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南禅寺 三門 紅葉編


日本の大盗賊として名を残した石川五右衛門。
『絶景かな絶景かな』は歌舞伎の人気演目の
『楼門五三桐』(サンモンゴサンノキリ)で
石川五右衛門が発する名台詞として今も残る。


その台詞は、この南禅寺の三門の上こそが
本当の舞台であったとされている。実際には
三門から見下ろした豪華絢爛たる満開の桜に
対して石川五右衛門がその感動を表した言葉
とされていて、紅葉ではない。


一般に『山門』と呼ばれるものは、全ての寺
に与えられているものであり、それらは山号
と称されているもの。


この南禅寺にある『三門』とは、本山級である
禅宗寺院にのみ建てる事が赦された巨大門の事。
三門が表す『三』は『空』『無相』『無作』と
いう三つの悟りの境地を指し示したものとなる。
もっと分かり易くすると、仏道修行で悟りへと
至る為に透過しなければならない三つの関門を
表すのが『空』『無相』『無作』の三つであり
『三解脱門』を略した呼称が『三門』となる。


京都での三大三門は、知恩院(チオンイン)、
仁和寺(ニンナジ)、南禅寺(ナンゼンジ)の
三つの三門が、その隆盛を極めた証として現在
も登ることが出来る建造物となって残っている。


この三門は、開創当時のものは、西園寺実兼
によっての寄進より建立されたものであるが
一度火事にて消失してしまっている。それを
藤堂高虎が、大坂夏の陣で倒れた家来の菩提
を弔う為に再建されたものが今も現存する。


この三門の急な階段を縄を使い登っていくと
美しい絶景が眼下に拡がる。これは桜の時期
に改めて訪問を心に誓うものとなった。



さて、絶景もさる事ながら、ここにはとても
面白い装飾が見られるのである。


逆蓮(ギャクレン、サカバス)
これは南禅寺三門の禅宗様式のものであって
親柱に蓮の葉を様式化したものとなっており
これを逆蓮柱と呼ぶものである。その名前の
通りで柱頭部に蓮の花が逆さまとなっている
のがこれの特徴である。




握蓮(ニギリバス)
こちらのものは三門をぐるりと囲んでいる柵、
その架木(ホコギ)を支える為のものであり
こちらも禅宗様式のもの。蓮の葉の形をして
おり、上に載る架木を握りしめている様な形
がとてもユニークなものである。



そもそもが、仏教の流れの中における蓮なる
植物が何故に神聖化されているのかであるが
蓮も睡蓮も、このどちらもが河川など流れの
ある水域に自生する事はなく、このどちらも
汚泥に生える植物である。流れのない澱みに
満ちた泥水は、人間が生きていく上で感じる
苦しみや悲しみなどの『煩悩』を表すもの。
だが、そんな泥水の中の苦行の中を生き抜き
美しき花を咲かせるのが『悟り』となる。


蓮(ハス)の花、つまり、蓮華(レンゲ)に
『蓮華の五徳』(レンゲノゴトク)の教えが
仏教の中にある。その五つを紐解いていく。


一 淤泥不染の徳(オデイフゼンノトク)
  蓮は泥の中で育つものではあるのだが
  その花は泥に染まることなどはなく
  綺麗な花を咲かせるものである

二 一茎一花の徳(イッケイイッカノトク)
  蓮の花は一つの茎に一つの花のみ咲かせる
  これは個々の存在は全て唯一無二の存在と
  考えるもの。よって悔いのない生き方を
  励みなさいの意味をもつ教えである

三 花果同時の徳(カカドウジノトク)
  蓮の花は開花と同時に種ができているの
  教えとなる。蓮の花には中央部には既に
  実が成る為の備えが出来ているものとし
  人もまた、生まれた時にはすでに誰にで
  も仏の心が備わっているものとの教え

四 一花多果の徳(イッカタカノトク)
  蓮の花には、多くの種が実を結ぶもので
  自身の開花(悟り)こそが、他の人達へ
  幸福をもたらすものとなる、の教え。


五 中虚外直の徳(チュウコゲチョクノトク)
  蓮の茎はとても頑丈で強いものである。
  この茎は太いものだが、肉厚なその外殻
  を持ちながら、実はその茎の中には多数
  の空洞によって形成されている。天へと
  顔を向けながらも、自己中心的な欲望や
  独占的な考え方を空にしながら真っ直ぐ
  生きていく事を説いた教えの言葉となる。
  葉に於いても雨の後の水玉はこの中央部に
  備わった目には見えない多孔構造で水は
  茎の中へ落ちていき、常に空気は行き来
  をしている。実の周りもまたそうであり
  実が劣化しない様に新鮮な空気を巡らせ
  安全に保つ機構となるものである。少し
  生物学的な知見の情報も添えてみた。


来年は、蓮についても紹介していく予定である。

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名称 瑞龍山 太平興国南禅禅寺
   ズイリュウザンタイヘイコウコクナンゼンジ
   南禅寺
   ナンゼンジ
所在 〒606-8435
   京都府京都市左京区南禅寺福地町86
山号 瑞龍山 
宗派 臨済宗南禅寺派
寺格 大本山
   京都五山及び鎌倉五山の別格上位
本尊 釈迦如来
創建 正応4年(1291年)
開山 無関普門
開基 亀山法皇
文財 方丈(国宝)
   亀山天皇宸翰禅林寺御祈願文案(国宝)
   三門(重要文化財)
   勅使門(重要文化財)
   絹本著色大明国師像(重要文化財)
   境内(国の史跡)
   方丈庭園(国の名勝)
備考 京都三大三門のひとつ
   水門閣が境内を横切る

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名称 南禅寺 三門(ナンゼンジ サンモン)
   天下龍門(テンカリュウモン)
   五鳳楼(ゴホウロウ)
建設 永仁3年(1295年)西園寺実兼
焼失 文安4年(1447年)火災事故
再建 寛永5年(1628年)藤堂高虎
全高 22m

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京都紅葉編

■ 東福寺 紅葉編 追加掲載予定

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南禅寺編

■ 南禅寺 境内 紅葉編 
■ 南禅寺 三門 紅葉編
■ 南禅寺 水門閣〜疎水公園 紅葉編

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