非鉄金属業界研究メモ(ニッケル・亜鉛etc)

お久しぶりです。前回に引き続き就活の際に作った業界研究メモをまとめました。

今回は銅以外のニッケル・コバルト・亜鉛などをまとめたいと思います。前回の投稿でも少し書いた部分もありますが、さらに詳細に書きたいと思います。銅以外の非鉄金属は製錬を手掛けてるのは国内で1社のみのことも多々あり、企業ごとでなく金属ごとにまとめています。

ニッケル

ニッケルは耐熱性・耐食性の高さから、古くから合金としての需要がありステンレス鋼の原料として使用されていることはよく知られています。大体需要量の7割ぐらいはステンレスとしての用途だそうです。また、近年電池の正極材としての需要も高まっており、今後HV車やEV車がさらに普及するに従い、生産量も伸びていくことが予想されます。

ニッケルは工業的に分類されており、一次ニッケル製品はニッケルの含有量によりクラス1と2に分かれており、上記の電池正極材として用いられる硫酸ニッケル、水酸化ニッケルはクラス1から生産されます。

ニッケル鉱山は硫化鉱によるものと酸化鉱によるものに分かれており、一般的に硫化鉱の方が高品位であり、製錬のしやすさから昔から利用されています。ニッケルの生産量が世界一位であるノリリスク・ニッケルは近郊の硫化鉱を製錬することにより世界最大となっています。

一方で酸化鉱は低品位であったことから製錬の対象になってなかった一方で資源としての埋蔵量は東南アジアを中心に多量にあることから、資源化する技術の開発が進められていました。この問題を解決し、世界初の商業的生産を成し遂げたのが住友金属鉱山であり、世界の資源メジャーと比較した際の強みとなっています。

住友金属鉱山はこの酸化鉱からニッケル・コバルト混合硫化物を生産するHPAL(High Pressure Acid Leach)法を現在、フィリピンのパラワン島南東部にあるコーラルベイニッケルとミンダナオ島北東部にあるタガニートニッケルの製錬所へ導入しています。また、新たにインドネシアのスラウェシ島でのポマラプロジェクトのDFS(Definitive Feasibility Study)に入っています。

このポマラプロジェクトなのですが、太平洋戦争中の1942年、名前が住友鉱業の時代に1度海軍からスラウェシ(セレベス)島のニッケル鉱山の経営を受託していたっぽいですね。今回調べてた際に知りました。1945年にはニッケルマット工場まで完成していたらしいので約80年振りの回帰となるんですかね。

すでに初となるHPAL技術の導入であったコーラルベイニッケルの建設から15年が経ち、中国のZhejiang Huayou CobaltやTsingshan Groupなど競合他社もインドネシアなどにHPAL技術を導入した製錬所を建設することを進めており、今後も優位性を確保するために研究開発が進められるのではないでしょうか。

一方でインドネシアでの資源開発を司る要因として資源ナショナリズムがあります。非鉄業界の特に川上と密接に関係する言葉であり、特にインドネシアでは未加工鉱石の輸出の禁止や外資企業に対する資本譲渡義務など制限があります。鉱山からの撤退などはあるものの、インドネシアで採掘された鉱石を消費するため基本的に製錬所建設は加速していくと考えられます。

住友金属鉱山では戦前から新居浜において電気ニッケルを生産しており、現在のニッケルに関する工場としては電気ニッケルの新居浜と播磨、フェロニッケルの日向になります。

電池材料となる電気ニッケルのメーカーとしては住友金属鉱山のみですが、フェロニッケルに関しては大平洋金属・日本冶金工業も製造を行っています。

亜鉛

亜鉛の使用用途としては亜鉛めっき鋼板や伸銅品、鋳造用のダイカスト、無機薬品などがあり、この中でも亜鉛めっき鋼板は自動車に半分近くが使用されいます。このため非鉄の中でも亜鉛の需要量は特に自動車販売台数と連動していると言えます。

地金は電気地金、蒸留亜鉛、精留亜鉛の3つに分類され、この中で特に生産量が多いのが電解法を用いる電気地金であり、国内を見ても5か所ある亜鉛精錬所(秋田、安中、彦島、神岡、八戸)のうち八戸を除く4か所は電解法を使用しています。

亜鉛鉱石の生産量としては中国が3割強を占めており、ペルー、アースとラリアがそれに続きます。近年の亜鉛価格高騰を受け操業を開始した鉱山としてはオーストラリアのものが多く、力を入れていると言えます。

世界的にはGlencore、Nyrstar、Teck Resourcesなど資源メジャーが高いシェアを占めています。国内メーカーとして亜鉛精錬に携わっているのは、前述した彦島・神岡製錬所を子会社としている三井金属鉱業と安中製錬所をもつ東邦亜鉛、秋田製錬に資本参加しているDOWAホールディングス・住友金属鉱山となります。国内需要量は現在の製錬所で十分賄われており、輸出も行われています。

非鉄金属すべてに言えることではありますが、今後自社による鉱山開発を通して使用する精鉱を自主調達することとリサイクル原料の使用は増えていくでしょう。

リチウム

リチウムに関しては基本的に鉱山による採掘よりもかん水を利用した精製の方が生産コストが半分とコスト的に優位です。そのため現地での精製が主となっており、鉱石の輸入などは他の金属に比べて少ないです。特に南米ボリビアの有名なウユニ塩湖などは膨大な埋蔵量を誇り、低コストでの製錬が可能であることから今後開発が進むと考えられます。

近年リチウムイオン電池の普及とともにリチウム価格も伸びていたのですがひと段落したことから、鉱山プロジェクトが思ったほど利益を出せていないので新規プロジェクトの進みはそこまで早くありません。

国内非鉄メーカーが経営戦略としてリチウムになぜ重点を置いているかとしては、リチウムイオン電池のリサイクルが上げられます。リチウムイオン電池はリチウムを始め、ニッケル、コバルトなど有価金属を多く含んでおり、今後電気自動車などの普及による金属価格の高騰を見据えてリサイクルフローの構築は急務と言えます。

そのリサイクルフローの中でも乾式と湿式が存在しますが、リチウムに関しては排水中のスラリーに含まれるリチウムを炭酸化し、炭酸リチウムとして抽出するのが有力です。

このリチウムイオン電池リサイクルに力を入れている企業としてはリサイクルに強みを持つDOWAホールディングスを始めとしてJX金属、住友金属鉱山、非鉄メーカーではないですが太平洋セメントも手掛けています。

住友金属鉱山に関しては今後の展望として高不純物塩湖水からのリチウム精製事業への参画と明記しており、今後南米鉱山への権益投資の可能性も高いと考えられます。

追記:豊田通商子会社の豊通リチウム株式会社が2021年度上半期完成を目途に福島県双葉郡楢葉町に高純度水酸化リチウム工場を建設中です。楢葉町にはすでに住友金属鉱山子会社のニッケル酸リチウムを製造する住鉱エナジーマテリアル、正極材材料を製造する日本化学産業の工場が既に立地しておりリチウムイオン電池正極材供給地として国内でもいくらかのウェイトを占めると考えられます。

終わりに

非鉄金属の中でも銅以外だと特に出現頻度の高いと考えられるニッケル、亜鉛、リチウムについてまとめました。他にも鉛、アルミ、タングステンなどもありますが、機会があれば希土類元素も含めてまとめてみたいですね。

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