見出し画像

IPアドレスの不思議(353号)

ここしばらく、情報漏洩やそれを防ぐ方法といったヒトにフォーカスしたお話が続きましたので、今回はネットワーク技術のお話をします。

インターネットというネットワークではIP(Internet Protocol:インターネット向け通信手順)に従って通信を行います。
インターネットにつながるコンピュータ(パソコン、スマホ、タブレット、ネットワーク機器など)には必ず、IPアドレスと呼ばれる番号が付けられます。

ですが、この番号をどうやって決めるの?番号重複することはないの?そもそも、番号って何番まで使えるの?など疑問がたくさん出てきます。

今回はこのあたりをお話しします。

IPアドレスって何よ?

上述の通り、インターネットで通信を行うには相手を特定するナニかが要ります。

インターネットに接続している端末(パソコンやスマホやタブレットなど)にはそれぞれに違った番号を付与しています。

この番号のことをIPアドレスと呼びます。

IPアドレスの付け方には二つの方式(バージョン)があります。
1980年代生まれの古いのはバージョン4と言い、IPv4(アイピーブイフォー/アイピーブイよん)と呼ばれます。
1990年代生まれ(運用は2000年から)の新しいのはバージョン6で、IPv6(アイピーブイシックス/アイピーブイろく)と呼ばれます。

IPv4とIPv6の最大の違いは、付与できる番号の大きさ(=接続できる端末の数)です。
IPv4は42億台くらいが上限です。
IPv6はその4乗(42億×42億×42億×42億)台ものコンピュータが接続できます。

IPv4でも十分そうに思うかもしれませんが、全世界の人口(80億人超)よりずっと小さな値で、IPv4では全員がスマホを持てない計算です。

一方で、IPv6では42億×42億×42億×42億台=3,400,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000台ものコンピュータ(やスマホやタブレット)が接続できます。

上述の通り、IPv4が近い将来に足りなくなることは1990年の時点でも明白でした。
そのため、1990年代にはIPv6が規定され、無限に近いIPアドレスが振り出せるように改訂されたのです。

2024年現在もこの二種類は混在して利用されています。
ですが、新しいサービスではIPv4アドレスが取得できず、IPv6だけでサービス提供している場合もあります。
IPv6を考案した人々はIPv4とIPv6が混在しても問題ないように設計をしましたので、現状で大きな混乱は起きていません。

さて、今回は古いIPv4にフォーカスをあててお話します。

IPアドレスなんて見たことないけど?

見たことがないのは当然で、IPアドレスはコンピュータ内部だけで使うものだからです。
実際には、インターネット通信を行う時には必ずIPアドレスが使われています。

皆さんがインターネットブラウザ(chromeやfirefox、safariなどのインターネット上のサイト閲覧を行うアプリ)を使う時には 次のようなURLというのを使いますよね。
 https://www.google.com/

そのURLに書かれたコンピュータの名前(上の例ではwww.google.com)からIPアドレスを調べます。(インターネット上にはDNSと呼ばれる機構があります)
実際にGoogleに依頼する時には、ここで調べたIPアドレスにリクエストを送るのです。

筆者がDNSでwww.google.co.jpを調べてみると、その番号は 172.217.25.163 だ、と出てきました。

この172.217.25.163 はGoogleが保有するIPアドレス(の一部)です。
さて、以下のようなURLでアクセスしてみてください。
ちゃんとGoogleの画面が出てきますよね。
 http://172.217.25.163/

ちなみに、Googleのように大勢がアクセスするサイトでは、何百台、何千台というサービス提供用サーバを用意しています。IPアドレスはサーバ毎に必要ですので、上記の172.217.25.163はそのうちの一つに過ぎません。

IPアドレスって一つの数字じゃないの?

上で「IPアドレスは番号だ」と書きながら、172.217.25.163なんて小数点が3つも付いたよくわからない値です。

ですが、最初に言ったIPアドレスが数値というのは間違いではありません。

桁数が多くて(10ケタ程度)読みづらいので、4つの数値に分かち書きをしているだけです。

上記の172.217.25.163 を1つの10進数に直すと、2899909027 という値になります。
この計算は、(((172×256)+217)*256)+25)*256+163)です。
この計算過程に興味のある方は後述のバッックナンバーをご覧ください。

実際、この値を使ってもちゃんとGoogleの画面が出てきます。
 http://2899909027/

IPアドレスというのが一つの数示であることの証左と言えるでしょう。

このあたりのIPアドレスの表記方法について詳しく知りたい方は以下のバックナンバーをご覧ください
 No211 素朴な疑問:IPアドレスってナニ?(2021年6月配信)
 https://note.com/egao_it/n/n7b33490bc619

プライベートアドレス

上で、IPv4で提供できるIPアドレスは世界人口数より少ないからIPv6が作られたと書きました。

にも関わらず、現状でも多くのサービスでIPv4が使われています。
既に世界中の多くの国でインターネットが使われているにも関わらず、どうしてIPv4が使われ続けているのでしょうか?

どうやってそんな魔法のような仕組みが実現できるのでしょうか?

実は個人利用のPCやスマホ、また社内で使っているパソコンのほとんどはプライベートアドレスと呼ばれる特殊なIPアドレスが使われています。

ここでは操作方法は書きませんが、お使いのパソコンのIPアドレスを確認しますと、たいがい、192.168.xxx.xxxや、10.xxx.xxx.xxx になっていると思います。

これはプライベートアドレスと言って、その組織内(もしくは家庭内)だけで使えるア
ドレスで、直接はインターネットアクセスに出ていけないルールで、その代わり、その範囲内なら、好きな番号を使ってもいい(ヨソの組織とダブっても問題ない)ことになっています。

つまり、IPv4では42億個くらいしかIPアドレスはないのですが、その一部はたくさんの組織でダブりまくってもOKなルールになっているのです。

プライベートアドレスは電話番号の内線みたいなもの、と言えます。
内線番号は各社で好きに番号を付けられますが、その代わり外線からかける時には使えません。

プライベートアドレスも同様で、内部から電話をする時には代表番号からかかったように見えますが、実際には自席からかけることができます。
逆にお客さんから電話をもらう時には「内線○○番の△△さんをお願いします」と呼び出してもらわなければなりません。

プライベートアドレスはこれと同じような役割を果たします。

DHCP

プライベートアドレスを使うと社内で自由に番号を振ることができます。

内線電話では、誰がどの電話番号かわかるようにしておき、内線番号一覧を総務部門が定期的にアップデートしたりします。

プライベートアドレスも、どの番号を誰が使っているかわかるように管理することができるのですが、プライベートアドレスを意識的に使う場面はほとんどありません。

だって、誰かのパソコンにメッセージを送りたければ、メールを送るなり、内線電話するなり、チャットメッセージを送るなりすればいいわけです。
誰がどのプライベートアドレスを使っているかを知ってもメリットがほとんどありません。

いくら自由に使えるプライベートアドレスでも、組織内でダブりが起きると通信先のコンピュータが困ります。だって、どっちのコンピュータと通信すれば良いかわからなくなりますから。
これは、内線番号がダブったら困るのと同じです。

いかにプライベートアドレスといえど組織内でのダブりが生じない工夫は必要なのです。
そんなの人手で管理するのは大変です。
だったら、機械にやらせりゃエエやんか、というわけでDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)というプロトコル(通信手順)の登場です。

このDHCPというのは、予め割り振っていいプライベートアドレスの塊をストックとして持たせ、各パソコンやタブレットから「IPアドレスくれ!」とリクエストがあれば、手持ちのストックから1つを与えます。

つまり、プライベートアドレスをダブらないように振り分けてくれるわけです。

このDHCP機能は家庭用ルータ(バッファローやアイオー機器などから販売されてちるもの)にも標準的な機構として搭載されています。

これがあるから、家庭内で複数の機器でインターネットを楽しめるわけです。

多くの企業の場合でもDHCPは標準的な機構として利用されています。

まとめ

IPアドレスというのははIP(Internet Protocol:インターネット用通信手順)で使われる機器の識別番号のことです。

識別番号なので、本来は1つの値なのですが、習慣的に192.168.0.1 のように4つの数字に分かち書きすることになっています。

IPアドレスの付け方にはバージョン4とバージョン6の二種類があります。
現状はまだまだIPv4も多く使われていますが、近年は除々にIPv6が使えるシーンが増えてきており、将来的にはバージョン6に統一されることでしょう。

ただ、IPv4アドレスでは42億個くらいしかIPアドレスの振り出しができません。
これは世界人口よりもずっと少ない数字で、このままでは全世界の人がスマホを持つことすらできません。

これはマズいということでIPv6が開発されました。
とはいえ、新たなIPアドレスの必要量に応じてIPv6への移行が進められるとは限りません。
そのため、一時的な逃げの対策としてプライベートアドレスという方式が考案されました。この仕組みのおかげで、IPアドレスの決定的な不足には陥らずに済んだのです。

今回はIPアドレスについて解説をしました。
次回もお楽しみに。

(本稿は 2024年4月に作成しました)

このNoteは筆者が主宰するメルマガ「がんばりすぎないセキュリティ」からの転載です。
誰もが気になるセキュリティに関連するトピックを毎週月曜日の早朝に配信しています。
無料ですので、是非ご登録ください。
h行ttps://www.mag2.com/m/0001678731.html
また、公式サイトでも最新版を公開していますので、そちらもどうぞ。

https://www.egao-it.com/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?