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過ちを繰り返さないために

朽木祥『パンに書かれた言葉』(小学館、2022年)
戦争の影が忍び寄る今、戦争に抗った先達のことを考えたい。被爆二世の著者によるイタリアとヒロシマをつなぐ渾身の書。(中高生以上大人まで)

これは「夢中になって読んで気づいたら夜中だった」といった類の本ではなく、教科書のようにじっくりと心に落としていきたい本だ。

ファシズムに抵抗したパルチザンと呼ばれる人々のことは遠い国の出来事に感じられるかもしれないが、日本も同じ状況だったことが丁寧に綴られている。与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」や隣組の監視システムについても触れられている点は特筆に値すると思う。

一読後、久々に思い出したことがある。戦時下の日本で木下恵介監督は、映画『陸軍』のエンドロールで田中絹代扮する母親が出征する息子を追い続ける姿を延々と映し出すことにより、無言の抵抗を試みたのだった。

語り継ぐこと、抗い続けることを、まだ諦めてはいけない。