[一般TCG理論] デッキリストきっちり派閥 vs ごちゃごちゃ派閥
デッキリストきっちり派閥について
当時、自分のやっていたシャドウバースというゲームでは、同名カードは3枚までデッキに入れられるルールで、競技勢の間ではデッキリストは3×13+1=40が美しいとされ、ピン刺しや2枚積みに対しては厳しく理由が追求される傾向にあった。これがデッキリストきっちり派閥である。
しかし、筆者はこの大量の3枚積みリストが苦手で、なぜこんなリストが強いとされるのか?とずっと疑問だった。真理は反対にあると思っていて、実際、自分でデッキ調整していくと、最終的に1,2積みを多用するまとまりのないリストのほうがむしろしっくり来ることが多かった。デッキリストごちゃごちゃ派閥である。
ではどちらが正しいのか? リサーチすると、gamewithのコメントで素晴らしい回答を見つけた。
「ランクマッチなどでは様々な種類のデッキと戦う為、柔軟性のあるデッキ構成の方が安定していると感じる」という箇所にとくに感銘を受けた。それは筆者がランクマッチ(ラダー)をやり込んでいたからだ。前提として3×13+1の形式のほうがデッキのパワーが高くなりやすいため、競技にコミットするならそれが正解に近い。「『強いカードランキング1~13位』のカードを可能な限り投入しました」と考えると乱暴だが分かりやすいだろう。
ではきっちりしたデッキリストこそが正解で、ごちゃごちゃしたデッキリストは弱さしか無いのか?
そうではない、という話がしたい。たしかに競技をするなら強いデッキがいい。だがランクマッチに向き合うと、ひとはわざとデッキを弱くしはじめるのだ。
ひとは対戦相手より自分が強いと思っていると無限にデッキを弱くしはじめる
トーナメントとランクマッチ(ラダー)の最大の違いは対戦相手の練度である。大会に慣れていないデッキを握るプレイヤーはいないし、プレイヤーの平均レベルも大会のほうが大分高い。ラダーは最高ランク同士というマッチングの制約はあるものの、プレイヤー間の実力のばらつきが大きく、回数ゲーである。
↑回数ゲーというのはこの記事がわかりやすい
大会のように負けたらはけるわけでもないのでいわゆる地雷デッキと対面する割合はラダーのほうが高いだろう。
そして対戦相手が弱かったり弱いデッキを使っていることが多いと人間は安定を求め始める。まず決まれば勝ちだが安定性にかけるギミックに対して「これ本当に必要だろうか?」と疑問を感じはじめる。だって決めなくても勝てるのだから――このカードは爆発力は高いけど手札不足が怖いのでドローソースに変えよう(だって手札さえあれば勝てるのだから)となっていく。パワーを捨てても偏差が少ないことを追求しだすのだ。そうしてデッキのパワーが低下してミラーマッチで最初からハンデを背負っている状態になっても、ミラーこそ実力ゲーなのでそれが一番嬉しいマッチアップだったりする(ある配信者いわく、『ミラーは俺有利。』)。
メタカードの観点からは、ランクマッチのほうが効果が大きい。あなたがあるTier上位のデッキを使っていると想像してほしい。このデッキは中速コンボデッキだがアグロデッキには弱点があって勝てない。ならばとアグロに強い対策カードを2枚入れてみる。すると結構アグロにも勝てるようになり、最強か!?と大会に持ち込むことも考えてみたりする。しかしいざ練習相手に付き合ってもらうと本当に巧いプレイヤーの握る有利対面アグロはそもそもメタカード数枚では止まらなくね?という残酷な現実が明らかになる。メタカードを入れたことによってミラーにはやや弱くなっていることも実力が拮抗している大会環境では大きな問題だ。
つまり対策カードを入れると巧者には効かず、ミラーには弱くなるという現象がある。有利不利を覆すために入れなければならない対策カードの数、その有効性、歪めなければならない度合いみたいなものは相手が強ければ強いほどヤバくなっていき、それなら対策なんて考えずそのデッキの強みで勝負したほうが最善になる。しかしラダーはその逆で、ごちゃごちゃしたデッキほど多くの対面を取りこぼさずに拾えるようになり、強い。
(もちろんラダーでも割り切って強いリストを使うこともできるが、それならいっそアグロを使って試合時間効率も求めるというのが回数ゲーならではの方法だ)。
デッキリストがプレイヤーを映すとき
競技シーンはレベルが高いので、多くの場合、一番強いデッキを握ってその上で全力を尽くすことが最善になる。人事を尽くして天命を待つ、だ。しかしリストが強いことからプレイヤーが強いことは導けなくなってしまう。
だから、ごちゃごちゃしたリストを、ともすれば弱く見えるリストを愛したいのだ。
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