【韓国BL小説】<ダイヤモンドダスト>キム·ダビデ
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感想
2022年RIDI AWARDS BL小説eブック最優秀賞<Choice of Choices>や<カムバック>のキム·ダビデ先生の過去作品。
ダビデ先生といえば、キャラクターの心情・叙情的な長文が特徴的。
そんな先生が描く『オメガバース(α×β)』作品を読んでみました。
絵画を展示・売買するギャラリー·美術界が舞台で、エリアもソウル・香港・バリ・パリ・イタリアとグローバル。
攻は190cm以上の高身長でイギリス上流階級の父の影響も受けて、上流階級特有のスタイリッシュな男性で、
受は181cmで、絵描きといっても引っ越しバイトをするくらい体力があります。ちなみに受の父母も芸術系です。
受は絵から深層心理を読み取れる能力を持っていて、
攻が受の写真を大量に撮影したあとの会話がかわいいです。
攻と受が最初は互いに戸惑いつつも、惹かれあい、相手にのめり込んで溺れていくさまが楽しいです。
豪華な世界のなか、マイノリティな存在のアルファ、オメガの生きづらさが描かれており、
特に攻(アルファ)のラウが、自身を『アルファ』を忌むべき存在としてひた隠して生きているのが、他のオメガバース作品と違うところ。
(今まで「オメガバース」をほとんど読んでこなかったので、比較対象が少ないのですが)
感想(ネタバレ注意)
攻も受も芸術系なので多くを語らず、どこか陰りがあるふたり。
それは互いの生育歴が影響しており、攻も受も生まれや育ちに”傷”を負っています。
個人的には受の父親が印象的。
受がまだ子どもの頃、愛した妻を突然喪ってしまい、息子よりも亡き妻への弔いの世界に引きこもってしまった父。
母も父も喪ってしまった息子は、絵の世界に逃げるしかなかった。
それで生み出された受の<疎外>の表現に救われた攻。
非常に細やかに受の懐に忍び込んでいく攻にどうして「後悔攻」のタグがついてるのか不思議でしたが、読み進めるとその理由が判明。
それ以降は攻に罪悪感と後悔、快楽と喜びの相反する感情に堕ちていきます。
受は、いままで「何事もなくただ平穏な日々が過ぎ去る」ことを願っていたけれど、攻と出会ったことで生きる喜びを知り、再び筆をとり創作する力を得ます。
それと同時に予期せぬ変化が水面下で起きていきます。
と、ふたりの間に幸福と罪悪の感情が入り混じっていきます。
RIDIの感想コメントで「なぜ受は攻を一緒に行くことを選んだのか?」を見て、この作品には『償い』と『許し』という理解を求められると感じました。
特に韓国では『恨(ハン)』という概念(=恨み、復讐を果たして『解放される』カタルシス)があるようなので、一見、この受の『解放』がゆるい気がします。
が、新たなコミュニティで出会った人や知識と、創作活動で心理的な『昇華』につながったのだと個人的に考えてます。
と、BL的な内容からずれましたが、本作品はさすがキム·ダビデ先生らしく、がっつり描写が入ってます。1回ごとの描写が長い。
小説ならではの『香り』の表現をふんだんに使っていて、濃厚です。
ふだんは大人しい受が、攻に対しては積極的に誘うところも最高。
余談
余談といいつつ、一番言いたいことなのですが、
キム·ダビデ先生、ミュージカル『ファントム』がお好きですよね!?!?
だって、攻のギャラリー名が「ファントム(幻)」、ロールスロイスの「ゴースト(幽霊)」の車を買い集めたり、
自分を醜い存在だと引きこもりがちな性格とか
君はエリック(ファントムの愛称)か!?
若き才能あふれる年下の想い人……って、まんまクリスティーヌじゃん!?
<Choice of Choices>で大学路・舞台のエピソードがあったり、本作でも芸術関連にかなり造詣が深いとお見受けしまして、
絶対に韓国ミュージカル『ファントム』を観劇されましたよね、先生~~~~!!!!
自分の居場所を求めてさまよい、罪を背負った美しい男が好きでして。
攻のラウが苦しめば苦しむほど『最高だな…』とため息が出るばかり。
『ダイヤモンドダスト』が好きかどうかは、攻 ラウ·ウィクンの情けなくて苦しくてどうしようもない姿が性癖かどうかだと思います。
後悔攻がお好きなかたはおすすめです!
ちょっと演劇っぽいんですよ、攻の存在や言動が。
👇韓国ミュージカル『ファントム』👇
とにかく顔とスタイルと歌声がいい。豪華なお衣装に負けない顔!(大事)
(2023年11月追記)
外伝2が発売されました!!
キム·ダビデ先生はいいよ!
オンニたちに「文学作品」「『キム·ダビデ』というジャンル」と言わしめる先生の作品。
また3作品しか読んでいないですが、他の作品もとても素敵なので、ぜひ酔いしれていただきたいです。