No192 PCの動作が遅い!その原因と対策とは?

皆さんは日常的にPC(パソコン)を使っていて、やたらと動きが
遅くなったり、勝手に再起動された経験はありませんか?

古い機種が新しい機種より遅いのは当然としても、以前より明らか
に遅い、一時的に(数秒から数十秒)止まる、PCが勝手に再起動
される、といったことが起きると「故障かな?」「マルウェア
(いわゆるウイルス。詳しくは文末参照)ではないか?」などと
不安に思うものです。

今回は、こういったケースが発生する理由と対策について解説を
します。

余談:
 PCの古さの基準は人によりまちまちですが、筆者の場合は
 おおむね5年経つと古いPCだなと感じます。
  3年使った → まだまだ使えるPC
  5年使った → 多少古いPC
  7年使った → かなり古いPC
  10年以上  → ものすごく古いPC


1. PCの動作が遅いのとセキュリティって関係あるの?

PC(パソコン)の動作が遅いのとセキュリティは関係ないもの
とお考えかもしれませんが、そんなことはありません。

情報セキュリティ対策の三要素と呼ばれる考え方があります。
 1)機密性:大事な情報を盗まれない
 2)完全性:大事な情報を改竄(かいざん)されない
 3)可用性:大事な情報をいつでも使える状態にする

PCの動作が遅かったり動かないのは、可用性が失なわれた状態
ですので、決して情報セキュリティ対策と無関係ではないのです。

実際、PCが使えなくなって業務が続けられなるのはもちろん
ですし、あまりに遅いためにスクリーンセーバを無効にしたり、
PCを開いたまま席を外すといった、事故を招く習慣がクセに
なりかねません。

その面でも適度に快適なPC環境を整備しておくことは大切です。


2. 遅くなる理由とは?

PC(パソコン)というのは複雑な機器ですので、遅くなる理由は
いろいろ考えられますが、ここでは筆者の体験ベースでよくあると
思うものをピックアップします。

1)特定のプログラムの動作によるもの
2)メモリ不足によるもの
3)SSDによるもの
4)ネットワークの帯域不足によるもの
5)マルウェアによるもの
6)故障によるもの

全部で6つです。
筆者の体験ベースですが、発生頻度は1が最も高く6が低いです。
実際に事象が起きた時にはこの順で確認することをオススメします。

今回はこのうち、1と2についての確認方法と対処方法を述べます。


3. 特定のプログラムの動作によるもの

何かPC(パソコン)の動きが遅いな、と感じた時に一番ありがち
なのは、何らかのアプリの動作によるものです。

どんなアプリがPCの動作を遅くするのでしょうか?

筆者のトップ3(いや、ワースト3か)は以下です。
 1)Windows自身が提供しているサービス
 2)マルウェア対策ソフト(ウイルス対策ソフト)
 3)インターネットブラウザ(ChromeやFirefox、IEなど)

最初に疑うべきは、Windows自身が提供しているサービスがやたらと
負荷をかけているケースです。
特にWindows7/8では、Windows Updateが(アップデート中でもない
のに)大量のディスクアクセスを行うケースがありました。

この内部動作については筆者の知識の及ぶところではないため、
詳しい解説はできないのですが、システム内部の状況確認の行うの
に負荷をかけざるを得ない処理があるのだと思われます。

これの確認にはWindowsの「タスクマネージャ」が使えます。

タスクマネージャの起動はWindwsのスタートメニューで右クリック
(左クリックではなく右クリックです)して表示される一覧から
「タスクマネージャ」を選択します。

初めてタスクマネージャを起動した時は、ごくシンプルな表示
ですが、「詳細」ボタンをクリックするとWindows自身が起動して
いる全てのプログラムのCPUやメモリ、ディスクなどの使用率を
細かく表示してくれます。

この中でCPUやディスクの使用率が極端に高いプロセスを探します。

それが、Windowsサービスホストという名称のものであれば、
Windows自身が提供しているサービスです。

残念ながら、Windows自身が提供するサービスで動作が重い場合は
確実な対処方法がありません。PCの再起動によって改善される
場合もありますが、あまり期待はできません。

また、マルウェア対策ソフト(ウイルス対策ソフト)がスキャンを
行っている時にも負荷が高くなります。
特に「フルスキャン」というPC内の全ファイルの検査を実行する
と、業務に使えないほどにPCの動作が遅くなる場合があります。

こ場合は、フルスキャンを行っていないかどうか、設定を確認して
みましょう。

この他にもChromeやFirefox、IEなどのインターネットブラウザが
負荷をかけている場合もあります。これはブラウザが原因の場合も
ありますが、表示しているサイトのプログラムにミスがある可能性
もあります。
この場合はブラウザを終了させてください。

もちろん、これ以外のプログラムが原因となっている場合も同様
にタスクマネージャで発見できます。
そのようなプログラムを見つけた場合は、まずプログラムの設定を
再確認しましょう。それで解決しないようならアンインストール
することも検討してみてください。
(有償ソフトの場合は販売元に問い合わせするのも忘れずに)


4. メモリ不足によるもの

特に古い機種の場合、メモリ不足により極端に動作速度が遅く
なる場合があります。

この記事を執筆している2021年時点では一般的な事務用PCの
メモリは4GBが一つのスタンダードです。ちょっと良いPCなら
8GB、ぜいたくな構成なら32GBあたりでしょうか。

「え?そんな少ないの?オレのスマホ256GBだよ」とおっしゃる
かもしれません。

実はスマホの「メモリ」と上で書いた「メモリ」は違うものを
指しているのです。

ものすごく乱暴に言うとメモリは2種類に分かれます。
 1)ROM(Read Only Memory:ロム)
   変更できないが電源を落としても内容が消えないメモリ
 2)RAM(Random Access Memory:ラム)
   変更できる電源を落とすと内容が消えてしまうメモリ

スマホで256GBなどとあるのは前者のROMのこと、私が書いたのは
後者のRAMのことです。

ここで「え?変更できないって、スマホのメモリは変更できるやん」
と気付いた方は、次節の余談をどうぞ。
気にならない方は「スマホに載ってるのはフラッシュメモリと
呼ばれるROMの一種のこと」とだけ覚えてスキップしてください。

余談
 スマホなどに使われている「ROM」はフラッシュメモリと呼ば
 れるROMで、EEPROMの変種です。
 というわけで、EEPROMとフラッシュメモリを解説します。
 もともとROMというのはRead Only Memory の略で、文字通り
 読み込み専用メモリでした。
 古い方であれば、ファミコンやスーパーファミコンのメガロム
 などという言葉を覚えておられるかもしれません。アレです。
 この時代はマスクROMと呼ばれるものが中心で、書き換えること
 はできませんでした。
 それでは不便だということで、書き換え(プログラミング)が
 できるROMが開発されました。それをPROM(Programmable ROM:
 ピーロム)と呼びます。
 この時点では書き込みはできるものの消去には専用の機器が必要
 で、それにセットして紫外線を当てる必要がありました。
 これをUVEPROM(Ultra Violet Erasable PROM)と呼びます。
 何とか紫外線などを使わずに消去できないものかと研究を重ね、
 ついに電気的に消去できるPROMが開発されたのです。
 これがEEPROM(Electronical Erasable PROM:イーイーピーロム、
 イーツーピーロム)です。
 余談の余談
  さらに余談ですが、こんな経緯があるため、EEPROMを直訳する
  と「電気的に消去可能な書き込み可能な読み込み専用メモリ」
  と盛大に矛盾したものになっています。
 と、こんな経緯で生まれた万能のEEPROMなのですが、高機能故に
 非常にコストが高く、決して一般的な製品ではありませんでした。
 このEEPROMの高コストな部分に目を付けて大巾に機能削減をした
 製品こをがフラッシュメモリだったのです。
 今でこそフラッシュメモリは我々の生活に欠かせないものとなり
 ましたが、当時は「そんなハンパな製品が売れるはずがない!」
 と散々な叩かれようで、予算もろくに付けてもらえず、研究者は
 会社に知られないようにコッソリ開発していたそうです。
 ちなみにフラッシュメモリの発明者は日本人です。

このフラッシュメモリは最近のPCでもよく使われています。
そう、SSD(Solid State Drive:エスエスディー)にはフラッシュ
メモリが使われています。

さて、話を戻します。

ここでいうメモリというのは、コンピュータの動作時にプログラム
をロードしたり、動作中のいろんな状態を覚えるのに使われるもの
です。

ですが、なぜメモリが足りないとPCの動作が遅くなるのでしょう?

PCのメモリはかなり高価なパーツなので、あまりたくさん載せる
とコストがかかります。
ですので、PCには最小限のメモリだけを載せ、足りなくなったら
ハードディスクに一時退避する、という仕組み(仮想記憶方式)を
使って省コストを図っているのです。

仮想記憶方式は非常に優れていて、そのおかげで安いPCでも複雑
なプログラムを動かすことができるようになったのです。
通常はメリットばかりの仮想記憶方式なのですが、メモリが極端に
少ないとそれが裏目に出てしまいます。
つまり、常にメモリが足りず、ハードディスクとメモリ間の転送に
ばかり時間を使い、肝心の目的のプログラムを動かす時間がなく
なってしまうのです。

この結果、特に複数のアプリを動かそうとすると極端に遅くなる
現象になるのです。

メモリが4GB未満のPCでは特にその傾向が顕著です。

一番の対策はメモリ増設ですが、そもそもPCが古い場合も多いと
思われますので、買い換えも視野に入れるべきでしょう。


5. まとめ

今回は、PCが遅いと感じた時に行うべき対処として、タスク
マネージャによる動作状況の確認方法と、メモリ不足によって
極端に動作が遅くなる理由について解説をしました。

次回は今回の続きとして、SSDによる一時的なフリーズ現象や
マルウェアによる障害といったケースについて解説を行います。

次回もお楽しみに。


今回登場した用語

○マルウェア
 これは英語圏での造語で、malicious-softwareを縮めてmal-ware
 (=マルウェア)と呼ぶ。
 malicious(マリシャス)は「悪意のある」とか「故意の」と
 いった意味。
 つまり、利用者が思ってもいないコトを裏でコッソリやるソフト
 ウェアの総称を指す。
 ウイルスと何が違うんだ?と思ったアナタは正しい。
 以前は「ウイルス」が悪事を働くソフトの代表だったので、それ
 が総称を兼ねていた。
 ところが、ウイルス以外にも悪さをするソフトウェア、例えば
 ワーム、トロイの木馬、偽ソフトといった形式のソフトウェアが
 登場してきた。
 結果、狭義のウイルスと広義のウイルスの2つの意味にかなりの
 差が生まれてしまった。
 この両方を「ウイルス」で表記していると区別がつきにくくなる
 ため、マルウェアという言葉を「悪さをするソフトウェア」の
 総称として使いはじめた。
 2021年現在、ウイルスという言葉はマルウェアの一つの形式扱い
 ということで専門家の間では定着した。一般ユーザにも広がり
 つつあるが「ウイルス」と呼ぶ人もまだまだ多い。

○マルウェア対策ソフト
 ウイルス対策ソフトとか統合セキュリティソフトなどと呼ば
 れるソフトウェアのこと。マルウェアに限らず、外部の脅威から
 PCを守ることを目的としたソフト。多くの場合、マルウェア
 対策のみの製品、怪しげなサイト(フィッシングサイトなど)
 へのアクセス制御を加えた製品、といった複数の製品をライン
 アップしている。

このNoteは私が主宰するメルマガ「がんばりすぎないセキュリティ」からの転載です。
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