まんぷく俳句 1月
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花の冷え記者押し寄せ苛立ちぬ
せわしない合格発表待つ娘
間を入れて合格の通知嬉々と告げ
ひと来る運命変える春の朝
1/5
残る雪新しポスト願われど
桜時無職の我なげく義母(はは)
すがりたい春の夢人険しいと
春明日決断告げし台所
1/7
十二月成果たたえし光る朝
浅き冬玄関の靴揃えたり
年流るゆくさき不安油断すな
冬最中世の中にない道具作り
1/8
調理器の工場にはいる明日の春
冬日さすムカデの玩具踏み台に
冬の宵画き終われどもみたされず
眠り付く昔を想う夜半の冬
1/9
秋真昼理事長室からにして
秋気澄むアメリカ土産拡げ見せ
秋麗メトロの風が巻き上げし
モノづくり夢中になる夜長かな
1/10
秋めくや悩む人立ちアトリエへ
秋めきて鼻高教えふくの数
秋の宵趣味とはいえ気入れ過ぎ
冷ややかに入れ込む姿気をもみて
1/11
舞茸の味噌汁前に小言なり
巴草胸抱きモデル座る椅子
開発費差し止められし藪枯らし
肌寒し子作りせずに眠り入り
1/12
秋の昼アトリエ気にす美人座し
新製品冷やかな夜完成を
秋の夜万能調理器試運転
そぞろ寒我が家が担保賭ける品
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秋の服アトリエに射す二人へと
試作品満足な出来さやかな日
融資決定屋台の上が空高し
秋の宵童話朗読かの人も
(市原悦子氏さんが思い浮び)
1/15
秋の屋台出会い乾杯何杯も
アトリエへ裸のモデル秋日さす
理事長室穏やかな秋お茶の味
秋風や資金回収突然に
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長き夜モデル話で紛らせど
秋真昼大器晩成占いが
秋気澄むのろけ話で筆おさめ
客来襲全額おろす秋の暮
1/17
秋の霜差し押さえ紙そこここに
秋の昼桃色の紙揺れもせず
夕映えや残る蒲団に武士の母
慰めや釣瓶落としに泣おちて
1/18
融資なく売れる商品野分まえ
秋の声女給役板につき
贋物かしのぶ秋冷皿の前
秋気澄む頭取へ説く池田の事
1/19
冬浅し残る社あり未来あり
冬半ば夢みる野菜裏庭に
役を退く出るはゼロから今朝の冬
出発とリヤカーに子ら去ぬる年
1/21
年賀客新しいことへ退職金
出迎えるお年玉もつ貯金箱
お正月座敷に拡げ福笑い
初笑い座る場所ない小さき家
1/22
松明けて円卓の皿めざしかな
餅間や喫茶店にもテレビなり
初夢に姉ラーメンをと背を押せり
小正月ラーメン造り閃けり
1/23
冬日和この味だすに苦節日々
寒日和屋台ラーメン冷め知らず
寒きびし簡単なれと励まして
主婦の味託すラーメン冬夢見
1/24
大根あらう一夜ラーメン夢描き
妻つわり聞かずラーメン乾風(あなぜ)吹く
オリオンへ男のロマンラーメンを
冬の宵悩むいじめを知らぬ父母
1/25
寒の内誕生待つ腹を撫で
冬の日昔ぼんぼん今茶店
冬の暮苛められし子玄関に
案揃う凍むを溶かさん子らに説く
1/26
冬霞ゴールは見えど道見えぬ
ガラスープ厨へ乾風吹き込めど 乾風:あなじ
即席ラーメン冬晴れの朝名付け初め
冬凪や野菜あきらめ研究所
1/28
リヤカーや道具と共に冬日妻
寸胴へ鶏ガラそっと冬の朝
裸電球湯気立て開始ラーメンを
寒厨ひとりスープに熱中
1/29
冬シャツやねじり鉢巻きこころみる
窓につく寸胴が湯気冬茜
無理するな重き寸胴冬の夜
再婚や座敷に冬日差し込みて
1/30
冬着物洋裁が腕揃えたり
雪が舞う研究所へ朝が来ぬ
夢枕隣の人も春隣
桜の絵祝いと美味い重なりて
1/31
懐手道具揃える麺づくり
悴む手みず塩かんすい練り込まん
ショールとり美人モデルのシルエット
湯気立てて暗中模索汁を濃く
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