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美しき花の名前が表す『怖い絵』の秘密



夏場に咲くその花が涼しげな色である事から
瑠璃茉莉 (ルリマツリ)の名称や、青茉莉
(アオマツリ)でも呼ばれている人気の高い
花である。


イソマツ科、ルリマツリ属の多年生植物。


この花の洋名と学名には、恐ろしい歴史的な
背景が潜んでいる事はあまり知られていない。


ケープ プルンバゴ
(CAPE PLUMBAGO)


タイトルとした今回の洋名を紐解いてみると
ケープは、原産地である南アフリカのケープ
地方に由来するものであり、それに続いての
プルンバゴ(PLUMBAGO)は、ラテン語で
『鉛』(ナマリ)を意味するものとなる。


なぜ、『鉛』なのであろうか?


もちろん、この花の見る者に涼感を与えても
くれる優しい青色には鉛色(ナマリイロ)の
要素などない事は、誰にも一目瞭然である。


ここで表された『鉛』とは古い時代に於いて
『鉛毒』を治療する為に、このプルンバゴ科
の植物が有効であるとの事で使われてきた事
に由来し、学名も同じ理由でその名が残る。


『鉛』は、身体にはとても有害な物質であり
この鉛が体内に取り込まれて起こる中毒症状
の事を『鉛毒』(エンドク)と呼ばれるもの。


古い時代にはこの恐ろしい毒が含まれる事を
知らずと、大勢の女性がこれを使っていた為
毒の被害者として苦しめられたものがある。

それは、当時使用されていた『白粉』である。


今の世もそうだが、女性は美しくありたいと
思うもの。それは昔から普遍のものであって
特に肌を白く見せる事は昔から行われてきた
最もポピュラーな女性の化粧のひとつだった。


今の時代は美白の為、使用されるのは安全な
酸化亜鉛、タルク、カオリン、酸化チタン、
などで、これらは人体に有害物質は含まれて
いない上に、UVカットの効果を持つものも
あり、使ったとて悪い影響を及ぼさない。


中世の時代には、鉛をベースとした『鉛白』
(エンパク)、正式名称『炭酸水酸化鉛』が
使用されていたものであり、知らぬが仏では
済まない程の猛毒物質であり、美白を化粧の
基礎と考える当時の高貴な位にいる女性達は
こぞってこれを顔に塗りたくったのである。
もちろん、厚く塗れば厚く塗っただけ色白に
仕上がる為、厚塗りを競い合う様にして毒を
顔に塗っていた事になる。


直接に肌から鉛の毒が浸透していく事により
神経系や消化器系、腎臓、血液などに深刻な
健康被害を受けることとなった。これは日本
に於いても江戸時代の白粉には鉛白が使用の
メインとされていた為、当時の日本人女性も
鉛中毒に苦しんだこととなる。


タイトルにもした通り『怖い絵』という本は
2007年に出版されて以来、ベストセラー
となった中野京子氏による著書のシリーズで
私の本棚にも並んでいる。


実際にそれら絵画展も全国を巡り、私も足を
運んだ一人であるが、その当時の絵画の中の
女性の肌の色の白さは全て、この鉛白による
ものだったのだなと思うとゾッとする。


エリザベス1世の肌は鉛白が厚く塗られた上、
その唇を飾った紅色もまた恐ろしい『水銀』
を原材料に使ってたものなのが分かっている。
彼女は鉛と水銀の毒の両方から、精神障害や
身体機能が破壊されていく事より記憶障害も
出た上、肌はボロボロに崩れて、髪は次々と
抜けていったのである。その薄毛を隠す為に
頭に乗せた真っ赤なウィッグもまた、水銀を
使用して作られた猛毒の赤であった。


時代背景を更に未来へとスライドさせてみる。


昔の映画で『鉛弾を喰らわせてやる』などの
セリフを西部劇などで良く耳にしたものだが
弾丸に使用されてきたのも実際に鉛弾だった
ものであり、そこには色んな理由がある。


鉛は、重金属の中でも柔らかく加工がし易い
特性を持ち、低い温度で加工できる特性から
大量生産にも向いていたもの。適度に重い為
弾として使う上で飛距離を確保しながら目標
に対して充分なダメージを与える事が出来、
その柔らかさから銃へのストレスも少なくて
コストも安く抑えられるメリットもあった。


また、この弾が人体に入ると、その衝撃より
弾は変形して体内への損傷範囲を大幅に拡大
できるメリットもあった。


戦争の弾に鉛が使われたのは、鉛の恐ろしさ
を知った上の事であり、鉛自体が猛毒の効果
を持っていた事や、鉛中毒を引き起こす事も
知った上での戦争に使用されたものである。


撃たれた者は神経系のダメージと、腎臓障害
を引き起こし、人格変化、頭痛、感覚消失、
脱力感や無力感、口中の金属味、歩行障害、
胃腸障害、貧血を引き起こされるものであり
戦う相手からすれば、敵兵を一人でも多くを
戦闘不能に陥れる為に鉛が役立ったもの。


戦争とはいかに非道な行為かの一端をこれら
弾丸に使われた鉛から知ることが出来る。


近代になり鉛の危険性が認識され、法律での
規制が進んだことで、鉛中毒の発生は大幅に
減少した。日本でも輸入されるものについて
今ではオモチャや食器などにはこの鉛含有量
の管理がなされており、基準超えのもの等は
日本国内に持ち込めないものである。


それでも最近の海外からの土鍋(ドナべ)に
基準値を大幅に超える鉛が含まれていた事件
もある。昔の陶磁器の釉薬には鉛を使用した
ものが多い事から、クラシックなそんな食器
に喜んで食材や飲物を入れて飲食して仕舞う
と、知らずうちに鉛毒を摂り込む事にもなり
かねないので注意が必要である。ティカップ
などの、古き良き物は、古き悪き物なのかも
知れないのである。


この鉛毒は、小さな幼児や子供にとり重度の
影響を及ぼすことが顕著とされている。その
症例は、脳障害や発育障害をもたらす危険な
ものとしても知られている。





この植物そのものの解説より、鉛の恐ろしさ
の解説が多くを占めてしまった様である。


さて、そんな鉛毒の治療に使われてきたのが
洋名と学名に『鉛』が含まれていたこの植物
『プルンバゴ』な訳であるが、現代の薬用の
解析により、全くそんな治療効果がないもの
だったのが分かっている。長い前振りの後に
残されたこの脱力させるこの結果。

だが、この植物には何の落ち度もない。
人間が勝手に効能を騒ぎ立てたのが間違いで
あっただけなのだから。


今回の記事によって、私が言いたいこととは
『何事も疑ってかかれ』なのである。

気が向いたら、ナポレオンの死の真相の謎も
ここで記事にしようかと思う。


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和名 瑠璃茉莉 (ルリマツリ)
   青茉莉 (アオマツリ)
洋名 ケープ プルンバゴ
   (CAPE PLUMBAGO)
学名 プランバゴ アウリキュラタ
   (PLUMBAGO AURICULATA)
分類 ナデシコ目、イソマツ科、
   ルリマツリ属
種類 多年生植物
草丈 60〜150cm
開花 夏〜冬
花色 空色
花径 30mm
原産 南アフリカ
言葉 いつも明るい
   密かな情熱
   同情
   憂鬱
撮影 豊島公園の近所

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ルリマツリ
瑠璃茉莉
アオマツリ
青茉莉
ケーププランバゴ
CAPEPLUMBAGO
プランバゴアウリキュラタ
PLUMBAGOAURICULATA

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ELIZABETH  I

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『怖い絵』『怖い絵展』 中野京子

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BULLET

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和名 瑠璃茉莉 (ルリマツリ)
   青茉莉 (アオマツリ)
洋名 ケープ プルンバゴ
   (CAPE PLUMBAGO)
学名 プランバゴ アウリキュラタ
   (PLUMBAGO AURICULATA)
分類 ナデシコ目、イソマツ科、
   ルリマツリ属
種類 多年生植物
草丈 60〜150cm
開花 夏〜冬
花色 空色
花径 30mm
原産 南アフリカ
言葉 いつも明るい
   密かな情熱
   同情
   憂鬱
撮影 豊島公園周辺

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