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長実雛芥子


長実雛芥子 (ナガミヒナゲシ)


キンポウゲ目、ケシ科、ケシ属の植物となる


毎年、春先になると元気一杯にオレンジ色の
鮮やかな花を健気にも咲かせてくれる植物。


一年生植物なので、根は残さず一年前の種で
新たに芽吹かせ、毎年、花を咲かせる植物。


耐寒性もー12℃、全日照で太陽が燦々と
照りつける環境にもへこたれず、春の嵐にも
キッチリと耐えてみせる。


コンクリートの割れ目などでさえも種さえが
入り込んでいれば毎年、同じ場所にでも花を
咲かせてくれるので、私には近所のこの植物
の生息マップは頭の中に入っている。彼らは
新参の侵略型植物ですらも生えるのを諦めて
逃げ出す様な劣悪で過酷で痩せ細った荒地に
でもババンと生えるので勢力図は変わらない。


この植物の逞しさを見る度に私は宮沢賢治氏
のあの詩を思い出してしまう。この植物用に
内容を少しアレンジしてみた。


雨ニモマケズ
風ニモマケズ
カンカン照ノ太陽ニモマケズ
頑丈スギルナト皆カラ言ワレ
欲ハアリ
決シテ怯マズ
イツモ静カニ咲イテヰル
一日ニホンノ少シノ水ト
土カラ分ケラレタ養分トデ
生キ抜イテイク
東ニ割レタコンクリート有レバ
行ッテココモ私ノ土地ダト生エテ
西ニ割レタアスファルト有レバ
行ッテココニモイケルジャント生エ
南ニ死ニソウナ植物ガ有レバ
行ッテ御愁傷様トソノ土地ヲ頂ク
北ニ喧嘩ヲシテイル植物ガアレバ
ドサクサニ紛レテソノ土地ヲモ奪ウ
皆ニデクノ棒ト呼バレ
褒メラレモセズ
苦ニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハ既ニナッテイル



植物は気ままにそこに生えているのではない。
必死で生きてて弱ければ来年そこに姿はない。
だから、彼らの元気な姿を見る度に誇らしい。





こんな季節外れの、オレンジの花を載せた訳
でなくて、本題はここからなのである。


次の写真には、花の時期を既に終えてしまい
花びらは散り、どこかの惑星のヘンテコリン
星人がニョコニョコと立った姿にも見える。





私はヘンテコリン星人が大好きなのでこれを
眺めては風に揺られて右へ、左へと傾く様を
楽しんでニヤニヤと笑みが浮かんでしまう。


このヘンテコリン星人の頭の部分をよく見て
みよう。頭の部分にチョコンと飛び出してる
のが『柱頭』といわれる部位であり、その下
に結実した種がワンサカと詰まる『子房』と
いわれる器官で構成されているのだが、この
子房はその名前の通り植物の子供である種が
中にギッシリと詰まっている部分となる。


この『柱頭』は結実したものがちゃんと発芽
出来る時期になると、その突起部か上方へと
迫り上がって、開口窓が出現している。風に
吹かれて植物全体が傾く度、種が零れ落ちる
仕組みとなっている。調味料の容器の頭部分
をパチンと引っ張り出して、振り掛けに使う
容器のキャップ部分そのままの構造を成した
天然の構造物なのである。風でこれが左右に
傾くたびにポロポロと種が零れ落ちる。


このひとつの子房の中に、種はどの位入って
いるのかというと大きく育ったものはこの中
に種が約1000〜2000個も入っている。
この植物は何本もの花を咲かせる訳で一株で
10万〜20万もの種をばら撒く計算である。


この種は手のひらに出すと比重が軽い上に
ほぼ球形でよく転がる。これが範囲拡大の為
のこの植物の種の特化した才能となっている。
そしてもひとつ発芽率が非常に高いのである。
その上、芽が出ると周囲にアレロパシー物質
をばら撒く。はこれは他の植物の育成を抑制
する物質となっている。


もの凄く大量の種をばら撒く。
種は丸く軽いために広範囲に転がる。
発芽率の高い効率よい種である。
発芽すると特定物質より他の植物排除をする。

宮沢賢治氏の替歌の詩は返上して貰おうか…


とは言え、風にこれがユラユラしている姿を
見てニヤニヤするのは、目では見る事はほぼ
出来ないながらも、沢山の種がこの頭部から
降り注がれている場面に見入っての事である。


その辺の雑草と言われる植物にもいくつもの戦略
が備わっているのである。



和名 長実雛芥子 (ナガミヒナゲシ)
洋名 フィールド ポピー
   (FIELD POPPY)
   ロングヘッド ポピー
   (LONGHEAD POPPY)
学名 パパーウェル デュビアム
   (PAPAVER DUBIUM)
分類 キンポウゲ目、ケシ科、ケシ属
種類 一年生草本
草丈 20〜60cm
開花 4〜5月
花色 橙
原産 ヨーロッパ地中海沿岸部
言葉 なぐさめ
   癒し
   平静
撮影 大阪市淀川区周辺

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#ロングヘッドポピー
#LONGHEADPOPPY
#パパーウェルデュビアム
#PAPAVERDUBIUM

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植物の構造を研究して、それを写真に残してきた
植物科学者にして、写真家がおられた。


カール ブロスフェルド (KARL BLOSSFELDT)


彼もまた、植物のその造形を愛してきたひとり。
植物の秘密を知りたいという探究心がその写真の
中に溢れかえっている。彼の作品の幾つかは今も
インテリアなどに活かされている。

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