーナー「……そうか、君がそれでいいなら、わかった、わかったよ」
かりな「だったら早く柔軟手伝って」
トレーナー「あ、ああ」
トレーナー椅子から立ち上がる。
○新聞
「富樫かりな、ワールドチャンピオンシップへの出場権を獲得」
「全国の期待高まる」
○テレビ画面
記者会見が行われている。
マイクの前に着席するかりな、対面に多くの報道陣。
記者A「富樫さん、いよいよ来週ワールドチャンピオンシップ開催ですが、意気込みをお聞かせ下さい」
かりな「優勝以外ありません」
おーっとどよめく報道陣。
かりな「阿世知・神崎二強時代に続き、新たな時代が来たことを証明してみせます」
○空港ロビー
たくさんのファンの歓声と報道陣のフラッシュの中、富樫かりなが搭乗
口へと向かう。
○空港・全景
飛び立つ飛行機。
○飛行機・中
シートに座り、前を見据えるかりな。
かりな(M)「ここで勝って、私はあなたの背中に追いつきます、阿世知さん」
○大会会場・全景
すりばち状の巨大なスタジアム。
「ワールドチャンピオンシップ」の看板。
○大会会場・中
海外の選手たちが、次々に見たこともない大技を決めていく。
かりな、驚愕の表情。
○会場・リンク
リンクの中央、膝に手をついて息を切らすかりな。
実況の声「富樫かりな、ワールドチャンピオンシップ9位に終わりました。国内では無敵の富樫かりなでしたが、世界相手では全く歯が立ちません」
かりな(M)「そんな……阿世知さんはこんなバケモノたちが闊歩する舞台で、神崎さんと2人でトップを争っていたというの……?」
○空港・中
サングラスをし、早足で歩くかりな。
多数の報道陣がマイクを向けて後を追う。
記者A「9位という結果に終わりましたが、今のお気持ちは」
かりな「……」
記者B「国内で応援してくれていたファンの方々に、何か一言」
かりな「……」
記者C「かりなさん!聞いているんですか!?」
かりな出口を出、足早に車に乗り込む。
記者C「かりなさん!」
車、走り去る。
○新聞
「富樫かりな9位に終わる」
「期待外れ」
○プリズムショー協会・全景
「プリズムショー協会」の看板。
○プリズムショー協会・会長室・中
プリズムショー協会会長が机に座っている。
机を挟んで、富樫かりなとトレーナーが立っている。
会長「まあ、お疲れさま。今回は残念だったね」
かりな「申し訳ございません」
会長「まあ気にすることはない、次勝ってくれればいいさ……次こそはね」
かりな「……」
トレーナー「……」
○近場スケート場・中
トレーナーの指導の元、練習に励むかりな。
かりな(M)「私に国内プリズムショー界の未来がかかっているのよ、阿世知さんから受け継いだ煌きを、絶やすわけにはいかない」
○大会会場・全景
テロップ「2008年」
「ワールドチャンピオンシップ」の看板。
○大会会場・リンク
リンクの中央で俯くかりな(22)。
実況の声「富樫かりな、今回のワールドチャンピオンシップも前回と同じく9位、入賞を逃しました。やはり海外では通用しないのでしょうか……」
かりな(M)「勝てない……どうしても……何が足りないっていうの……?」
○公園
ジャージ姿、ランニングを終え、しゃがんででスニーカーの紐を結び直
すかりな。
横を通行人A、Bが通り過ぎる。
A「プリズムクイーンカップ見た?」
B「最近はプリズムショー自体さっぱり。どうせ富樫かりなが勝ったんだろ?」
A「俺も見てない。国内でクイーンでも、海外で勝てないんじゃな」
B「意味ない意味ない」
A・B「ハハハハハ……」
通行人去っていく。
しゃがんだままのかりな。
かりなの険しい表情。
かりな、顔を決意の表情に戻し、立ち上がってランニングを再開する。
風がビュンと吹き、地面に打ち捨てられていた新聞がフワリと舞う。
新聞には、「国内プリズムショー・冬の時代」の文字。
○富樫家・玄関
テロップ「2011年」
ランニングに出る為、スニーカーを履く富樫かりな(24)。
かりな(M)「次のワールドチャンピオンシップこそは……今の私には基礎体力が足りないんだわ。もっと体を鍛え直さなくちゃ」
かりな、立ち上がろうとするも、左足に激痛が走り、顔を歪める。
かりな「うっ……」
しゃがみ込み、脂汗をかくかりな。
かりな「これは……!?」
○シンフォニア病院・全景
門に「シンフォニア病院」の表札。
○病院・診察室
かりな、トレーナー(32)と医者が対面している。
医者「なぜこんな無理をするか知らないが、あなたの足はボロボロだ。医者の立場からすれば、引退を勧める」
かりな「引退……?」
トレーナー「……」
医者「無茶なトレーニングをし過ぎている。それに、今あなたが飛んでいるプリズムジャンプ……『プラチナ・スパイラル』でしたか、あれが足に相当の負担をかけている」
かりな「『プラチナ・スパイラル』が……?」
トレーナー「……」
かりな「何とか……何とかならないんですか?まだ私は辞めるわけにはいきません!」
トレーナー「富樫……!」
医者「……『プラチナ・スパイラル』を跳ぶのをやめれば、まだ選手生命は延ばせるかもしれな」
かりな「それだけは出来ません!」
かりな、感情が昂り立ち上がろうとするも、足に激痛が走る。
かりな「っっ!」
トレーナー「無茶をするな!」
トレーナー、かりなの体を支える。
かりな「あれは、あのジャンプは私の命!」
医者「……」
かりな「あのジャンプが飛べなくなるなら……死んだ方がましです」
トレーナー「富樫……」
医者、溜息をつく。
医者「痛み止めを処方しておきます。しばらくは競技を継続できるでしょう。ただし、その場しのぎの代物に過ぎない。あなたに残された時間は、そう長くないと自覚してください」
○近場スケートリンク・中
脂汗をかきながら練習に励むかりな。
心配そうな表情でみつめるトレーナー。
かりな、ジャンプの着地で顔を歪める。
かりな「うっ……!」
リンクに倒れ込むかりな。
トレーナー「富樫!」
トレーナー、かりなに走り寄る。
かりなの手がトレーナーを制止する。
かりな「大丈夫よ……」
かりな、虚ろな表情でふらふらと立ち上がる。
かりな「まだ、やれる……」
トレーナー「……富樫、もういい。こんな無茶をして一体何になるんだ!」
かりな「プリズムの……、プリズムの煌めきを……」
トレーナー「煌めき……?」
かりな「プリズムの煌めきを……阿世知さんから引き継いだ輝きを……、絶やしてはならないの……」
トレーナー「……」
かりな、おぼつかない足で一歩二歩と足を進める。
突然、かりなの体に、青いジャンパーの腕が重なる。
かりな「!?」
トレーナーが、かりなを後ろから抱き留めている。
かりな「……えっ?」
トレーナー「かりな……!」
かりな、驚きの表情。
トレーナー「もうやめてくれ……かりな。君が苦しむ所を、僕はこれ以上見たくない……」
かりな「トレーナー……」
○喫茶店・中
テーブルを挟んで対面するかりなとトレーナー。
俯くかりな。
トレーナーの真剣な眼差し。
トレーナー「身勝手かもしれないけど」
トレーナー、小さな箱をテーブルに出し、箱を開ける。
箱の中には結婚指輪。
トレーナー「これが僕の気持ちだ、かりな」
かりな「……」
トレーナー、かりなの目前に箱を差し出す。
トレーナー「君に預けておく。少しだけでも、考えてみてくれないか。君にとっての幸せが、一体何なのか……」
かりな「私の……幸せ……」
○富樫家・かりなの部屋(夜)
部屋の電気は消え、テレビだけが明りと小さな音を垂れ流している。
部屋中に貼られている今日子のポスター。
かりな、部屋の端で体育座りをし、顔を伏せている。
テーピングでガチガチに巻かれた、ぼろぼろのかりなの足首。
痛み止めの注射器が散乱している。
テーブルには結婚指輪の箱が置かれている。
テレビの声「さて、次の話題です。冬の時代と呼ばれて久しかった国内女子プリズムショー界ですが、新たな波が訪れています。春音あいら、天宮りずむ、城之内セレナ、藤堂かのんなど、新人プリズムスター達が、各地大会の優勝カップを次々と獲得しています」
かりな、顔を上げテレビを見る。
テレビの声「その中でも今回注目したいのは、クールビューティー・高峰みおんです。元は人気雑誌モデルだった彼女が昨年に入りプリズムショー界に華々しくデビュー。ルーキーとは思えない洗練されたダンスと度肝を抜くジャンプで瞬く間に人気を集め、昨年末のクリスタルハイヒールカップにて春音あいら、天宮りずむと共に出場し優勝。今後ますますの活躍が期待されます」
テレビ画面の中、メイドコーデを身に纏い、可憐かつ優雅に踊る高峰み
おん(14)の姿。
画面に見とれるかりな。
テレビ画面の中のみおん、ジャンプをすると、周囲がミツバチの巣に早
変わりする。
みおんの声「はちみつー・キーッス!」
テレビ画面のみおん、画面に向かい投げキッス。
キスマークの光線がテレビ画面から飛び出し、かりなに降り注ぐ。
微かに頬を赤らめるかりな。
かりな(M)「この胸の高鳴りは……!」
テレビ画面のみおんが微笑んでいる。
かりな(M)「新人に、こんな子が居るのね」
かりな、表情を引き締める。
かりな(M)「この子なら……もしかして」
○大会会場・全景
テロップ「2012年」
看板に「ニューイヤーカップ」の文字。
○大会会場・中・ロビー
報道陣に囲まれるかりな。
かりな、毅然とした表情。
記者A「かりなさん、急遽ニューイヤーカップに出場とのことですが」
記者B「高峰みおんとの対戦を望んでのエントリーですか?」
かりな「……ベストを尽くします」
記者C「高峰みおんについて、お話を」
かりな「……」
かりな、歩き去る。
○大会会場・控室
柔軟をするかりな。柔軟を手伝うトレーナー。
トレーナー「驚いたよ、君が急にニューイヤーカップにエントリーするなんて。この大会に出なくても、プリズムクイーンカップには出場できるだろうに」
かりな「……」
トレーナー「何か考えがあって?」
かりな「……リクさん、あなたには感謝しているわ。今までずっと私の我儘についてきてくれて」
トレーナー「……いいんだよ」
かりな「今日……答えを出すわ」
トレーナー「……そうか、分った。どんな結論であれ、受け入れる覚悟は出来てる」
かりな「……ありがとう」
○大会会場・中・リンク
満員の観客。
実況の声「ニューイヤーカップ、いよいよ開幕です。高峰みおんのソロデビュー戦へ急遽、女王・富樫かりなが参戦。会場は異様な盛り上がりを見せております」
○大会会場・中・廊下
阿世知今日子(34)が廊下を歩いている。
今日子の前に立ちふさがる人影。
今日子「……」
かりなである。
かりな「お久しぶりです、阿世知さん」
今日子「かりな……」
かりな「あの時以来ですね、覚えていますか、突然の引退会見……」
今日子「……勿論よ」
かりな「その年、私はプリズムクイーンになった」
今日子「……」
かりな「でも、私は今でも、阿世知今日子の背中を追い続けている……」
今日子「……」
かりな「プリズムクイーンとしての責任を、最後まで果たして欲しかった」
今日子「……」
かりな、振り返り、立ち去る。
今日子「あなた、もしかして……」
○ニューイヤーカップ会場・リンク・中
会場のライトが落とされる。
実況の声「さあいよいよ、富樫かりな選手の演技です」
湧きたつ観客。
実況の声「注目のコーデは……」
リンクにスポットライトが当たる。
スポットライトの中には、ピュアフレッシュウェディングコーデを身に
纏ったかりな。
実況の声「これは、ウェディングコーデ、ピュアフレッシュウェディングです!」
観客から歓声が上がる。
かりな(M)「阿世知さん、見ていて下さい。これが、私の最後の演技です……!」
× × ×
かりな、リンクの上を華麗に滑り、舞い踊る。
リンクはまばゆいZONEに包まれる。
ステージ袖でかりなの演技を見守るみおん、今日子、ネコチ、滝川純
(25)。
ダンスを終え、ジャンプの助走に入るかりな。
かりな「阿世知さん、これが、私があなたから受け継ぎ、10年間守ってきた全て……プリズムの煌めきです!」
かりな、空高く二段ジャンプ。
光が拡散し、煌めきの路が広がる。
その上を勢いよく滑走するかりな。
かりな「プラチナ……スパイラル!」
かりなのウインク。
観客からの大歓声。
実況の声「決まった!これぞ女王の滑り、パーフェクトな演技でした!」
演技を終え、観客に手を振るかりな。
真剣な面持ちのみおん。
実況「さあ注目の得点は……7560カラット、勿論、断トツの一位です!」
再び観客の歓声。
観客に手を振っていたかりな、ステージ袖に振り返り、みおんに強烈な
視線を送る。
みおん「っ……!」
× × ×
会場が暗転する。
実況「さあいよいよ、高峰みおんの登場だー!」
湧きたつ観客。
リンク中央に滑って来、後ろを向いて目を閉じるみおん。
ステージ袖で、かりなが見守る。
× × ×
「Switch On My Heart」の音楽に乗って可憐に踊るみおん。
ステージの上がZONEに包まれる。
みおん、助走をつけてジャンプ。
ミツバチの巣穴から出てくるみおん、
両手を唇に当て、エネルギーを溜める。
みおん「はちみつ……キッース!」
みおんの投げキッスが観客席に飛び、弾けて乱舞する。
狂喜する男性客たち。
みおんのダンスは更に煌めきを増す。
みおん、助走をし、空高く二段ジャンプ。
漂うコーヒーカップの群れ、その合間をみおんがジグザグに滑走する。
みおんの滑走跡が描いていたのは五芒星のマーク。
みおん「さあ、召し上がれ。ミラクルマキアート!」
会場全体に満点の綺羅星が降り注ぐ。
観客の割れんばかりの大歓声。
実況の声「決まった!恐るべし、高峰みおん。とんでもない演技をやってのけました!」
見開かれたかりなの瞳に映る綺羅星。
実況の声「さあ得点は……8260カラット!高峰みおん、富樫かりなに大差をつけ、デビュー戦を飾りました!」
観客に向けて笑顔で手をふるみおん。
それを満足げな表情で見守るかりな。
かりな(M)「間違っていなかった…阿世知さんの煌めきを継いでくれるのは……」
× × ×
みおん、今日子と純が待つステージ袖に戻ってくる。
そこに待ち構えるかりな、みおんに右手を差し出す。
かりな「おめでとう」
みおん「(驚いた表情で)あっ……」
かりな「素晴らしい演技だったわ」
みおん「あっ、ありがとうございます……」
二人、握手する。
かりな「お礼を言うのは私。安心して引退できる」
みおん「ええっ!?」
かりな「これからは、あなた達の時代よ」
みおん「そんな……」
かりな「これ、受け取って」
かりな、左手からストーンを差し出す。
みおん「これは……?」
みおん、ストーンを受け取る。
かりな「ピュアフレッシュウェディングのストーンよ……私が、阿世知さんから受け継いだストーン、と言ってもいいかしら」
かりな、背後の今日子をチラとを見る。
今日子の頭上にはハテナマーク。
みおん「……いいんですか?」
かりな「もちろん。その代わり、きっとプリズムクイーンになるのよ」
みおん「……」
みおん、一瞬きょとんとした後、表情を引き締める。
みおん「はい!」
かりな、笑顔でウインク。
かりな、振り返り、今日子と純の側を通り過ぎて去ろうとする。
純、すれ違い際に一礼。
今日子の背後で、かりな立ち止まる。
かりな「阿世知さん」
今日子「えっ?」
かりな「私結婚することになりました」
かりなの左手薬指に光る、結婚指輪。
かりな「お先にウェディングドレス、着ちゃいますね」
今日子「のわっッ!」
かりな「フフフフフ……」
かりな、クスクス笑いながら去っていく。
吹きだす純。
今日子、純を睨み、足を踏みつける。
純「アウチ!」
足を押さえて痛がる純。
みおん、去りゆくかりなの後ろ姿をずっと見つめている。
○大会会場・廊下
暗く長い廊下。
真っすぐと前を見据え歩くかりな。
かりな(M)「貴方にすべてを託したわ……高峰みおん。そしてさようなら、私の憧れの人……」
かりな、廊下の先の光へ向けて、カツカツと歩き去っていく。
【エピローグ】
○プリズム空間
かりな「これが私の辿った路。どうだったかしら?」
らぁら「なんていうか、圧倒されちゃいました……!」
あいら「かりなさんにこんな事情があったなんて、全然知りませんでした」
みあ「大変だったんだね~」
かりな「ライバルは得たくて得られるものじゃない。ライバルと呼べる人を持てることはとても貴重な事なのよ。もし得られたら勿論大事にすべきね。ただ時には、めぐり合わせが悪くて、どうしても素敵なライバルに出会えないこともある。でもそんなときであっても、誰かを想う気持ちを胸に抱き、追い続けることが大切なのよ」
あいら、みあ、なる、らぁら、無言で頷く。
かりな「私は阿世知さんにライバルと認めてもらえなかった。誰と切磋琢磨することも出来ずに、独りで戦うしかなかった。本当に大変だったし、もう止めようと何百回も思った……」
みあ「でも頑張ったんだ~」
かりな「まあ、ね。私は、阿世知さんがくれたギフトを、手放すわけにはいかなかった。自分の為にも、プリズムの煌きを受け継いでいく為にもね。今なら胸を張って言えるわ……私は私に出来ることを、精いっぱいやったし、私は阿世知さんを愛せて良かった」
らぁら「そう思えるようになって良かったですね!」
かりな「ええ。それに今だって、とても幸せだし……」
みあ「結婚したから?」
かりな「それもあるけど……」
プリズム空間にスクリーンが幾重にも現れ、そこかしこに高峰みおんの
顔やプリズムショーの様子が映る。
かりな「キャー!みおんちゃ~ん!可愛い!こっち向いて~!」
大はしゃぎするかりな。
かりな「みおんちゃんのクールな演技が最高よね。いやでも時折見せるおちゃめな笑顔もたまらないのよ!あーもうみおんちゃん最高よ~~~」
画面に映るみおんを追いかけて退場するかりな。
なる「確かに幸せそうだね……」
みあ「かりなさん、プリズムクイーンカップの解説もやけにみおんさん贔屓だったし、これって阿世知社長からみおんさんに乗り換えただけなんじゃないの?」
あいら「ははは……で、では、気を取り直して、今日のレッスンのまとめは……」
一同「『他人を想う気持ちが原動力!』」
らぁら「ありがとうございます!これでまた一つ、ハートが輝くヒントを手に入れました。らぁらは片思いのセンター!次回のレッスンでは、どんなヒントが貰えるのかな、楽しみ!」
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