見出し画像

たいのかんづめ

たぶん、これはライブで曲のサビを抜いたかわりに戯れ合いセッションを追加した感じの文章だ。
ようわかりませんね。
不登校新聞の6/1号に私の文章が載った。
500字前後という制限があったので、そこに納められそうに無かったところをつらつらと。
掲載されたものがおいしいところだけ抜き取ったテレビ収録用の1分半なら、これはどうせ好きなやつしか見ないだろ、というもの。


 4月中旬、母からリンクが送られてきた。そごう横浜で開催されるさくらももこ展のものだった。
 不登校初期の小学校3年生〜6年生、よく彼女のエッセイを読んでいた。人生で一番本を読んでいたあのころ、何度も読み返した作家の一人である。当時はだいたい親が買っていた本を読んでいて、自分でも買ったのはこの人とシャーロックホームズくらい。たぶん、学校のイベントでもらった図書カードは『たいのおかしら』に使った。
 4月には母の誕生日がある。私は今年で27歳、母は54歳になるから、なんだかメモリアルな日だ。もともと別日に行くつもりだったようだが、予定を合わせてもらうことになった。お昼にご飯食べて、ちょこっと散歩して、さくらももこ展に向かうルート。
 実は最初からほんのり期待していたんじゃないかと思わんでもないけれど。良い歳をして、全くかわいい母である。たぶんこの感じは私にもすごく受け継がれている。私ならリンクを送った上で一緒に行かない?って聞いちゃうけど。アラサーおじさんも捨てたんじゃない。おじさんもまだかわいい枠で良いよな。
 当日、待ち合わせた母は髪が短くなっていた。ショートの時期もあったけど、その時期よりもう少しショート。でもベリーショートではないと思う。たぶんこちらが先に認識していて、少し経ったら雑踏越しに目が合った。
 ちょこちょこっと話しながらご飯を探し求めていると、なんだか母がやや不満そう。
 曰く「昨日姉と『母と認識できなかったらどうしよう』とかふざけてたのにすぐ見つかって『髪切ったねー』って言われちゃった」とのこと。さすがにわかるし、あなた前々からヘアドネーションしたくて伸ばしてると言ってたじゃないか。そら最初に聞くよ。
 ぐるぐる歩いて、お昼は良さげなシーフードレストランへ。お店の好みも食の好みもよく似ている。特別な日に少しだけ綺麗なお店で少しだけ特別なものを食べたいと思う感覚、これも教育の結果だ。
 魚介類のトマトクリームパスタとローストポークをシェアする。パスタはラスパドゥーラチーズ添え。ラスパドゥーラってなんなんでしょうか。ちょっと調べると、若いチーズをうすーく削ったものらしい。意味は「「硬いもの(dura)を削り取る(raspa)」という意味。」だとか。
https://isetandoor.mistore.jp/ShouhinShousai.ss7-4724_2108.htm

順当に美味しいぞ。やるな若造。そしてローストポークが存外おいしい。お肉はパスタより当たり外れが大きいと思うのだけど、これはおいしい。すごくおいしい。思わず目を見合わせてしまうくらい。やっぱり好みが似ている。
 デザートも食べたかったけど夕方から貸切とのこと。とても間に合うと思えず断念した。ご飯をほぼ食べ切った頃、何本か文章を見せた。メインはこの日の1週間前、不登校新聞の取材をもとに書いた感想文。取材の中身に少し踏み入れていて、あんまり外には出せない。けれどもたぶん今まで書いた中で一番好き文章。小学生の時は読書感想文が書けなかったのに、とっても素敵な感想文を書けるようになった。そして、母は感想文の趣旨にあっている人だと思う。だから、見ておいてほしい人の一人だった。
 奥のフロアにあるピアノとか、ウエイターの後頭部が少しぴよぴよしているのを眺めて待つ。貸切りってたぶん結婚式の二次会なんだろう。引き出物っぽい紙袋をたくさん並べて、スクリーンも下ろし始めている。見知らぬ主催者さん、どういうプランかわからんがローストポークを入れるのをおすすめするよ。あれはおいしい。
 思ったより待った後スマホが返される。反応は上々。ただ「あんなに書けなかったのに」が同居しているせいで、文章に対する反応が読み取りきれない。まあよしとしよう。
 そんなこんなで、ローズガーデンを歩いたりガンダムをチラ見したり、間違えて高島屋に行ったりしながら不登校新聞の文章につながる。16時くらいに入って19時近くに出てきた。どんどん追い抜かれた。母にも置いて行かれた。彼女は私が終わるのを待つために1.5周くらいしてた。それでもなお私の方が遅かった。5月末で横浜での展示は終わり、静岡に行ってしまった。けどガチ地元で無いにしろ、近いところで観るのも素敵だと思う。自分かさくらももこに向き合う気があるなら、とても実りがあるんじゃないか。
 で私に実りがあったその後、実家で食べたかつおも美味しかった。さらに1週間くらい前、お土産の冷凍かつおが実家にあると言われて「それはさとがえりしたくなると」と送ったのに無視された経緯も聞いた。帰ってくるという意味なのか、ただのボケなのかわからなかったらしい。じゃあ聞けよと思うが、これたぶんおじさんが無視される理由なんだろう。自分だけしかわからないボケを、自分のノリだけでかましていくやつ。なんなら父がやってて私がスルーしたこともある。何回かある。いや何回もある。齢27にしてその領域に足を踏み入れてしまった。ちょっと悲しい。
 でも今感じること、言ったり動いたりしてしまいたくなったことをぎゅっと詰め込んで残したい。残したいし、わかってくれる人に見つけてほしい。わかんなくても笑ってくれたらまあちょっと嬉しい。おじさんのノリだろうがなんだろうが、たぶんそもそも私の感覚わかる人少ないし。それなら形にしてみて、わかる人を探した方がきっとおもしろい。私にその感覚が芽生えた時と、完成したこの日には「さくらももこ」がいるみたい。


ラスパドゥーラくん順当においしい

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?