見出し画像

【メルマガ絵本沼】第15号:『くろいの』(田中清代/2018)

【メルマガ絵本沼】をお読みいただきありがとうございます(^^)/

今回のお題は田中清代さんの傑作『くろいの』(2018年/偕成社)です。
本作は韓国の国際絵本賞のナミコンクール2019で、日本人の作品としてはじめてパープルアイランド賞を受賞し、小学館児童出版文化賞(2019年)、第25回日本絵本賞(2020年)大賞受賞など、国外・国内問わず評価の高い作品ですが、もっと読まれるべきだと私は思っています。
まだまだ読まれ足りない。

今回の内容は「物語を読み解くこと」がメインです。
最後までお付き合い願えれば幸いです。


【メルマガ絵本沼】
-さびしさを覆うあたたかさ-『くろいの』(田中清代/2018/偕成社)

■寡作な絵本作家

田中清代(1972-)には「寡作な絵本作家」というイメージがある。
特に文も絵もひとりでつくる単著となると、1997年の商業作家デビューから今日まででたったの5作しか刊行されていない。

(C)田中清代/福音館書店

その中でも特にインパクトがあったのは、4作目の『トマトさん』(2002年/福音館書店)になるかと思う。

これは単著2作目の『みつこととかげ』(1998年/福音館書店)と地続きの世界の物語で、私は初読時、「あれ?子どもが出てこないんだ」と思ったことを覚えている。
というのも、単著デビューの『おきにいり』(1997年/チャイルド本社)、2作目『みつこととかげ』、3作目『おばけがこわいことこちゃん』(2000年/ビリケン出版)と、それまではいずれも子どもが主人公の絵本だったので、『トマトさん』の表紙を見て「あ、『みつこととかげ』で転がってたあのトマトだ」と気付き、じゃあみつこも出てくるんだなと思っていたら、なんと、トマトととかげと虫と魚しか出てこなかった。

ここから先は

2,519字 / 1画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?