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「そういうのが嫌いな人なので」

きょう、仕事の合間に、何気なく音楽ナタリーなんぞのぞいていると、ゆらゆら帝国の坂本慎太郎がデビュー当時のことを語っていた。このタイミングで読むのは、胸が打たれる。2ヶ月くらい前の2024年4月7日、ベースの亀川さんが亡くなったばかりで。

記事の内容は、淡々とデビュー当時の話を振り返っているだけなんだが。

メジャーレーベルに行くまで、坂本さんがじぶんちの自宅電話をバンドの窓口にしていた話。メジャーに行って取材のオファーが増えたけど、「亀川くんも一郎くんもそういうのが嫌いな人なので」全部ひとりで対応した話。メジャーデビューして2枚目出してもバイトしていた話。自分で宿の予約をやりくりしてて、3人全員一緒の部屋に泊まったり、対バン相手の家に泊まったり、ライブハウスの駐車場で朝まで車で寝た話。メジャーに移籍して、それで、ようやくホテルにシングルルームとれて「あれは本当にうれしかった」という話。

亡くなったことなんて、なんにもふれてないわけである。亡くなる前に取材したのか、その後の取材したのか。ちょっと気になるが。どっちでもいいんだろう。取材した人も、受けて話すほうも、きっとわきまえている。あの人が「そういうのが嫌いな人なので」ということなんだろう。しめっぽいのを嫌ってる、たぶんね。

4月7日、坂本さんは訃報にふれて「初めて会った時は19歳だった亀川くん 僕とバンドを組んでくれてありがとう 最高のベーシストでした安らかに。」とコメントを残した。バンドっていいんだな。友だちっていいなと思ったりする。ただのデビュー時のエピソード記事なんだが、暗めの背景がコントラストになって、当時の思い出を明るくキラキラと浮かびあがらせているようだ。

さて、こっちがしんみり想いを馳せたりしてるのに、無慈悲にも、「まだできないの?」という仕事の催促が入っている。「できてねえよ、うるせえな」と、思いながらも口にせず、「すみません、明日になりますね」と言ってみた。もうやだ。22時だぜ。酒飲んで寝るよ。

なんだかいろいろ悲しくなってきたが、悲しい曲を聴いている場合でもない。こんなときはビートルズの「I'm Only Sleeping」。2024年、グラミーで最優秀ミュージックビデオ賞を受賞した。さすがのアートワーク。うーん、だめだね、今日は寝よ。

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