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海をあげる

上間陽子『海をあげる』(筑摩書房、2021年

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怒りや哀しみがあまりにも大きいとき、人は言葉を失う。それでも、ひとつひとつ言葉を絞り出し、ていねいに紡いでみたら、こういう表現になるのだろう。

軽々しく共感などといってはいけない気がする。でも、同じ女性として、命が弄ばれているこの時代に子育てに関わる者として、心を強く揺さぶられた。

沖縄の海の碧さと、米軍ヘリやジープの多さと。巨大リゾートホテルの白さと、小さな赤い屋根の集落と。珊瑚礁と茶色い土砂と。そして、暗い夜道と都会の明るさと。今、静かに思い起こしている。

わずかに残った希望を海の青に託して綴られた言葉の重みを、読者の一人として、しっかり受け止めなければと思う。私たちを信頼して書いてくださったことに感謝をこめて。