文光堂が閉店することになりました

(閉店前2023年2月に書きました)
いつも当店を応援いただき誠にありがとうございます。
この度、文具店文光堂が3/20にて閉店することになりました。
42年もの間ご愛顧賜り深く感謝申し上げます。

私自身は本を手渡していくことを続けていきたいという想いが強く、市内で新たな場所でシェア本屋と合わせてできないかと模索中です。
閉店移転を同時にお伝えしたくて粘ってしまったことと、文光堂からのお知らせは1か月前にするという両親の意向があり、お知らせが本日となりました。
まだ次の場所は決まっておりませんが、それまでネットショップやイベント出店で本の販売は継続してまいります。
SNSアカウントもそのまま続けていきますので、これまで同様どうぞ宜しくお願いいたします。

両親の営む文具店文光堂の一角で「絵本日和の本棚」としてスタートしたのはコロナ禍の緊急事態宣言の頃、3年前の4月でした。
外出が制限され、自分の住む地域でもっと楽しめたら良いなぁと思い、街に本がある場所を増やしたい!と本を置き始めたのが始まりです。
以来店にいる時間はそれまでより格段に増え、密度の濃いものへと変わりました。
母から閉店すると告げられてからは何とか継続していけないかと、ない知恵を絞る日々でした。
その中で考えたこと、感じたことが多くあり、今回は地域の小売店や文具店について書こうと思います。

店に長くいるようになって気付いたのは、両親には失礼かもしれませんが、コロナで一時閑散としていたものの、思ったよりも文具店のお客さまは多いんだなということです。(それに比べ本のお客さまは少ないので、いらっしゃるととても嬉しいのです)
長年の常連さん、定期的な取り寄せ、印刷の注文、そして9割がた繰り広げられる世間話。
時折いらっしゃる昔馴染みのお客さまは長くやっていることへの労いや感謝(感謝するのはこちらの方ですが)の言葉をかけてくださり閉店を前に目頭が熱くなることしばしばです。
毎日のように来店される方とは天気や健康の話、ご家族の話。
そこでの会話を含めてがうちでのお買い物のようなので、私しかいない時は用が足りずすみませんという気持ちになるのですが、地域のひとつのコミュニティスペースなんだなと感じます。

そして店にいると、数日に1度はボールペンの替芯を交換したいというお客さまがいらっしゃいます。
景品などメーカーのわからないボールペンをお持ちになると、合いそうなものを何度も試してぴったり合う替芯を探します。母は長年培った勘で見当をつけて何十種類とある替芯から「これが合うかも」と出してきます。替芯1本60円か80円(海外のメーカーは10倍以上の値段のものもあります)たかが替芯されど替芯。
皆さん喜んでくださいます。
また、コンビニやスーパー、ホームセンターで置ききれない細かい物を扱っていますので「○○に行ってもなかった」「やっぱりここじゃないとね」という声をとても多くいただきます。
ありがたいことだと思います。

ただ、うちの店の前にどこかで調達できれば来店されなかったということでもあり、文具店を日常的に利用する人が減っているのは明らかです。
誰を責めるわけでもなくて、そりゃスーパーに行ったついでにあればそこで買うよね、と思うのです。
百均でも充分だというのも頷ける部分はあるのです。
でも、うちの店に限らず地域の小売店は、この店が必要だと思うなら敢えてそこで買うということをして買い支えていかなければなくなってしまうのです。
意外とお客さんいるんだなと思ったと先程書きましたが、普通に営業して(とはいえ定休日は週1回です)暮らしていける売上は得ることができても、老朽化の進む建物の修繕費用などまとまった金額を作ることは難しいのです。
引き継ぐことを考えた時、普通に営業して続けていくことの難しさを痛感し、解決策は見い出せず閉店以外の道は見つけられませんでした。
多くの地域で商店街の衰退、シャッター街を嘆く声は聞かれます。
昭和50年代以前からの店は経営者の高齢化や建物の老朽化は避けられません。
後継者問題も、ケースバイケースではありますが引き継ぎたくても叶わない現状があり、一方時を経た古さはお金では買えない価値を帯びてくることも感じます。
なくなってしまうのは惜しい、と感じるのです。
なくなってしまって少なくなっているからこそ貴重に思えてノスタルジーに浸れる部分もあるのかもしれませんが。
チェーン店だけになる街並みは味気ないように感じます。
結局のところどうすれば良いのか、何冊か読んだ本からは共感は得られても明確な答えは見えず、うちの店に限って言えば、両親は閉店を前に意外にさっぱりしている様子でイジイジしているのは私だけです。
時代が変わっていくのは仕方ないことでもあり、新しい時代には新しい良さもあるのでしょう。
今年はコロナ禍を経て色々なことが大きく変化する年となるような気がします。
シャッター街より活気のある街で暮らしていきたいと思うし、それぞれの地域で明るく豊かな暮らしができる世の中であることを願っています。
と終わらせてしまうけれど、意識を持って考え続けようという気持ちでいます。
何も変わらないかもしれないけれど、一人ひとりの意識からだとも思うので。

毎度まとまらない文ですみません。


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