ボンヘッファー "Von guten Mächten" 対訳と訳詞(文語/口語)

投稿:2019年12月31日
更新:ドイツ時間同日,日本時間2020年1月1日(口語体の訳詞を追加,それに伴い導入文も修正)
小更新:2020年3月23日(口語体の訳詞を少し改訂。第4節第3行「古き年も」→「悪しき日々も」)
小更新:2020年12月31日(文語体訳詞の第3節第3行の語順を入れ替えた。「汝が御手よりならば主よ」→「主よ汝が御手よりならば」。あと,誤解の余地をなくすため,口語体訳詞の最後の言葉を漢字に改めた。「います」→「在す」。ほかに対訳のごく微細な改善)

 現在12月31日なので急いで投稿します。

 ディートリヒ・ボンヘッファー(Dietrich Bonhoeffer 1906-1945)の "Von guten Mächten" という歌があります。これはもともと,彼が1944年12月19日にナチスの強制収容所から婚約者と親類たちに書いた手紙の中で,クリスマスと年末のあいさつとして書かれた詩ですが,今では聖歌集・讃美歌集にも収録されており,日本の『讃美歌21』にも入っています(第469番)。

 今回はこの歌を訳すのですが,対訳だけでなく,同じ旋律で日本語で歌えるようにした訳詞も作ってみました。本稿の投稿時点では文語訳のみできており,とにかく12月31日に間に合わせるべくこちらだけ発表しましたが,数時間後に口語訳もできましたので,日本時間ではもう1月1日になってしまっていたものの,直ちに追加しました。

 文語訳のほうですが,古典文法は大学受験のとき少し勉強したきりなので,どこかおかしいかもしれません(あと音節数の関係で当然制約があります)。よりよい案などありましたら教えてください。

 数ある旋律の中で,ドイツで最も親しまれているのは次のものです。作曲者Siegfried Fietz自身が,全7(6)節のうち第1,2,5節を歌っています。なお一部言葉が変えられていますが,Fietzの意図によるものなのかどうか私には分かりません。

https://www.youtube.com/watch?v=aN7dGz6NH5M

 この旋律では,最終節(第7節)をリフレインとして用いています。上に全「7(6)節」と書いたのはそのためです。
 

【対訳】

1.
Von guten Mächten treu und still umgeben,
よい力(複数)に,忠実に静かに囲まれ,
Behütet und getröstet wunderbar,
見守られ,すばらしく慰められて,
So will ich diese Tage mit euch leben
私はこの日々を君たちとともに生き,
Und mit euch gehen in ein neues Jahr.
君たちとともに新しい年に進んでゆこう。

2.
Noch will das alte unsre Herzen quälen,
古い年は私たちの心をなおも苛もうとし,
Noch drückt uns böser Tage schwere Last.
邪悪な日々の重荷が私たちをなおも圧迫する。
Ach, Herr, gib unsern aufgeschreckten Seelen
ああ主よ,私たちの脅かされた魂にお与えください,
Das Heil, für das du uns geschaffen hast.
救い(この救いのためにあなたは私たちを創造なさったのです)を。

3.
Und reichst du uns den schweren Kelch, den bittern
それであなたが私たちに困難な苦い杯を差し出されるのならば,
Des Leids, gefüllt bis an den höchsten Rand,
ぎりぎりまで満たされた苦しみの(苦い杯を差し出されるのならば),
So nehmen wir ihn dankbar ohne Zittern
私たちはそれを感謝のうちに,震えもせずに受け取ります,
Aus deiner guten und geliebten Hand.
あなたの善い,慕わしい御手から。

4.
Doch willst du uns noch einmal Freude schenken
それでもあなたが私たちにもう一度喜びを与えたいと思ってくださるならば,
An dieser Welt und ihrer Sonne Glanz,
この世界とその太陽の輝き(のうちに生きる喜びをもう一度与えたいと思ってくださるならば),
Dann wolln wir des Vergangenen gedenken
そうであれば,私たちは過ぎ去ったことを(も)記念しましょう,
Und dann gehört dir unser Leben ganz.
そうすれば私たちの生は完全にあなたに属するものとなります。

5.
Lass warm und hell die Kerzen heute flammen,
今日,あたたかく明るくろうそくを燃やしてください,
Die du in unsre Dunkelheit gebracht.
あなたが私たちの暗闇にもたらしたろうそくを。
Führ, wenn es sein kann, wieder uns zusammen.
できることなら,私たちを再び一緒にしてください。
Wir wissen es, dein Licht scheint in der Nacht.
私たちは知っています,あなたの光が夜に輝くことを。

6.
Wenn sich die Stille nun tief um uns breitet,
私たちの周りに深い静寂が広がったら,
So lass uns hören jenen vollen Klang
私たちに聞かせてください,あのいっぱいの響きを,
Der Welt, die unsichtbar sich um uns weitet,
私たちの周りに見えない形で広がっている世界の(あのいっぱいの響きを),
All deiner Kinder hohen Lobgesang.
すべてのあなたの子らの高らかな讃歌を。

7.
Von guten Mächten wunderbar geborgen,
よい力(複数)にすばらしく守られて,
Erwarten wir getrost, was kommen mag.
心しずかに待ち望もう,起こるかもしれないことを【「何が起ころうとも」か?】。
Gott ist bei uns am Abend und am Morgen
神は夕べに朝に私たちのもとにいらっしゃる,
Und ganz gewiss an jedem neuen Tag.
そして全く確かにすべての新しい日に。

【訳詞(口語体)】

1. 善き力に囲まれて
守り慰められて
遥かなる君よともに
ゆこう新しき年へ

2. 古き年,悪しき日々は
我らをなお苛む
ああ主よ,あなたの望み
それは我らの救い

3. たとえ苦い杯を
受けねばならなくとも
あなたの御(み)手からならば
恐れず受け取りましょう

4. この地上で喜びを
再び見られるなら
悪しき日々も御(み)恵みの
思い出となるでしょう

5. 燃え輝けよろうそく
私たちの闇夜に
よ(夜/世)の暗さ極まるとき
主が灯された明かり

6. 静けさ世を覆うとき
聞かせてください主よ
見えないあなたの子らの
高らかなほめうたを

7. 善き力に守られて
待ち望もう,静かに
夜(よ)も朝もいつも神は
我らとともに在(いま)す

【訳詞(文語体)】

1. 善き力われを囲み
守りつ慰むれば
われらきょうともにありて
ともに迎えん新年(あらとせ)

2. 悪しき古年(ふるどせ)われらを
いまだ責め苛むも
主よ汝(な)が望みたもうは
われら救わるること

3. 満てる苦き盃を
受くるは避けがたきも
主よ汝(な)が御手(みて)よりならば
恐れずこれをも受けん

4. 遠くなりにし喜び
よみがえることあらば
悪しき日々をも覚えん
すべては主の御(み)恵み

5. 燃え輝けよともしび
我らがくらき夜(よる)に
闇夜の極まりしとき
主の灯しし明かりよ

6. しじまうちひろがるとき
聞かせたまえかの歌
見えざる光の子らの
うるわしきほめうたを

7. 善き力に守られつ
待ち望まん安けく
夜(よ)も朝もいつも神は
われらとともに在(いま)す

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