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なつぞら俳句 5月

5/1
新宿の二人に射すは夏の日よ 
人の目を夏の日差しが遮りて 
新宿の歌声に酔う夏の宵 
母がゐぬ夏の夕餉のまずきこと
5/2
バターカレー風死す窓辺香り来る 
かき氷シロップに加えパイナップル 
輸送缶水かけ洗ふ青嵐 
尋ね人浅草六区土用凪
5/3 
涙なく再開シーン夏舞台 
草の息十勝岳けふセピア色 
夏の日や兄と天丼蓋とれど 
妹よ窓を開ければ夏の星
5/4  
夏日射すストリッパーの楽屋裏 
夏浅しコーヒー香る裏話
涙色別れの手紙秋を待つ 
牛乳輸送缶夏の十勝の日が沈む
5/6 
クーラー効く電蓄がある喫茶店で 
スタジオや汗をかかずに熱込めて 
夏の空蒔き割りが斧振り上げて 
夏の果て目に焼き付ける止める街
5/7 
雪原を息せき駆ける人のあり 
吐く息が陽を受け光る冬の朝 
ストーブ列車好きな人ゐる窓向かふ 
雪が舞う漫画映画が待つ未来
5/8 
三人でストーブ囲む子の未来 
ストーブのやかんが騒ぐ作業小屋 
雪の窓発車が鳴り頬緩む 
浅き冬頬の色変えスクリーン
5/9
ミルクバケット模した洋菓子雪に映え
映画から帰る列車雪が舞ふ 
朝日射す昨夜の雪も冬日色 
陽が届く雪が林の道続き
5/10
林より雪の上伸ぶ長い影 
競ゐあふ雪をも融かす健脚 
ダイヤモンドダスト滑る二人へ舞ひまわり
鍋一杯豚汁の湯気雪と舞ふ
5/11
末事問ふ冬の牛小屋「モウ」と云ふ 
家族から雪の坂道滑り降り 
地吹雪や行く路消して無の世界 
森の家雪の強さが消す灯
5/13 
小槌の音吹雪の森に吸い取られ 
気がつけば熊の彫りもの外は雪 
おしょろこま囲炉裏の遠火焼かげん 
朝帰り紅ひく雪の十勝岳
5/14  
アニメへと雪の十勝に告白し 
さよならと雪の坂道駆けのぼり 
願い事冬の夕餉が強いなり 
雪が夜家族をつくる説くは母
5/15  
凍れ朝牛舎溢れる笑い声 
寒風や彫りカス舞わせ訪ね入る 
雪小径煙がのぼる森の家 
雪晴れて目指して滑る十勝岳
5/16
窓に雪緑茶をそえてパフェをだし 
ストーブで股間を温め手をあぶり 
雪の中熊の彫り物届け行く 
囲炉裏より牛乳鍋アツアツと
5/17
パフェ食す孫の後れ毛冬日射す 
開拓者夏の草原いくは馬車 
雪が止む別れを告げる森の家 
春間近ランプが照らす孫の顔
5/18 
入学試験合格誓う十勝岳 
雪解け小屋熊の木彫りを磨く腕 
雪の残る卒業式歌唄う 
雪原に二人で眺む十勝岳
5/20
雪後の天通知を胸に眠りつく 
写真撮る合格通知胸に抱き 
バターチャー廻す心に恋し人 
残雪や背中で送る目に涙 
成長す春の十勝に別れ告ぐ
5/21  
新宿で春を迎える道産子 
あたたかし応接室のソファー揺れ 
北のバター春のランチがカリーかな  
春の宵ジャズ喫茶流る歌詞沁みる
5/22
春灯初めてくぐる赤暖簾 
春寒しバクダン熱く味さえぎ 
新劇の手伝い散らす春の花 
「幸せ」と去年の夏に言わせとは
5/23
床掃除春の新宿遊び出る
春の服灯こぼれる小路行く
春の夢急いでしまう赤暖簾 
踊り子に春の思い出飯を盛る
5/24 
外套脱ぎ舌鼓うつ十勝クッキー 
クリームソーダ毒々しい色おかわりす 
おでんの具悩まず入れる赤暖簾 
四月来る社長へ挨拶長廊下
5/25
春の昼廊下で止める若気かな
霜の名残支那そば食らう涙汁 
アカシアの花もう咲いてるか皿洗い 
タップ踏む春の夜中の稽古室
5/27
夏きざす馬の絵描く森の家 
卯の花月暖簾はねのけビール泡 
和清の天試験の紙へ馬駆ける 
不合格夕方開く梅雨の前
5/28 
応接室カラーガラスが外は夏 
十勝にも牛が歓ぶ夏がきた 
半夏生スタジオが外ランチ時 
卓袱台が占める部屋にもビールあり
5/29 
夏きざす思わず押して池の水 
夏浅し皿洗えども夢保ち 
若夏やコップの緑透き通り 
薄暑光ピンクのカーテン開きいれ
5/30
緑さす歌舞伎町でもタップ踏む 
見つけたりサンドイッチマン緑陰を 
涼しそうガラスの花瓶水もなく 
簾戸の洩れる光りが兄の絵を
5/31なつぞら俳句  
一文銭夏めく兄の部屋飾る 
夏の夕窓に透かして封を切る 
夏の宵乾杯をするアイヌ熊 
赤電話たばこ屋の前夏日射す

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