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住宅ローン控除額減少。税制大綱からみる財政のきもち

※この記事はNewsPicksトピックス「ロジカル不動産」で連載された記事を引用しております。最新記事はこちらをご覧ください。

年末冬の恒例行事といえば、もちろんクリスマスと税制大綱の発表ですよね。え、何それって?そうですか。

税制大綱とは、毎年12月10日ごろに、翌年の税制の要綱まとめを発表するイベント。(本承認は4月になります)
特に今年の税制大綱は大きな例年以上に大きな変更が含まれ、ニュースでも多く取り上げていましたね。

住宅購入を検討する際に、とっても大きな存在が払う税金と税控除
取得するのにかかる税金は不動産取得税、そして毎年の固定資産税。あとは購入時の契約書やローン契約時の印紙税など。これらの税金は古くから規定よりも減額されるような減額措置を含んでおり、これからもあまり大きな変化はないでしょう。

もう一方の住宅購入の税控除のメインである「住宅ローン控除」に対するメスが大きく入り、概要が発表されたのが12月10日です。

まず、住宅ローン控除とは簡単にいうと、住宅ローンを使って一定の要件を満たす住宅や収入の場合、はらう税金を減らしてあげるよ!(実質おかねをあげるよ!)という制度。
ちなみに税控除は収入ではないので、50万円のボーナスもらっても税金ひかれて手元には人によっては35万くらいにしかなりませんが、そんなこともないので結構大きい。
住宅ローン購入における大きなメリットの一つでした。

そんな住宅ローン控除ですが、結論からいうと、控除額は小さくなりました。(認定住宅である場合など、細かくありますが、)最大で400万だったものが273万に減っちゃったよ!という形です。

細かくはぜひ自分で調べてくださいですが、計算式としては

~2021年
最大4000万(ローン残高適用最大)×1%×10年 =400万

2022年~
3000万(ローン残高適用最大)×0.7%×13年(延長)=273万

また、省エネ住宅に対する意識も強く、ゼロ・エネルギーハウス・国の省エネ基準適合住宅といった省エネ関連の認定住宅は上記金額より控除を受けられるようにもなりました。

適用は2022年以降に入居を始めた方なので、すでに購入・入居している世帯は減少にはならい予定ですのでご安心を。


なぜ減った?

「逆ザヤ問題」という風にいわれていた問題の解決が主たるところ。

逆ザヤとは、住宅ローンで支払っている金利よりも、もらっている税控除のほうが大きいじゃん!家買ったのにお金増えちゃっている人いるじゃん!不公平じゃない?ということです。

例えば4000万の住宅ローンを、0.6%の年利で借りていると支払いはざっくり年24万円。なのに40万円もらえる(税控除される)ってやりすぎじゃない?これが逆ザヤ問題。

それを解消するという名目で、0.7%(70%の人は0.7%以上の住宅ローンを借りいているらしいです)に控除最大額を下げに行った。

基本的にこういった消費にまつわる税金は、国としては重要な税収であるとともに、それによって国民の消費が冷えて結果的に税収が減ってしまってはもとも子もないです。そしてGDPをいかに持続的に増やすか、というのが国政の大きなミッションであり、住宅の場合は国交省が自分の領域の将来的なGDPを増やしていきたいという思いを持っています。この国交省と財務省のせめぎあい、、の結果が今回の結果となっています。

逆ザヤ問題は税制のバグともいわれていましたが、ちなみになんでこんなバグが起こっちゃってたの?というと、この1%のローン控除が始まったころは、「まさか住宅ローン金利が1%よりも下がるなんて!」という、今の超低金利が原因となっています。

実は住宅ローン控除の歴史は古く、1972年に導入された住宅取得控除までさかのぼります。この時制定された、住宅購入後3年間は取得金額1%分の税金を控除するというものの系譜がいままであっての1%でした。

現在、変動金利であれば世帯によっては0.4%台の金利状態なので、それに合わせて住宅ローン控除も変わる必要があったということです。


累進課税制を改善したい気持ちも見える

住宅ローン控除の財源(税収の減少)が、国税をどれくらい圧迫しているかわかりませんが、ただ、そもそも逆ザヤで何が悪いの?という点も思いますよね。住宅ローン控除は別に、購入者を支援するものであって、支払った金利以上にもらっていけないという話ではない。金利は人によって異なるし。また、住まい給付金やエコポイントなどいろいろ考えたらどうなるの?という細かい話を吹っ飛ばした大味な改修だなぁという印象を持っています。

また、今回控除額がローン残高最大4000万→3000万の1%→0.7%への引き下げ。簡単言えば年間最大40万→21万円。という形ですが、これは所得上位者に対する累進課税の強化という側面もありますね。

0.7%の金利以上で住宅ローンを組んでいる人は全体の70%という話を聞いたことがありますが、地方ほどフラットなどの利用が多いのでそうなる気もします。
また首都圏でこそ戸建て・マンション平均価格おおよそ4000万強ですが、全国では3000万程度が平均です。満額住宅ローン控除を受けられる人はそもそもかなり属性がよい高所得者があることが想像されますので、どちらかというと上の層の控除額を減らしたかったという思惑も見れますね。

日本はヨーロッパの諸国に比べて、累進課税制が弱いという言われています。簡単に言えば、お金持ちからあまり税金を取れてなく、お金持ちじゃない人の課税が大きいということ。これは金額の絶対ではなく、割合の話。

そんな要素も今回の住宅ローン控除の改正から味わうことができる内容でした。


あまり注目されてないけど、地味にうれしい変更点

消費者にとっては改悪だらけじゃねえか、という話ですが、金額だけみればそのとおり。一つだけ、よくなった点というと、中古住宅において住宅ローン控除の適用対象物件が緩和されています。

今まで(~2021年)
・戸建て築20年未満・マンション築25年以内
・もしくは、 「既存住宅売買かし保険を付保すること」・「耐震基準適合証明書の取得」によって条件緩和

2022年から
新耐震(1982年以降建築確認)であればOK

ということで、もう新耐震の物件であれば築38年なんて物件もあるので、ここは大きな変化ですよね。基本的に新耐震であれば、「既存住宅売買かし保険を付保すること」・「耐震基準適合証明書の取得」はみたせることが多いのですが、手続きも面倒で費用も掛かるので、これは購入者にとっては地味にうれしい点ですね。

首都圏ではすでに中古住宅のほうが取引のメインになってきていますし、全国でもますます中古住宅の取引の割合は増えていっています。そういった対応が行えたこれはプラスポイントです。

古い価値観に文句もある

そもそも税控除を受けられるだけですばらしいものですが、文句があるとするならば、基本的に登記簿床面積が50㎡以上じゃないと住宅ローン控除が受けられないという点。(課税対象物件は40㎡から※新築など)

これは50㎡以下は家族で住む家じゃないといっているようなもの。

ライフスタイルの変化によって、DINKSで2人で40㎡の家に住むこともあれば、1人でずっと暮らしていくために家を買う人だっている。

もちろん投資・投機目的の購入にはあたはめるべきではないですが、そもそも住宅ローンを借りて買っている時点で、住宅(自分で住む家)と認めているはず。

50㎡要件も時代の変化に従って、変化していったほしいなと思っています。


結局どうすれば

さて、じゃあまじで家買おうかと思っているんだけどどうすればいいの?という話ですが、もう住宅ローン控除は引き下げられることが決まったので抗えません。買うなら早いほうがいいといっているのも、ひき下げの可能性が高い住宅ローン控除の存在もありましたね。

1つあるなら、前述のように省エネ関連認定住宅への控除額は増えたため、そのような住宅に対するニーズや、供給は増えていくことが予想されます。

住宅というものは、国内GDPに大きな影響力を持っており、それに応じる課税・税控除は税制における大事な論点ゆえ、たびたび変化が起こります。そしてそれは我々の消費に大きな影響を与えるものです。

そう思うと、12月のイベントといえばクリスマスと税制大綱発表。
あながち間違ってない気もしますよね?


それではまた。


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