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蕾を『お包み』状にして守る紫陽花とは?


紫陽花(アジサイ)、これらの開花時期は8月
半ば過ぎの今はとっくのとうに終わっている
ものだが、他品種と開花時期を大きくずらし
咲くものがある。それも蕾の全体がベールで
包み込まれているという、他のアジサイでは
見られない珍しい特徴をもっている。


玉紫陽花(タマアジサイ)


その名の由来となるのは、開花前のツボミが
玉状のベールで、固く包み込んでいるその姿
によるもの。他のアジサイが咲き誇る時期は
頑なに小さな固い玉状のものが小さいままで
その開花時期は他のアジサイと約1ヶ月程の
タイムラグが生じる。


タマアジサイは、その大切な蕾を狙ってくる
外敵から守るためのものとなっており、葉が
変形し苞状態となり『お包み』(オクルミ)
の様に蕾全体を包み込んで守るものとなる。


その外敵は『哺乳類』なのであろうか?


そうではなくて、哺乳類はこれを食さない。


実は紫陽花という植物は全草にはとても強い
猛毒植物で守られた植物となっているもの。
その為に葉や花に虫食いが生じないで美しい
ままの姿が保たれているのは、有毒によって
のものなのであり、一般の庭木としても余り
手が掛からぬ事から植栽率が高いのである。


この有毒成分は、世の中でよく知られる青酸
の毒であり、この青酸配糖体を含んでる為に
人を含め哺乳類がこれを食べた後、体内では
この青酸配糖体と酵素とが反応して遊離した
青酸毒となり、昏睡状態から死亡してしまう
程に危険なものなのである。山中でアジサイ
が生き生きと生えている姿があるのは、鹿や
猪が有毒のアジサイに対し、そっぽを向いて
いるからなのである。


アジサイの毒による事故は時折報道される。
アジサイの季節だからとお弁当箱や料理の中
にこれの葉を入れる行為は、とても危険な事
で稀にだが、事故として報道に流れている。
食事に添えられている飾り葉には、致死症に
至るものを添えないという料理会の当たり前
だった事が、料理人が無知だとこんな事すら
も起こり得る事なのだ。


このアジサイの毒に勝てる生き物とは、青酸毒
を生成させない、生み出させない能力を持った
虫類となり、アジサイの蕾を狙うものを下記に
並べてみた。


紫陽花小灰蝶 (アジサイシジミ)
アジサイに特化したシジミチョウの一種であり
小型の幼虫がアジサイの蕾の内部に潜り込んで
その中を食い荒らす。この為に蕾が開かず花の
姿にはならず、そのまま終わるというもの。


薊馬 (アザミウマ)
非常に小さい為、肉眼では見えにくい虫であり
蕾や花の内部集まり、吸汁することで蕾や花弁
が変色したり、しおれる原因となる虫であるが
真っ白な梔子(クチナシ)の花を良く観察して
みると見つける事が出来るあの極小虫である。


大和綿虫 (オオワタムシ)
アジサイの蕾に取り憑いては、吸汁してダメに
してしまうアリマキの小型版で、これによって
蕾が十分に発育できず、開花が阻害される。


これら虫により、弱い時期の蕾を保護するのが
このタマアジサイの蕾保護の防衛体制であって
蕾を狙う虫による被害を最小限に抑えるものと
なっている。


可愛らしい、この『お包み姿』も世の中の外敵
から自己防衛するためのひとつのカタチなので
ある。





和名 玉紫陽花 (タマアジサイ)
洋名 タマアジサイ (TAMA-AJISAI)
学名 ハイドロンゲア インヴォルクラタ
   (HYDRANGEA INVOLUCRATA)
分類 ミズキ目、アジサイ科、アジサイ属
種類 落葉広葉樹低木
草丈 1〜2m
開花 7〜9月
花色 白 装飾花(萼)
   紫 花
花径 装飾花 20〜30mm
   両性花 2〜5mm
花弁 装飾花 萼片5枚
   両性花 花弁5枚
原産 日本、台湾
言葉 あなたは冷たい
撮影 六甲高山植物園

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