瞬間英作文や即興演奏訓練における「暗記してはいけない」の真意

【初出:Facebook,2017年11月5日。もとは段落分けなし】

 英語上達完全マップの森沢さんも,私の今〔註:2017年11月当時〕のオルガン即興の先生も,「暗記してはいけない(暗記が起こってはいけない)」と言う。しかしこれは,より正確には「大きな単位で暗記してはならない」,つまり「丸呑みしてはならない」と言うべきだろう。こういうことの学習において暗記は必ず働くし,それは必要でもある。

 問題は,どういう単位で暗記が働き暗記に頼るかである。基本的に,暗記する単位が大きいほど(あるいは,レベルが高いほど・複雑であるほど)「丸覚え」になりやすい。丸覚えしたものというのは,それ自体を暗唱・暗譜演奏することはできても,それを応用して何かすることがほとんどできない。むろん,暗唱・暗譜したものを容易に発話や即興演奏に生かすことができる人々もいるが,それは,意識的にであれ自然にであれもっと易しいレベルでの訓練を彼らが済ませており,消化・吸収能力が強化されているからにほかならない。つまり彼らにおいては,同じものを暗記しても,丸覚えになる分がはるかに少ないのである。

 だから,初学者はあくまでもごく小さな単位のものを暗記しなければならない。それを実践しようとすると,確かにあたかも暗記しないかのような訓練になるので,森沢さんも私の先生も「暗記するな」と言うのだろう。例えば英語なら,例文をそのまま覚えようとするのでなく,次々と瞬間英作文してゆく(ただし,その場ではよどみなく言えるように練習する)。すると,個々の文は覚えなくとも,繰り返し現れる小さな定型を覚えてゆくことになる。これらの小さな定型ならば,初学者でも消化・吸収することができる,つまり応用可能な記憶となる。森沢さんのいう「暗記ではなく,自然な刷り込み」というのはこういうことであると考える。

【関連記事】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?