No193 PCの動作が遅い!SSDやネットワークが原因?

前回から、PC(パソコン)が遅くなる理由の解説をしています。

今回もいくつかのケース別に遅くなる理由と対策について解説を
します。


1. 遅くなる理由とは?(再掲)

PC(パソコン)というのは複雑な機器ですので、遅くなる理由は
いろいろ考えられますが、ここでは筆者の体験ベースでよくあると
思うものをピックアップします。

1)特定のプログラムの動作によるもの
2)メモリ不足によるもの
3)SSDによるもの
4)ネットワークの帯域不足によるもの
5)マルウェアによるもの
6)故障によるもの

全部で6つです。
筆者の体験ベースですが、発生頻度は1が最も高く6が低いです。
実際に事象が起きた時にはこの順で確認することをオススメします。

1と2は前回解説しましたので、今回は3と4について解説します。


2. SSDによるもの

パソコン(PC)が急に固まり、マウスすら動かなくなることが
あります。
たいていの場合、数秒後には何ごともなかったかのように動くよう
になるので実害はないのですが、故障の前兆のようで不気味ですし、
数秒とはいえ急に止まってしまうのは困ります。

この現象は特にSSDという部品を使っている場合によく発生する
ため、俗にSSDのプチフリ(プチ=フリーズの略)と呼ばれます。

これが発生する理由を説明する前にSSDとハードディスクについて
簡単に説明をしておきます。

SSDは Solid State Driveの略で、大量のデータを保存できる機器
の一つです。
元々はかなり高価な部品でしたので、安いパソコン(PC)では
ハードディスクと呼ばれる機器が使われてきました。
ですが、ここ数年はかなり価格が下がってきており、2021年時点
ではちょっと高い目の事務用PCにも普通に使われるようになって
きています。

SSDというのは前回解説したフラッシュメモリを使った機器で、
ハードディスクと異なり動く部品がありませんので故障の心配が
ほぼありません。
また、ハードディスクに比べてフラッシュメモリの読み書きは非常
に速いため、全体の動作もキビキビとしたものになります。

一方のハードディスクというのは、名前の通り堅い円盤状のディ
スクに磁性体を塗ったものです。そのディスクを回転させ、磁性
体を磁化させることで情報を記録します。

と書くと簡単そうですが、直経8cm程度の小さなディスクを1秒に
100回転させつつ、1ミクロン以下の巾に情報を書き込むという
恐ろしく精密でデリケートな機器です。
そのため、PCの中でも特に衝撃に弱く故障しやすい部品と言え
ます。

こんなハードディスクとSSDの最大の差は価格でした。
ですが、2021年現在は価格も安くなり、特にノートPCでは安価な
ものでもよく見かけるようになりました。

ところが、このSSDには原理的に避けられない課題があります。
大量のデータを連続して書き込むと数秒程度のフリーズ(停止)が
発生しやすいのです。

上で「フラッシュメモリの読み書きは非常に早い」と書いておき
ながらなんですが、SSDは大量の連続書き込みが苦手です。

ポイントは「大量」かつ「連続」です。

フラッシュメモリというのはメモリの中では特に書き込みが遅い
という特徴があります。
その遅さをカバーするため、書き込みの依頼があってもある程度
は溜め、まとめ書きすることで一見速く書き込みできるかのよう
に見せかけています。

通常はこのやりかたで良いのですが、あまりに大量の書き込み依頼
が来ると、まとめ書き方式が追い付かなくなることがあります。
その場合、SSDが溜まった分の書き込みが終わるまでPC自体が
全く動けなくなるのです。

これが前述のSSDのプチフリの原因なのですが、SSDの仕組み上この
現象は避けられません。

なお、上記の大量の連続書き込み以外でもプチフリが発生する場合
があります。SSDの節電機能とWindowsの節電機能が互いに節電を
しようと頑張りすぎ、SSDの電源のON/OFFが繰り返されてまともに
動けなくなるパターンです。

さて、問題はこの対策です。
ここまでの解説でわかるように原理上の制約ですので、事実上対策
が取れません。
逆に、大量のデータ書き込みを行っている時は短時間のフリーズが
起きても驚かなくて良い、とお考えください。


3. ネットワークの帯域不足によるもの

パソコン(PC)の動作が遅いからといって、PC側に問題がある
とは限りません。

その代表例がここで取り上げるネットワークの帯域不足です。

大企業が持つような専用線は別ですが、一般的な光回線はコストを
抑えるためベストエフォート型となっています。これは「できる
だけ速度出せるようにがんばるけど、遅くても許してね」という
方式(契約)のことです。

こんなルールになっているのはネットワークの使用量を正確に予測
することがものすごく難しいためです。
そのため、ネットワーク事業者はある程度の利用を見込して大きな
容量の回線を用意し複数の利用者で共有させることで、コストを
抑えています。

もっとも、このルールがあるからネットワークの事業者は過分な
設備投資をせずに済み、利用者は安価にネットワークを利用できる
のですから、意外にWin-Winなルールです。

ところが、このルールが逆に原因に気付きにくい原因となる場合が
あります。

インターネットで調べものをしている時に動作が遅いだとか、同じ
事務所内の全てのPCが同様に動作が遅いといった事象であれば、
ネットワークが原因じゃないか?と疑いもするでしょう。

ですが、特定の曜日や時間帯にだけ動作が遅いといった場合はどう
でしょうか?

これもネットワークの遅さが原因で発生することがあるのです。

上記の通り、安価な光回線ではネットワークを多人数で共有して
いるわけですから、一部の利用者が特定のタイミングで大量データ
を送受信することもありえます。

回線は皆での共有ですから誰かがたくさん使えば他の人が使える量
は減ってしまう、つまり遅くなるわけです。
ただ、この現象は常に起きるわけではない点がやっかいです。
他の人の使い方次第で時々遅くなるのですから、いくら組織内の
機器を調べても原因がわかるはずがありません。

それ以外にもネットワークが遅いことで発生する課題として、特定
のアプリの起動や動作が遅くなる場合があるのです。

例えば、起動時にインターネットからデータをダウンロードする
アプリ、使用権(ライセンス)を確認するアプリ、などは起動時に
ネットワーク接続を行います。
ネットワークが遅ければ、それに引っぱられてアプリの起動も遅く
なる場合があるのです。

ですが、対策は非常に難しいです。
原因が他の利用者にある場合、ネットワーク業者にクレームを
言っても「ベストエフォートですから」で済まされますし、他の
業者に変更したとしても、最終的なネットワーク回線が同じなら
結局何も変わっていないのと同じだからです。


4. まとめ

今回は、PCが遅いと感じる理由として、SSDのプチフリとネット
ワーク帯域不足のケースを解説しました。

プチフリについては、それほど頻度が高くないですし、SSDの原理
上避けられない部分があり、完全な対処は難しいでしょう。

また、ネットワークの帯域不足については原因が帯域不足と気付き
にくく、さらに対応方法も難しいのが現実です。

今回は解決が難しい話が多いのですが、それでも「こういった可能
性がある」ということを覚えておいていただければ、と思います。

次回は今回の続きになりますが、マルウェアによる障害、機器の
故障のケースについて解説を行います。

次回もお楽しみに。

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