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絵本を読んで「家」について考えてみませんか? |『おうち』中川ひろたか・作 岡本よしろう・絵 金の星社


絵本紹介士のkokoroです。 “絵本紹介士”とはその字の通り、絵本を紹介することです。
幼い頃から読書が好きで、大学は児童文学科で学びました。またここに至るまで、挫折を経て心のことに関心を寄せ続けてきました。
ある時から絵本の楽しさを知り、多くの絵本を読んできました。
絵本は子どもが読むもの、と思われがちですが、大人の心にこそ響きます。
楽しくなり、癒され、深く心が動き、考えさせられる。
そんな風に心惹きつけられた絵本を1冊ずつ紹介しています。
実際にその絵本を手に取って頂き、思いを共有してもらえたら、こんな嬉しいことはありません。

今日ご紹介するのは『おうち』(中川ひろたか・作 岡本よしろう・絵 金の星社)という絵本。

1・この絵本をおすすめする理由

この絵本は表紙からもう面白い。
一軒の家が描かれていて、中まで見えるようになっています。

(文末にAmazonへのリンクを貼っていますので、そこで表紙を見ることができます)

人の家ってなかなか見ることってできないですよね(当たり前ですが・そしてしてはいけないのです)でも興味ありますよね。
この絵本では人のお家をそっとのぞき見しているような感覚になります。

表紙の絵はお母さんが洗濯物を干しており、お父さんが車の掃除、「わたし」はホースで水をかけている。おばあちゃんがその横で笑ってみている。

家の外では女の子が犬の散歩をしている。

どんなお話なんだろう・・と、すごく中身が読みたくなります。

家の中はどうなっているのか、ますます見たくなる。
それをストーリー仕立てて見せてくれます。

そして読んでいるうちに「家」という概念について考えさせられる、自分にとっての「家」を見直してみる、お家に住めるということのありがたさ、などいろんな気づきがある。また、家族と「家」について話すきっかけにもなる絵本なのです。


2・絵本のストーリー

この絵本は「わたし」が帰ってくるところからはじまります。
帰ってくるところからというのは家に家族が一番いる時間ということで夕方からということになるのでしょう。

家で家族がどう過ごしているのかが描かれています。

また、「わたし」がどうして家に帰ってくるのかな、と考えたり、

人間だけでなく、動物・魚・鳥までもが巣などに帰る不思議。

ある時は、先生に叱られた日は家に帰りたくないという気持ちも描かれています。

そして、戦争や災害で家を失くした人々の気持ちにも心を寄せている。

家について色々な角度から描かれています。


3・この絵本に惹かれたところは、つながりを発見できること

この絵本から惹かれたところは、とても細かいところまで描かれていること。
例えば、「わたし」が学校から帰ってきた時に、おばあちゃんが栗をむいている。夕食の場面ではそれが栗ご飯となって登場しています。

また、お父さんがお弁当だけ持って出かけて、慌てて、お母さんが(ちょっと怒りながら)カバンを持って追いかけているところがいかにも日常風景のように描かれていてとても面白い。二度、三度と読み返しても飽きません。
次のページ、次のページへと、ちゃんとお話がつながっていて、それについての文章はなくても、絵から読み解くのがとっても楽しい。つながっているところを見つけることができたら、自分だけが発見できたみたいで、なんだか嬉しくなってしまいます。

また、お父さんがソファーでごろんと寝ている場面もあり、誰しもが家の中で見たような光景が繰り広げられているのもすごく親しみを感じる。

そのような絵を見るのがとても楽しいのです。

4・この絵本から気づけることは「家」に対する思い

この絵本からは「家」がいかに大切なところかが、伝わってきます。

どんなに遠くても帰ってきた犬、鮭も卵を産む時は生まれた川へ帰ってくるなど、人間だけでなく、動物なども家に帰るというお話、

それから暗い夕方、誰かの家にぽっと明かりがついているのを見るだけで、安心すること。

また、どこかの国やまた日本でも戦争や災害によって、家を失う人がいるということも忘れてはいけないということを教えてくれます。

毎日、普通に家から出かけ、帰ってきて、ご飯を食べたり、お風呂に入ったり寝たりできる。当たり前ではない、ありがたいことだと気づける。

また、

「わたしが しんだら ふるさとの おはかに はいりたい」って おばあちゃんは いつも いう。
わたしの ふるさとは このおうち。

『おうち』中川ひろたか・作 岡本よしろう・絵 金の星社 より引用


という、「おうち」はただの家ではなく、人にとっての“ふるさと”につながっている。
温かい、安心できる場所になっているのだということがわかります。

人によって「家」というイメージは、今住んでいる家だけではなく、小さい頃に住んでいた家、実家、などそれぞれ違うでしょう。

外側だけでなく、家の中にいる家族・同居している人など、「家」=一緒に住んでいる人、をイメージする人も多いかと思います。

また年代によって「家」に対する思いは違う。

大学や就職を機に家を出ていく人、
それを見送る人、
これから結婚する人ならば、自分が将来住む家族はどんな家族だろう、どんなお家だろうと想像する人などなど

「家」をテーマにしたこの絵本から色んな立場の人がそれぞれの見方から色んな思いを持つということにも気づけます。

私自身のことを考えると、「家」とただ聞くと、現在、住んでいる家を思いますが、この絵本を読んで色々思い返してみると、小さい時に住んでいた家を思い出します。
家の前で友達とゴム飛びをしていたな~、とか、二階の子供部屋で本を読んでいた自分、とか、家族でご飯を食べていた光景などが浮かんできます。自分の原風景です。

また、今は子ども二人が家を出て行って、夫婦二人になり、子どもが帰ってくるのを迎え入れる場所になっている。自分の家族が集うところ、それも「家」です。考えてみると、「家」は自分の歴史にもなっているのだなあと感慨深い。

あなたは「家」という言葉から、どういうことを思いますか?

5・まとめ

この絵本は絵の楽しさ、細かさ、温かさを味わうことができます。
家の中の温かさをこの絵本の「わたし」の家を通して感じることもできる。

また改めて「家」について考えることもできる。

今は「ステイホーム」の時代。家にいる時間が多くなってきた今こそ、「家」について考えてみるのもいいかもしれません。

それこそ、お家の人と話し合ってはいかがでしょうか。

この作品は何回読んでも楽しい、素敵な絵本です。
ぜひ、読んでみてください!




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