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新歳時記より 1月の季語

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一月(いちぐわつ)
   一月やペダルの軽き湖畔道
去年今年(こぞことし):今年・去年・旧年
   資料の山机の狭き去年今年
元日(ぐわんじつ)
   元日やルーチンどおり事の済み
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新年(しんねん):新玉の年・年改る・年立つ・新歳・年頭・初年・年迎ふ・御代の春・明の春・今朝の春
   新年の祝辞が長さ髭の人
元朝(ぐあんてう):歳旦
   元朝や親父も早く起きて待つ
初鶏(はつとり)
   初鶏が啼けど冷たき曇り空
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初鴉(はつがらす)
   初鴉啼かず止まらず横切りて
初雀(はつすずめ)
   鉄塔の身を寄せ合ひて初雀
初明り(はつあかり)
   うつばりの影を映して初明り
初日(はつひ):初日の出・初日影
   初日の出練り声高き迎え凧
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初空(はつぞら):初御空・初東雲・初茜 
   波の上紺碧の濃き初御空
初富士(はつふじ)
   初富士を写す湖畔のタイヤ音
初凪(はつなぎ)
   初凪や対岸回る観覧車
御降(おさがり)
   御降やこたつの外の薄着かな
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若水(わかみづ):若井(わかゐ)
   縮こまり釣瓶おとして若水よ
初手水(はつてうづ)
   初手水頭も痺れそそくさと
乗初(のりぞめ):初汽車・発電車
   乗り初めやいつもと変わらぬ駆け込み
白朮詣(おけらまゐり):白朮火・火縄売
   くるくると白朮詣のすれ違い
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初詣(はつまうで)
   冷えて頬記念写真が初詣
破魔弓(はまゆみ):はま矢
   破魔弓や座らず遠く眺めけり
歳徳神(としとくじん):歳徳・年神
   隙間風歳徳神も揺れにけり
恵方詣(えほうまゐり):恵方
   初打も右に曲がりて恵方かな
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七福神詣(しちふくじんまゐり):七福詣・福神詣
   七人おめかし七福神詣
延壽祭(えんじゅさい)
   延壽祭拝受盃一献す
四方拝(しほうはい)
   風とまり占みて青空四方拝
朝賀(てうが):拝賀・参賀
   不自由もおして行きたし賀かな
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年賀(ねんが):年始・年禮・廻禮
   黒お盆年賀のタオル赤刺繍
御慶(ぎょけい)
   友達もいずまい正し御慶かな
禮者(れいじゃ)
   細い道影を伸ばして禮者来る
禮受(れいうけ)
   禮受や座布団もなく手をこすり
名刺受(めいしうけ)
   丁寧に礼の相手や名刺受
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禮帳(れいちやう)
   禮帳へ今年最初の筆で名
年玉(としだま):年贄・お年玉 
   小遣いと変わらぬ額がお年玉
賀状(がじやう):年賀状
   目に見えて高さが変わる年賀状
初便(はつだより) 
   初便かなしきことの無き証
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初暦(はつごよみ)
   新しきことがありそな初暦
初刷(はつずり)
   初刷の未来予想図幼き日
初竃(はつかまど):焚初
   杉の葉がかをり吹き出て初竃
大服(おほふく):大福・福茶
   大服やかをり新し古茶碗
屠蘇(とそ)
   あと幾つ鼻につく屠蘇味しるや
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ごまめ:田作・小殿原
   まっすぐを探せど何処ごまめかな
数の子(かずのこ)
   数の子や唯一食わぬ高きもの
切山椒(きりざんせう)
   切山椒お茶とおしゃべり姉の友
門松(かどまつ):松飾・竹飾
   松飾鼻を邪魔してマーキング
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年酒(ねんしゅ)
   盃の波年酒に浮かぶ鶴亀よ
雑煮(ざふに)
   大声で雑煮の餅が増えて朝
太箸(ふとばし):柳箸・箸紙
   去年に逝く一膳余り祝い箸
歯固(はがため)
   歯固や翁の顎に鹿の脛
食積(くひつみ):重詰(ぢゆうづめ)
   食積や作り置く技味避けて
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飾(かざり):お飾・輪飾・飾海老
   輪飾を焼きはせぬかと竈かな
注連飾(しめかざり)
   締め付けて釘も新し注連飾
飾臼(かざりうす):臼飾
   浮つかず微動だにせず飾臼
鏡餅(かがみもち)
   大きさも父が収入鏡餅
蓬莱(ほうらい):掛蓬莱
   蓬莱や今は聞こえぬ汽笛かな
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歯朶(しだ):山草・穂長・裏白・諸向
   歯朶枯れて人の行き来も一休み
楪(ゆづりは)
   楪や古希を迎えて孫に次ぐ
野老(ところ):萆薢
   仰ぐ山髭取せはし野老掘る
穂俵(ほだはら):なのりそ・ほんだはら
   穂俵や漂う住処小魚追ふ
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福寿草(ふくじゆさう)
   砂利交じりぐぐと掻き分け福寿草
福藁(ふくわら)
   福藁や乗るなさわるな福来れぬ
春着(はるぎ)
   あげおろし春着艶やか立ち姿
手毬(てまり):手毬つき・手毬唄
   母編みてケースに鎮座手毬かな
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独楽(こま)
   馴染まない新しき紐独楽廻し
追羽子(おひばね):遣羽子・揚羽子・逸羽子・懸羽子
   追羽子や数え続かず強き風
羽子板(はごいた):胡鬼板・飾羽子板
   羽子板を母に抱かれて写しけり
羽子(はね):つくばね・胡鬼の子
   こーんこん吾子ら続けて羽子の音
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福引(ふくびき):寶引
   福引の紐の行く先隠す紙
歌留多(かるた):歌かるた
   歌留多とり孫の手はやき丸覚え
双六(すごろく)
   目が出ない終われ双六夕餉待つ
絵双六(えすごろく):陞官双六・道中双六・役者双六
   絵双六出して従妹を迎えけり
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十六むさし(じゅうろくむさし)
   負け続き十六むさし放り投げ
投扇興(とうせんきょう)
   白扇や婿披露投扇興
萬歳(まんざい):才蔵
   萬歳が言祝ぎ使ひ句を作り
猿廻し(さるまわし):猿引
   猿廻し年々段の高さかな
獅子舞(ししまひ):獅子頭・太神楽
   獅子舞や御幣追ひて見得を切り
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傀儡師(くわいらいし):くぐつ廻し・でく廻し・夷廻し・傀儡女
   傀儡師ぞろりと出でて隣村
笑初(わらひぞめ)
   忘れ物記憶発見笑初
泣初(なきぞめ):初泣
   泣初や硬貨欲しいと札を見せ
嫁が君(よめがきみ)
   膳揃ふうつばねの上嫁が君
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二日(ふつか)
   鴨揺れて二日の伊目の強き風
掃初(はきぞめ):初箒
   掃初門から玄関下駄の跡
書初(かきぞめ):筆初・吉書
   書初めや去年より太き筆握り
読初(よみぞめ)
   読初や行きつ戻りつ一頁
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仕事始(しごとはじめ):事務始・鞴始・農始
   けふからと仕事始のパチンコ屋へ
山始(やまはじめ):初山
   山始山は静かに迎えけり
鍬始(くわはじめ):鋤始・農始
   乾ききり土固まりて鍬始
織始(おりはじめ):機始・初機
   一礼のぱたんとひとつ織始
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縫初(ぬひぞめ):初針
   縫い初めや立ててくけ台生地の艶
初商(はつあきない)
   初商や算盤が気合入れ
売初(うりぞめ):初売
   売初やシャッター街の下駄の音
買初(かいぞめ):初買
   買初や赤い色したタッチペン
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初荷(はつに):初荷馬・初荷船
   立てて旗墨痕太く初荷かな
飾馬(かざりうま)
   風すさぶ幟が揺らし飾馬
初湯(はつゆ):初風呂
   眠り落つ赤子浮かべて初湯かな
梳初(すきぞめ)
   梳初や今宵の枕柔らかき
結ひ初(ゆひぞめ):初結
   結ひ初し短き母のほつれ髪
初髪(はつがみ)
   初髪を結うたばかりの風強し
初鏡(はつかがみ)
   当たり年皺を数えて初鏡
稽古始(けいこはじめ):初稽古
   身震いて稽古始が太鼓鳴り
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謡初(うたひぞめ)
   息揃え障子のびびり謡初
弾初(ひきぞめ):初弾・琴始
   宵闇へもれて弾初垣根越し
舞初(まひぞめ)
   舞初のぱちんと白き扇かな
初句会(はつくくわい)
   練りに練り初句会へ披露せど
初芝居(はつしばゐ)
   紙吹雪めでためでたの初芝居
宝船(たからぶね)
   吾子望むケーキのかをり宝船
初夢(はつゆめ)
   初夢や追ひて届かず待つつづき
三日(みっか)
   後家暮らしゲートボールへ三日かな
松囃子(まつばやし)
   眠気除け祢宜が手拍子松囃子
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福沸(ふくわかし)
   わが夫の歩みゆるやか福沸
三ヶ日(さんがにち)
   新品のセーターを着て三ヶ日
御用始(ごようはじめ)
   鍵開けて御用始へどっと来て
帳綴(ちやうとぢ):帳書・帳始
   筆に墨開けば白し御帳綴
女礼者(をんなれいじや)
   凪ぎて午後女礼者田んぼ道
騎初(のりぞめ):騎馬始・馬場始・初騎
   騎初やまずは一勝馬場もよし
弓始(ゆみはじめ):初弓・的始・射場始・弓矢始・射初
   弓始風おさまりて射場の音
出初(でぞめ)
   街道の兄の顔あり出初式
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寒の入(かんのいり):寒固
   閉め忘れ窓に隙あり寒の入り
小寒(せうかん)
   小寒や雲一面の冷たさよ
寒の内(かんのうち)
   日も差さず歩く速さや寒の内
寒の水(かんのみづ)
   ごくごくと喉痛き程寒の水
寒造(かんづくり) 
   寒造唄の響きや仕込み樽
寒餅(かんもち)
   寒餅や父帰るや否や杵を上げ
寒紅(かんべに):丑紅
   寒紅をひきて女の老けて様
寒詣(かんまいり):裸参
   寒詣マスクに隠し紅省き
寒垢離(かんごり):寒行
   寒垢離や槍の滝水肌に刺す
寒念佛(かんねぶつ)
   細き道続きて長き寒念佛
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寒施行(かんせぎょう):穴施行・野施行
   過疎化村猪も来るとは寒施行
寒灸(かんきう)
   ロンドンへ寒灸をうつパックなり
寒稽古(かんげいこ)
   滑る足水に打ち込み寒稽古
寒復習(かんざらひ)
   鼓打つ姿勢凛々しや寒復習
寒弾(かんびき)
   寒弾や肘から冷えて撥持つ手
寒聲(かんごえ)
   寒聲や薬局にあり喉の飴
寒見舞(かんみまひ)
   元気だと答えてみせる寒見舞
寒卵(かんたまご)
   藁の蔭まだあた寒卵
寒鯉(かんごひ)
   寒鯉や日長一日煮崩れて
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寒鮒(かんぶな):寒鮒釣
   寒鮒や針避け舐めて温し底
寒釣(かんづり)
   寒釣や日向にゐては釣れもせず
七種(ななくさ)
   七種やフリーズドライ味付けて
若菜(わかな):若菜摘
   風すさぶ堤防の影若菜摘
薺(なづな):薺摘
   天竜川法面温き薺摘
薺打つ(なづなうつ):七種打つ・七種はやす
   薺打つ唯一唄う母の聲
人日(じんじつ)
   人日の襞スカートの寝押しかな
七種粥(ななくさがゆ):薺粥
   朝寝坊七種粥の餅もとけ
粥柱(かゆばしら)
   横カバン朝は行き舞ふ粥柱
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寝正月(ねしやうがつ)
   おさんどん寝正月と決めつつも
鷽替(うそかへ)
   鷽替や煙か湯気か人の波
小松引(こまつびき):子の日の遊・初子の日
   息切らし富士を眺めて小松引
初寅(はつとら):福寅・畚下し
   初寅や花は未だかと御社へ
初卯(はつう):卯の札
   御神木青々として初卯かな
初薬師(はつやくし)
   仁王様またくぐらせて初薬師
初金毘羅(はつこんぴら)
   初金毘羅籠に揺られて海の色
十日戎(とをかえびす):初恵比須・複笹・戎笹・吉兆
   十日戎前へ後ろへ二度拝み
寶恵籠(ほゑかご):戎籠
   寶恵籠片袖垂れて踊る雪
春場所(はるばしょ):一月場所・正月場所
   春場所や肩をすかして翠富士
餅花(もちばな):繭玉
   餅花や街道に見せ色眩し
土龍打(もぐらうち)
   風に揺れ声張り上げて土龍打
綱曳(つなひき)
   月真上挑む綱曳街動く
松の内(まつのうち)
   納期ある急かず焦らず松の内
松納(まつをさめ)松取る・門松取る
   残業の日々の始まり松納
飾納(かざりをさめ)飾取る・注連取る
   八幡様飾納の人まばら
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注連貰(しめもらひ)
   家々へ吾子も声して注連貰
左義長(さぎちやう)とんど・どんと・吉書揚・飾り焚く
   左義長や書初めの火は梢越し
鳥總松(とぶさまつ)
   武蔵野や昔の住処鳥總松
松過(まつすぎ)
   松過ぬ嫁ぐ日近し夜の琴
小豆粥(あづきがゆ)
   窓の雪鍋ほんのりと小豆粥
藪入(やぶいり)養父入り・里下り・宿下り
   藪入や下駄の音高しアーケード
凍る(こほる)冱てる・凍土(いてつち)
   吐く息の鶴の嘴凍る夜
冴ゆる(さゆる)風冴ゆる・鐘冴ゆる・月冴ゆる
   残る芯冴ゆる港の赤テープ
三寒四温(さんかんしをん)
   蒲団剥ぐ三寒四温の温い日
悴かむ(かじかむ)
   ハンドルを悴かむ片手ポケットへ
胼(ひび)胼薬
   胼割れて白き指先紅滲み
皸(あかぎれ)
   皸やかいがらむしの熱さかな
霜焼(しもやけ)凍傷・霜腫
   色白な耳の霜焼け紅の色
霰(あられ)玉霰
   ばらばらとトタンに霰奏でけり
風花(かざはな)
   風花や吾子手をかざしポチの如
雪見(ゆきみ)
   天気図や雪見誘ふスタッドレス
雪掻き(ゆきかき)排雪車・ラッセル車・除雪夫
   音も無く左右へどかしラッセル車
雪卸(ゆきおろし)
   後積もり降ろしても降ろし雪降ろし
雪踏(ゆきふみ)
   雪踏みて母の迎えの帰り道
雪まろげ(ゆきまろげ)
   大きくなれ共に転がり雪まろげ
雪合戦(ゆきがつせん)雪遊
   校庭へ陣地造りも雪合戦
雪礫(ゆきつぶて)
   陣地影お尻も出さじ雪礫
雪達磨(ゆきだるま)雪兎・雪佛
   母ひ弱小さき頭雪達磨
竹馬(たけうま)
   庇より高き竹馬のし歩き
スキー
   操れぬスキー飛び込むリフト待ち
雪車(そり)橇・雪舟・犬橇(のそ)・手橇
   しゃんしゃんと鈴ぶら下げて雪車の来て
雪沓(ゆきぐつ)藁沓・深沓・爪籠
   夕焼けや雪沓きしむ帰り道
かんじき 樏・橇(かんじき)
   かんじきや股上げ登り胸の丈
しまき 雪しまき
   雪しまき赤いランプが消防車
凍死(とうし)吹雪倒れ
   口々に凍死はおんな邨の口
雪眼(ゆきめ)雪眼鏡
   雪眼鏡歯元美し指導員
雪女郎(ゆきぢよらう)雪女
   雪女郎誰を待つやら邨の口
雪折(ゆきをれ) 
   雪折の届き枕辺ひとり閨
雪晴(ゆきばれ) 
   雪晴や棚田の畦に空の青
氷(こほり)厚氷・氷面鏡(ひもかがみ)
   揺れもせず浮かぶ氷の行く流れ
氷柱(つらら)垂氷(たるひ)
   尖がりし下の恐さや伸ぶ氷柱
採氷(さいひよう)
   採氷や村の名前の懐かしき
砕氷船(さいひようせん)
   昭和基地旗は日の丸砕氷船
氷下魚(こまい)氷下魚釣る
   叩く数氷下魚炙るや男子寮
スケート 氷滑り
   人流れスケート場のワルツかな
避寒(ひかん)避寒宿
   開く窓鯨潮吹く避寒宿
寒月(かんげつ)
   寒月や谺返してビルの谷
寒の雨(かんのあめ)
   夕灯隙間拡げて寒の雨
寒燈(かんとう)冬灯し
   揺れも無き村外れ建ち冬灯
水餅(みづもち)
   顔写す水餅の甕皺もなく
煮凝(にこごり)凝鮒
   プルプルと煮凝溶けて昼の飯
氷豆腐(こほりどうふ)高野豆腐・寒豆腐
   鰹だし氷豆腐の滲み出で
氷蒟蒻(こほりごんにやく)
   天に月氷蒟蒻照り返し
寒天造る(かんてんつくる)
   つるつると寒天造るかじかむ手
寒曝(がんざらし)寒晒
   高く撒く赤くて広く寒曝
凍鶴(いてづる)
   天に啼き凍鶴が息いと白き
寒鴉(かんがらす)
   空にゐて愉快コメント寒鴉
寒雀(かんすすずめ)
   寒雀丸く膨らむ屋根の上
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凍蝶(いててふ)
   凍蝶やしばらく見えて難治かな
初観音(はつくわんおん)
   連れ立ちて初観音櫓の軋み
千両(せんりやう)
   千両の溢して粒の水に映え
萬両(まんりやう)
   築山や萬両が孫そこここに
藪柑子(やぶかうじ)
   盆栽や実の二つ三つ藪柑子
青木の實(あをきのみ)
   荒れる風靑葉隠して青木の實
寒牡丹(かんぼたん)
   温きときこもから覘く寒牡丹
葉牡丹(はぼたん)
   店じまい残る葉牡丹我を待つ
寒菊(かんぎく)冬菊
   ふくむ筆寒菊囲む海静か
冬薔薇(ふゆさうび)寒薔薇・冬ばら
   触れずとも凛と冷たき冬薔薇
水仙(すゐせん)
   かぜ緩む水仙の咲く土手温し
冬の草(ふゆのくさ)冬草
   無残なりフェンス工事が冬の草
龍の玉(りゆうのたま)龍の髭の實
   細葉下冷たく光る龍の玉
寒竹の子(かんちくのこ)
   寒竹の子出陣式が銃の先
冬苺(ふゆいちご)
   陽光の一枚脱ぎて冬苺
麥の芽(むぎのめ)
   麥の芽や一陣越して畝の列
寒肥(かんごえ)
   身を縮め寒肥も舞ふ西の風
石蓴(あをさ)あをさ汁
   朝餉には潮のかをりやあをさ汁
初大師(はつだいし)初弘法
   初大師小走り渡り吾子の頬
大寒(だいかん)
   しみじみと大寒の道小銭なる
厳寒(げんかん)酷寒
   厳寒やフロントガラスお湯かけて
初天神(はつてんじん)天神花・天神旗
   初天神凧もお面も並び待ち
日脚伸びる(ひあすのびる)
   まめしなべ転がり止まり日脚伸ぶ
早梅(さうばい)
   あの家の早梅未だか閨の妻
臘梅(らふばい)唐梅
   臘梅とアルツハイマー教えし師
寒梅(かんばい)冬の梅・寒紅梅
   寒梅を写してカメラこわばる手
探梅(たんばい)探梅行
   探梅や愛でる暇なき風の冷え
冬桜(ふゆざくら)寒桜
   咲き続け忘れて季節冬桜
寒椿(かんつばき)
   空っ風早く太れと寒椿
侘助(わびすけ)
   侘助や竹の切り口開く白
寒木瓜(かんぼけ)
   寒木瓜や指で弾くや幼稚園
室咲(むろざき)室の花・室の梅
   喫茶店ドアー開ければ室の花
春待つ(はるまつ)
   さいはての春待つ岬風やまず
春隣(はるとなり)
   反り返り犬の背伸びや春隣
節分(せつぶん)
   節分の一日早き今年かな
柊挿す(ひひらぎさす)
   柊挿す硬くて母や鬼の顔
追儺(つゐな)なやらひ・鬼やらひ
   父先頭紋付き袴追儺かな
豆撒(まめまき)年男・年の豆
   豆撒や畳打つ豆みかん飛ぶ
厄落(やくおとし)
   饒舌なあにき素通り厄落
厄拂(やくはらひ)
   煌々と上弦の月約拂
厄塚(やくづか)
   積み上げて雪の厄塚白けむり
和布刈神事(めかりしんじ)和布刈禰宜・和布刈桶
   海に入る奥歯ガチガチ和布刈禰宜

虚子編新歳時記より各季語で一句詠んでみました。

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